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魔法使いと夢と夢魔  作者: 高町 楠葉
第一章 魔法使いの息子
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十三話 後悔と懺悔

三女の出番はもう少し先です。

 夢……


――あぁ、またか……


 他人の夢。それを見るか否かに歩夢の意思は関係ない。

 自分の持つ不可思議な力なのにも関わらず、自分自身ではどうしようもないのだ。

 最初に流れ込んできた感情は深い深い自責の念。

 どこまでも続く、終わりのない後悔。


「ごめんなさい……」


 もう何百回、何千回、何万回その言葉を言い続けてきたのか。


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」


 誰も聞く者のいない謝罪が真っ暗な空間に波紋のように響く。

 その声が響く度に、夢の主の後悔は深くなっていくようだった。


――何でそんなに自分を傷つけ続けるんだ……


 その後悔の深さに歩夢は胸が抉られるような思いだった。


「わかっていたのに……こうなる事はわかっていたのに……!」


 血を吐くような思いで、しかしその言葉の全てが夢の主自身を傷つけていく。


――もうやめろよ……もう、やめてくれよ……!


 それはもう呪いのようであった。


「ごめん……なさい……歩夢さん……」





 歩夢は不意に目を覚ました。目の前に映るのはいつも通りの天井。

 傍らに置いてある時計は普段起きる時間より30分ほど早い時刻を指していた。


「……何だって言うんだよ」


 普段ならおぼろげで殆ど覚えていない他人の夢。それがハッキリと脳裏に焼き付いて離れない。


「ごめんなさいって……何がだよ……」


 自分の事ではないかもしれない。自分の名前は表記の方は珍しいかもしれないが『あゆむ』という名前そのものはさして珍しいものではないはずだ。

 それなのに、これは自分の事を言われてる気がしてならなかった。

 根拠なんてない。しかし夢なんてものに根拠を求める事自体がナンセンスだ。


「……クソッ!」


 小さく毒づき、嫌な汗で濡れた手を握り締めながら布団に振り下ろした。


――ポヨン


「……ん?」


 何だ、この柔らかい感じは。クッションの類ではない(というかそもそもそんなものを布団の上に置いてない)何か弾力のある柔らかみ。

 さっきまで夢の事を気にしすぎて気付かなかったが、よく見れば布団の中が妙な膨らみがあった。


「……まさか」


 恐る恐る布団をめくる。

 するとそこには案の定というか何というか、シエルが寝ていた。

 吐息がかかるほどに近く、起こす事が罪に思えるほどの安らかな寝顔で。


「な……な……!? 」


 慌てて飛び退く歩夢。

 寝起きだという事もあり思考が付いてこない。

 動揺しながら少しずつ後ろに下がっているとそのままベッドから落ちた。

 後頭部を強打し悶絶する。


「~~~~~~ッ!!!」


 声にならない声を歩夢が漏らしていると、シエルがこの騒ぎのせいか目を覚ました。

 ゆっくりと体を起こし、周りをキョロキョロと見渡すとベッドから落ちた歩夢がその視界に入る。


「……え?」


 と、ここが何処で自分が何をしていたのか理解したらしい。

 顔を真っ赤にして狼狽する。


「ぁ……!マスター!だ、大丈夫ですか!?」

「……えーっと、うん。おはよう」


 なんと切り返したらいいかわからず、とりあえず朝の挨拶をする。


「あの、その、えっと……ご、ごめんなさ~い!!」


 対するシエルはその空気に耐えられなくなったのか、勢いよく謝罪し部屋を出て行ってしまう。


「……」


 結局、ベッドから落ちて逆さまになった歩夢だけが部屋に残されたのだった。

一日一回更新、いつまで続けられるでしょうか……


ちょっと弱気な楠葉でした。

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