十七話 晴れ時々少女
何というラッキースケベ(
クラスメイトの二人と別れた後、歩夢はシエル達と別行動を取っていた。
個人的な買い物がしたかったというのも一つの理由ではあったが、女性物の下着売り場などに(主にメアに)連れ込まれる可能性を危惧したというのが一番の理由である。
連絡手段がないのが気がかりではあったが魔法使いは『念話』なるものが使えるらしく、本来なら力の及ぶ範囲であればどこでも会話する事が出来るらしい。
当然、歩夢自身は念話の使い方などわかるはずもないが使い魔である彼女達から連絡をしてくる事は可能らしいのでとりあえず現時点では受信専用電話と言ったところか。
「さて、と。女の子の買い物は時間が掛かるって言うしな……」
彼女達と別行動を始めて現在三十分足らず。まだ当分は掛かると考えていいだろう。
とはいえ、歩夢はすでに目的の本数冊をすでに買い終えており手持ち撫沙汰だった。
数秒思考し、結論が出ると手元に視線をやった。
「本でも読んで待ってるとするか……」
モール内のベンチは人が多いようなので、冬場は人の少ない屋外のベンチに歩夢は移動した。
ベンチに腰を落ち着けると先ほど買ったばかりの包みを開き、ページをめくる。
「……」
基本的に本を読み始めると周りの事に気がつかなくなるタイプなのだが本を読み始める直前、歩夢は不意に違和感を感じた。
何と言えばいいのだろうか。
いきなり風の向きが変わったというか、何かの流れが変わったというか。
本を閉じ、なんとなく視線を上に向ける。
何かが光っていた。
電気等のそれとは明らかに違う赤々と光る何か。
歩夢はそれに見覚えがあった。
「魔……法?」
光の色こそ違えど、その不思議な光はシエルやメアが魔法を使った時を彷彿させた。
と、突然何かが降ってきた。
かわす暇もなく降ってきたそれの下敷きになり、その勢いのままベンチが転倒する。
「―――!?」
あまりに唐突な出来事に思考が追いつかない歩夢は声が出ない。
否、出せなかった。柔らかい何かが口を塞いでいたのだ。
「いった~い……何なのよ、もう!」
上から何やら声が聞こえてきた。
「ここ全然目的地と違うじゃない!一体どうなって……―――!?」
上にいる何かの言葉が途切れる。
歩夢はこの時ようやく理解した。
自分が今現在、女性の胸に顔を埋めて至るのだということに。
「な……なな、な……!!!」
今まで覆いかぶさっていた少女の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
それが羞恥によるものか怒りによるものかは歩夢にはわからなかったが、たった一つだけわかっている事があった。
自分が今から一方的に被害を被るのだろう、ということだけは……
「キャーーーーーーー!!!」
凄まじい悲鳴と共に、歩夢の右頬に衝撃が走った。
男ってこういうとき一方的に攻撃されるのはお約束ですよね(
楠葉でした。