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SCP:TASK FORCE  作者: YATA0401
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サイト19編第六章 カウントダウン

管理者キーカードが、コントロールルームの端末に吸い込まれる。


《アクセス承認》


分厚い扉が、低音を立てて開いた。


「……入れたな」


「入れたけど、これ後で絶対怒られるやつだ」


フォックスがぼそっと言う。


「今は考えるな」


俺たちは中へ滑り込んだ。


コントロールルームは、薄暗く、モニターのいくつかは沈黙している。

非常電源だけが、弱々しく生きていた。


「ジェネレーターは……あそこだ」


俺は中央制御盤を指差す。


操作は単純だった。

再起動。

手動同期。

負荷調整。


――ブォン


低い振動と共に、床が震える。


「来た……!」


照明が一斉に復旧し、サイト全体に電力が戻っていく。


『確認した』


オーバーウォッチの声が、即座に入った。


『電力、復旧』

『よくやった――』


その時。


……ひっ、……ひっ……


微かに、だが確実に聞こえた。


嗚咽。

泣き声。


フォックスの表情が、一瞬で凍りつく。


「……なあ、ハウンド」


「言うな」


俺は、ゆっくりと視線を下げたまま答えた。


SCP-096。

“シャイガイ”。


見てはいけない。

顔を認識した瞬間、終わりだ。


「距離は?」


俺は、壁の反射も見ないように、視線を床に固定した。


『近い』


オーバーウォッチの声が、緊迫する。


『お前たちのいるコントロールルームの、隣接区画だ』


「……幸い、まだ顔は見てない」


フォックスが、ほとんど囁くように言う。


「ハウンド、どうする?」


俺は、装備を思い出す。


「……目隠しネットがある」


SCP-096専用の、視覚遮断装備。


「俺が行く」


「一人でか?」


「時間がない」


俺はゆっくりと立ち上がり、ネットを展開した。


「フォックス、絶対に見るな。耳も塞げ」


「了解……くそ、心臓に悪すぎる」


俺は、息を整え、視線を完全に伏せたまま、泣き声の方向へ進む。


……ひっ、……ひっ……


そこに、**“何か”**が座り込んでいるのが分かる。


姿は見ない。

輪郭すら、脳が拒否する。


「……今だ」


俺は一気に、目隠しネットを投げ被せた。


――その瞬間。


ギャアアアアアアアアア!!


凄まじい絶叫。


「ッ――!」


SCP-096が暴れる。

壁が歪み、床が割れる。


「ハウンド!」


フォックスの叫び。


数秒。

ほんの数秒だ。


だが――


ドンッ!!


重い衝撃が、サイト全体を揺らした。


直後、警報が変わる。


――――――――――

《警告。核弾頭起動》

《自爆シーケンス開始》

――――――――――


「……は?」


フォックスが、完全に思考停止した声を出す。


『確認した』


オーバーウォッチの声が、今度は明確に焦っている。


『衝撃で核弾頭が作動した』

『残り時間、30分』


「……096は?」


『大人しくなった』

『ネットが機能している』


最悪の中で、最小の救いだ。


「解除方法は?」


『核弾頭制御室だ』

『そこへ行かない限り、止められない』


俺は、拳を握った。


「了解。向かう」


その時、通信が割り込む。


「ハウンド!」


ファルコンの声だ。


「聞こえる!」


「SCP-173、再収容完了!レーザー、安定した!」


シャドウの低い声が続く。


「こちら、異常なし。合流可能だ」


俺は、深く息を吐いた。


「よくやった。今すぐ合流しろ」


『全員、核弾頭制御室へ向かえ』


オーバーウォッチが、命令を下す。


『30分だ。失敗は許されない』


俺は仲間たちの顔を思い浮かべた。


始末書だの、権限違反だの――

今はどうでもいい。


「行くぞ、フォックス」


「ああ……世界、吹き飛ばすわけにはいかねえ」


サイト19のどこかで、

時限爆弾が、確実に時を刻んでいる。


残り30分。

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