サイト51編第三章 迫りくる黒幕
黒い影が通路を走り抜けた。
SCP280を追っていたファルコンは、狙撃銃を構えたまま舌打ちをする。
「……また消えたか。厄介なヤツだな、ドロボウ影」
シャドウは背中合わせにマチェットを構え、周囲の気配を探る。
「……280は一旦無視だ。まずは敵の数が多すぎる」
ちょうどそのとき、薄暗い廊下の奥で足音がした。
ジャリ……ジャリ……
現れたのは、カオス・インサージェンシーの兵士たち。
最初は10……次に30……
数十……いや、もっと――。
ファルコンは目を細めた。
「はは。ザコが大量ってやつか?」
だが違和感はすぐに襲ってきた。
・無駄撃ちが一切ない
・遮蔽物の使い方が異常に洗練
・倒れた仲間を素早く回収
・連携が軍隊レベル
“統率が完璧すぎる”
シャドウは低く短い息を吐く。
「……何かがおかしい。
普通のカオスじゃない。動きに迷いがない」
ファルコンがスコープ越しに観察する。
「……後ろに指揮官がいるな。
そいつが命令してる。ザコがザコに見えねぇ」
「指揮官はどこだ?」
「影に隠れてやがる……少なくとも前には出てこない」
ファルコンは合図し、一瞬で2人同時に敵を撃ち抜いた。
その瞬間、敵全隊が散開し包囲を絞る。
シャドウは息を呑む。
「普通は混乱する……
だが、こいつらは即座に反応した」
ファルコンは、笑っているのか怒っているのか分からない声で言った。
「指揮してる奴……
ただ者じゃないな」
◆一方で廊下の奥では…
SCP280が低く唸る。
カオス兵士の一部が影に喰われたが、悲鳴もなく陣形が乱れない。
「……アレすら利用してるのか」
ファルコンは背筋が冷えた。
シャドウはマチェットを構え直し、戦闘姿勢を取る。
「敵はザコでも、
“司令官”が厄介すぎる」
「どんな化け物よりタチが悪いな……」
影と兵士と血と肉。
混沌の極みだが――
その混沌が 知性 によって操られている。
これはただの収容違反じゃない。
“戦争” の匂いがする。
ファルコンは通信機を叩いて叫ぶ。
「ハウンド!
ここはただのザコラッシュじゃねぇ!!
裏に指揮してる奴がいる。
そいつを止めねぇと全滅す――」
通信がノイズで途切れた。
次の瞬間、ファルコンの背に冷たい気配。
SCP280が背後に現れた。
シャドウが叫ぶ。
「伏せろッ!!」
刹那、闇が牙を向ける――。




