サイト19編第九章 最悪の再会
医療班の白いライトが、暗い通路を照らしていた。
「……引き渡す」
俺は、担架に乗せられたDクラスを見下ろす。
呼吸は安定。
意識はないが、生きている。
「了解。こちらで処置を引き継ぎます」
医療班が素早く彼を運び去っていく。
その背中を、俺は数秒だけ見送った。
「……助けられたな」
ファルコンが、小さく言った。
「ああ」
全員が、言葉少なに頷く。
だが――
休息は、ここまでだ。
「行くぞ」
俺は振り返った。
「次は、コントロールルームだ」
フォックスが苦笑する。
「ついに“アイツ”を探しに行くわけか」
SCP-682。
“不死身の爬虫類”。
遭遇=地獄。
それは、全員が理解している。
コントロールルームの前に立つ。
壁には、破壊の痕跡。
爪痕。
歪んだ金属。
「……嫌な予感しかしねえ」
「同感だ」
俺は管理者キーカードを構え、扉に近づいた。
「――入るぞ」
扉が開いた、その瞬間。
ドンッ!!
爆発音のような衝撃。
「伏せろ!!」
次の瞬間、壁が内側から粉砕された。
コンクリート片が飛び散り、制御盤が吹き飛ぶ。
そこから――
**“それ”**が、侵入してきた。
巨大な影。
鱗に覆われた肉体。
異様なまでの存在圧。
「……嘘だろ」
フォックスの声が、震える。
SCP-682。
咆哮が、コントロールルーム全体を揺らした。
「目標確認!」
ファルコンが叫ぶ。
「距離、近すぎる!」
シャドウが、即座に壁際へと動く。
『……確認した』
オーバーウォッチの声が、今までで一番重かった。
『SCP-682、コントロールルーム侵入』
『……運が悪すぎるな』
「撤退は?」
俺は、即座に聞いた。
『……不可能だ』
オーバーウォッチが言い切る。
『この部屋を抜けられれば、サイト19は完全に終わる』
「……つまり」
フォックスが、苦笑交じりに言う。
「ここで、止めろってことか」
「……ああ」
俺はマグナムを構えた。
意味がないと分かっていても、
引き金を引くしかない。
SCP-682が、こちらを見下ろす。
知性のある目。
“殺す”という意思。
「全員、散開!」
俺は叫んだ。
「時間を稼ぐ!一秒でも長く――!」
咆哮。
床が割れ、制御室が崩壊していく。
ここは、
人類最悪クラスの異常存在と、最もやってはいけない場所で遭遇した戦場。
「……来るぞ!」
SCP-682が、前に出た。




