Dear
空を見上げていた。
雲の形が何かに似てやしないかと、あれこれ考えていた。
それで、既に形あるものに帰着させていることに気づいた。
失望した。
何者にもなれやしない。
そう突き付けられた気分だった。
心地いい風が吹いていて、無駄に長い髪が靡いていた。
生きてる。
死んだらもう、戻れない。
確証はないけど。
過去を失くすには、死ぬしかない。
でも、それは同時に、全部失くすことでもある。
生きてるうちは、過去、現在、未来を無条件で持ってる。
どれか一つを捨てることは、出来ない。
だから、全部持って行くしかない。
過去を今に変えることはできる。
もちろん、そんなことはしないけれど。
胸が苦しくなって、消え去りたくなって、他人と比べられて否定されやしないかと怯えて。
ボロボロになったまま、持っていこうと思う。
治せば今に、乗り越えれば未来に、綺麗にすればナニカに。過去は変わってしまうものだから。
それしか、本物は持っていないから。
それしか、私じゃないから。
あれはもう、辛くて、辛くて、未熟なんてものじゃなくて。
ただ純粋なものだった。
決して、未完成なものではなかった。
あの頃は幼かった?
そんなひどいこと、よく言えるね。
あなたは、自分のことが随分嫌いらしい。
いや、嫌いだと思い込んでいるらしい。
私も、そう思っていたけれど。
そうじゃないことに気付いたから。
本物であろうとする偽物は、本物よりも本物だ。
こんな言葉がある。
ここでいう本物とは、皆が想像する単なる理想であり、本物の本物ではない。
ただの記号。
偽物はいつまでも偽物だ。
本物は一つだ。
たとえ、偽物よりも価値がなくても。
そこに、本物はある。
そして、価値のないそれが、私自身なんだと。
あれが、私そのものだった。
今はもう、ジャムを塗りたくった食パンのようで。
好きなものを塗れるようで。
味が変わって。
偽物になった。
戻れない。
少しの余裕しか残っちゃいない。
これが消えたら、贋作だ。
隈がずっと取れない。
あぁ、明るい。
綺麗だ。
幼さなパンを作って
大人びてジャムを塗ろう




