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SCP:TASK FORCE  作者: YATA0401
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サイト19編第三章 瞬きの代償

赤色灯が回り続ける通路で、俺たちはSCP-173と向かい合っていた。


動かない。

だが、“動けないだけ”だ。


「瞬き交代、三秒ルールだ」


俺は低く言った。


「俺がカウントする。フォックス、俺の合図で閉じろ。ファルコンは次だ」


「了解。目、乾いてきたぞ……」


フォックスが冗談めかして言うが、声がわずかに震えている。


「集中しろ」


シャドウは何も言わず、ただ視線を像に固定している。

こいつは表情一つ変えない。

だが、それが逆に怖いくらいだ。


『ハウンド』


オーバーウォッチの声が割り込んだ。


「聞いてる」


『SCP-173用の収容キットをサイト19内部の補給ドローン経由で送る』

『通称“収容レーザー”だ』


俺は一瞬、眉をひそめた。


「……ここで使えってことか?」


『ああ。10基すべてを設置することで、SCP-173は擬似収容状態に移行する』

『レーザーが全周囲をカバーしている限り、視認がなくても動けない』


フォックスが目を見開く。


「マジかよ……目を離していい石像とか、反則だろ」


『ただし、注意点がある』


オーバーウォッチの声が、いつも以上に低くなる。


『10基“すべて”が正常に稼働して初めて効果が出る』

『1基でも欠ければ、無効だ』


「……つまり」


「設置ミス=即死、ってことだな」


フォックスが、はっきり言い切った。


「その通りだ」


俺は深く息を吸った。


『ドローンは60秒後に到着する』

『それまで、視線を維持しろ』


「了解」


60秒。

瞬き管理をしながら、設置作業をするには、地獄みたいな時間だ。


――ブーン、という低音が近づいてくる。


天井の搬送レーンが開き、小型の補給ドローンが降下してきた。

側面には、細長い円筒状の装置が10本、固定されている。


「来たぞ」


「よし……じゃあ、始めようぜ」


フォックスが覚悟を決めたように言う。


「役割分担だ」


俺は即座に指示を出した。


「シャドウ、設置担当。ステルスは使うな、動きだけでいけ」

「フォックス、俺と一緒に視線維持」

「ファルコン、瞬き交代の補助とカバーだ」


「了解」


「分かった……!」


シャドウが、静かに一歩踏み出す。


SCP-173から、一瞬も目を離さずに。


レーザー装置を床に設置。

赤い光が、細く伸びる。


一本、二本――


「三本目、設置完了」


「瞬き交代、フォックス!」


「今だ!」


一斉に、俺とフォックスが瞬きをする。

ファルコンとシャドウが、視線を固定。


「……動いてない」


「次、俺が瞬きする」


緊張で、喉が焼けるように乾く。


四本目、五本目。

レーザーが像を囲むように配置されていく。


SCP-173は、まだそこにいる。

だが――


「……近くなってないか?」


フォックスが、低く呟いた。


「気のせいだ。見るな、位置を気にするな」


言い聞かせるように、俺は言った。


六本目。

七本目。


ファルコンの声が震える。


「ハ、ハウンド……俺、限界かも……」


「次で交代だ。耐えろ」


八本目。

九本目。


通路の空気が、異様に重い。


「……最後だ」


シャドウが、十本目を設置する。


カチリ、という音。

全装置が同期し、赤いレーザーが交差した。


――低い電子音。


《収容フィールド、起動》


その瞬間、俺はゆっくりと瞬きをした。


……何も起きない。


「……動かない」


フォックスが、信じられないという声を出す。


「マジで……止まってる」


俺は、ようやくマグナムを下げた。


『確認した』


オーバーウォッチの声が、わずかに安堵を含んで響く。


『SCP-173、擬似収容状態を維持』

『よくやった、ハウンド』


「……ああ」


俺は像を見つめながら、言った。


「だが、これで終わりじゃない」


赤色灯は、まだ止まらない。


サイト19には、

もっと厄介な“化け物”たちがいる。


「全員、次に備えろ」


俺たちは、次の地獄へ向かう準備を始めた。

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