サイト51編第四章 牙と静寂
939の数はすでに半分を切っていた。
アルトが叫ぶ。
「ハウンド!こっちはあと3体!」
「了解ッ!」
俺はマグナムを構え、最後の939に肉薄する。
顎が開き、喉奥から偽りの悲鳴が漏れた。
「……かわいそうな声出したって無駄だ」
銃口を押し当て、引き金を――
ドンッ!!
血飛沫が散り、939が崩れ落ちる。
それが最後だった。
コマンダーが敵の死体を踏み越え、息をつく。
「……終わったな。よくやった」
アルトが笑いながら俺の背中を叩く。
「お前ってやっぱ頼りになるわ!」
俺は短く頷く。
だが安心はできない。
通信を切り替える。
「ファルコン、シャドウ! 援護に向かう!」
すぐに苦しげな声が返ってきた。
「助かる!数が多すぎる……!」
「指揮官を見つけたが、まだ正体は不明だ」
背筋に寒気が走る。
やはり黒幕がいる――。
コマンダーも通信を受け、即決断する。
「アルト、俺たちは610側だ!
ブライドたちを見捨てるな!」
「了解!!」
爆発音と悲鳴が響く方向へ、コマンダーとアルトは走り出した。
俺は逆方向、ファルコンとシャドウの戦線へ飛び込む。
廊下に入った瞬間、酷い光景が広がった。
カオス兵士が規律正しく前進し、
その背後の闇からは280が牙を剥いている。
シャドウが息を荒げながら叫んだ。
「遅えぞ、ハウンド!」
「悪い!今からここは押し返す!!」
そのとき――
敵の動きが、ピタリと止まった。
隊列が割れる。
まるで演算されたような統率。
ファルコンが目を見開き呟く。
「……出てくるぞ。指揮官だ」
奥の暗闇から、一人の男が歩み出た。
黒い戦闘服。
迷彩の上に、赤い三角の徽章。
CIデルタコマンド。
その男は、余裕の笑みを浮かべながら
二丁のデザートイーグルを回した。
「やぁ、財団のヒーローさんたち。
いい仕事をしてくれるね」
その声は落ち着いていて、不気味なほど静かだった。
「紹介が遅れたな。
俺は “デルタ指揮官:ザイル”」
シャドウの目が細くなる。
「……コイツが統率の正体か」
ザイルは部下へ手をひらりと振ると
全兵士が一斉に動きを変える。
まるで――
一つの生き物のように。
「財団のエリート部隊と一度やりあってみたかったんだ。
退屈してたところさ」
俺は銃を握り直す。
ザイルの眼差しは、真っすぐ俺に向いていた。
「特に……ハウンド。
お前とは、前から戦いたくてな」
胸が凍った。
なぜ俺の名前を――?
ザイルは肩を竦めて笑う。
「この戦争は序章だ。
ここからが本番だぞ?」
暗い廊下に、金属のスライド音が響く。
カチッ
「さぁ――続けようか」
次の瞬間
地獄が再び火を吹いた。




