サイト19編エピローグ
目を覚ましたとき、そこは医務室だった。
消毒液の匂いと、機械の一定の電子音。そして、隣のベッドではフォックスとファルコンがぐっすり眠っていた。胸が上下している――生きている。
本当に……よかった。
少ししてオーバーウォッチが姿を見せた。珍しく疲れ切った様子で、それでも俺たちを見ると安堵の息を漏らした。
「よく生還したな、ハウンド。お前たちのおかげでサイト19は復旧作業に入っている。またSCPは全て再収容された。」
「……そうか。みんな助かったんだな。」
「ああ。特にSCP173とSCP096の再収容は大きい。682も一時的とはいえ、完全制圧できた。」
フォックスが寝返りを打ちながら言う。
「当然……俺たちは不死身だって言っただろ……」
ファルコンも片目を薄く開け、ニヤリと笑う。
「死ぬわけねーだろ……俺たち、神に嫌われてんだぞ……」
ホッと胸を撫で下ろす俺に、オーバーウォッチは咳払いをした。
「ただし」
……嫌な予感しかしない。
「管理者キーカードを“Very Fine”に突っ込んだ件についてだがな」
ああ。やっぱりか。
「05評議会、管理者、倫理委員会。それからアイテム管理局総出でだ。怒り狂っているぞ」
俺は目を伏せる。
「……申し訳ありません」
「始末書提出だ」
「は、はい……」
「三十枚な」
「三十!? 紙の無駄では……」
「文句を言うな。あと、筆記試験もある」
「えぇ!?」
フォックスもファルコンも弱々しく笑う。
「がんばれよ……俺ら寝てるから……」
「俺たちは怪我してるから手伝えないけど……頑張れ? ハウンド」
俺はその場に崩れ落ちた。
怪物たちとの戦いよりも、事務処理のほうが地獄とはな。
だが――それでも。
全員生きて帰って来れたのだから。
きっと、今日という日は勝利だ。




