表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SCP:TASK FORCE  作者: YATA0401
8/16

サイト19編第八章 地獄の底で手を伸ばせ

《核弾頭起爆まで:00:02:41》


制御盤の画面が、赤く点滅している。


「コード入力、完了……!」


俺は最後のキーを叩き込んだ。


――――――――――

《自爆シーケンス中断》

《核弾頭:安全状態》

――――――――――


「……っ、止まった!」


フォックスが、膝から崩れ落ちる。


「や、やった……!」


『確認した』


オーバーウォッチの声が、はっきりと安堵を含んでいた。


『核弾頭、完全停止。よくやった、ハウンド』


俺は、深く息を吐いた。


「……これで――」


その瞬間だった。


――ジュウゥ……


まただ。


床が、溶ける。

空気が、腐る。


「……くそっ」


振り返るより早く、黒い腕が床から突き出した。


「ハウンド!!」


フォックスの叫び。


俺はマグナムを向けるが、意味がない。

SCP-106が、完全に姿を現した。


「下がれ!」


だが――


ズルリ


足首を、掴まれた。


「ッ――!」


身体が、引きずられる。


『ハウンド!』


オーバーウォッチの声が、珍しく叫びに近かった。


「……っ、チームを――頼む……!」


次の瞬間、視界が黒に染まった。


落下。


終わりのない、腐った世界。


SCP-106のポケットディメンション。


床はぬめり、空間は歪み、時間の感覚が壊れている。


「……生きてる、か」


全身が痛むが、動ける。


「ハウンド!」


聞き慣れた声。


「……シャドウ?」


闇の向こうから、シャドウが現れた。


「お前……何してる」


「助けに来た」


即答だった。


「馬鹿か」


「仲間だ」


その一言だけだった。


だが、その直後。


――背後から、圧倒的な存在感。


「……来る」


SCP-106。


「チッ……!」


次の瞬間、シャドウも黒い床に引きずり込まれた。


「……二人か」


俺は、歯を食いしばった。


「……シャドウ」


「聞いてる」


この地獄で、冷静なのはこいつくらいだ。


その時。


「……ぁ……」


微かな声。


俺たちは、同時に振り向いた。


「……Dクラス?」


あの時、飲み込まれたはずの男。

壁際に倒れている。


「……生きてる」


呼吸はある。

気絶しているだけで、致命傷はない。


「……連れていく」


俺は即断した。


「……当然だ」


シャドウが言う。


俺はDクラスを背負った。


「出口を探す」


「SCP-106は?」


「……追ってくる」


その通りだった。


空間が、歪む。

壁から、黒い腕が伸びる。


「急げ!」


走る。

滑る。

腐臭が、背中に迫る。


「……あそこだ!」


歪んだ壁の先。

“裂け目”。


出口だ。


「行け、ハウンド!」


シャドウが後ろを押さえる。


SCP-106の咆哮が、世界を揺らす。


「シャドウ!」


「問題ない」


一瞬遅れて、シャドウが飛び込む。


――ズンッ!!


背後で、何かが掴もうとした。


だが――


光。


次の瞬間、俺たちはサイト19の床に転がり出ていた。


「……戻った……!」


フォックスが、目を見開く。


「ハウンド!シャドウ!」


ファルコンが、半泣きで駆け寄る。


「生きてる……よな!?」


「……ああ」


俺は、荒い息で答えた。


Dクラスも、床に下ろす。


「……生存確認」


シャドウが淡々と言う。


『……全員、生還確認』


オーバーウォッチの声が、静かに響いた。


『よく戻った……本当によくやった』


俺は、天井を見上げた。


さっき犠牲にしたと思っていた命。

そして、守れた命。


「……これで、終わりじゃないな」


「当たり前だ」


フォックスが、苦笑する。


赤色灯は、まだ回っている。


サイト19は、まだ地獄の途中だ。


だが――

俺たちは、生きている。


それだけで、十分だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ