私の願いがかなった日
番システムで幸せになること前提なのか?というテーマに書いています。
唐突に負の方向へ行くので、苦手なものがある方は読まないようにお気をつけください。
私の目の前に立つ竜族の女の方が言った。
「あなたなんか早く死ねばいいのよ。」
言われた言葉が人族であれば、普通に自害しろ、と受け取れる言葉だ。
しかしながら、意外なことに、そういう意味ではないことを「今」の私は知っている。
だいたいの種族より寿命の長い竜族の他種族への「早く死ねばいい」は、「その寿命が尽きるまで生きても、私にとっては一瞬だから、その後も生き続けてる私の方が有利よ」という、皮肉なのだ。
絶対に伝わらない皮肉だ。
伝わりにくいし、だいだいは竜族の威圧で殺されると思われるだろう。
私は人族で、竜族よりはるかに寿命は短く、先には死ぬ。
そういう意味だとわかってはいた。
だから自分に言い聞かせろ。
「意味はこの言葉通だと」脳に言い聞かせろ。
何度も練習した。
何度も何度も。
言い聞かせた。
脳が誤解をするように「言い聞かせた」。
思いこめ。
おもいこめ。
体が驚いたのを感じたので、最後の確認をした。
「死んで欲しいのと考えてるのはあなたですか?」
すると竜族としては年若い彼女は、笑いながら、
「そんなわけないでしょう?これを見なさい!」
とある印を翳した。
それは気で作られた質素なペンダントだ。
しかし、私にはそれはとてつもなく意味を持つものだった。
それを、彼女も知っていたようで、
「今の言葉は全てあの人が言ったのと等しい言葉よ!」
と言った。
や り と げ た。
待っていた。
長い時間、この瞬間を。
待ち侘びた時間がきた!
体よ、脳よ、全てのワタシの神経よ、この事実を「真実」だと認識しろ。
認識阻害の魔法を改造した、認識誤解の魔法を自分に展開する。
わずかな魔力でも展開できるそれは、魔素の多いこの国に長く生きた竜族でも、卓越した感性の持ち主しかわからない。
わからないようにした。
この日のために。
起動しろ。
起動しろ。
キドウシロ!
カチッ。
私はその瞬間を待っていた。
魔法が展開され、それと同時に解除される。
展開されるのは、長年私にかけられていた攻撃魔法。
そして、解除されたのは、長年私を「守っていた」魔法だ。
その瞬間、私に魔法が届く。
即死の魔法。
その日はワタシの命日になった。
▼▼▼
番が死んだ。
その知らせを聞いた時、よくわからない感情で思考が止まった。
今まで感じたことのない喪失感から思考が全く動かなかった。
そしてようやく、声を振り絞り、番の居場所を確認できた。
実際に遺体を確認するまで信じることができなかった。
もしかしたらまだ生きているかもしれないという期待を消せずにいた。
▼▼▼
ワタシは奴隷だった。
ある日、違法な事した主人が逮捕され、ワタシは保護された。
その保護先で、ワタシを運命の番として竜族にみそめられた。
断りたかった。
運命の番などわからない。
こちらからは何も感じない。
ただの知らない人に永遠を誓われてもなんとも思わなかった。
気持ち悪いとも思わなかった相手なだけマシかもしれない。
祝福。
祝福。
周りはお祭りだった。
そんなことより死にたかった。
いきてることに意味なんかなかった。
生きていることが苦痛だった。
でも自分で死ぬには痛くない方法がわからなかったので、生きていた。
それだけだった。
しかし、それも難しくなった事をだんだん理解する。
番はワタシ達を助けてくれた人。
そしてこの国でも偉い人。
色々な決定権を持ち、色々な力を持つ。
もし、機嫌を損ねれば、また苦しい日が続くのかと思ったので、周りの嬉しそうな顔に合わせた。
目と口を三日月にして、声に弾みをもたせる。
笑顔に見える顔。
笑い声も幸せそうね、と言われてる人の声を真似た。
それだけ。
そこにワタシの感情は動かなかった。
手を伸ばされればとる。
歩く時は隣。
幸せな見た目を装う。
そうすると皆んな満足そうに笑う。
これで怒られはしない。
ワタシが番を受け入れると、ワタシと一緒に保護された人達も仕事や家族を与えられていた。
ワタシの身の回りを奴隷の時の知り合いにしてくれようとしたけど、断った。
すぐに死ぬ予定の場所に就職しても、すぐ職をなくすだろう。
番の気分を損ねない死に方を考えねばならなくなった。
ワタシの周りは知らない人だらけになった。
周りの人は始祖様にみそめられるなんて、と凄い凄いと言われた。
それから暫くして若い竜族に絡まれるようになった。
お前は相応しくない。
なら、番を辞めるといえば、辞められないといわれ、どうしたら辞められるのか聞いたら、死しか2人を分つものがないといわれた。
なんだ、死んでいいのか。
「なら、死にます。」
できれば、痛くないように殺して欲しい。
そういえば、血相を抱えた番がきた。
理由を話したら、
「今度からこの印を持つものの言葉以外は、受け入れてはなりません。」
と渡されたペンダント。
それは冒頭の竜族の女性が持っていたものだ。
このペンダントは番の希望と同等である事を表す印。
ワタシはその約束を、逆に利用することにした。
このペンダントを持ったものが死ねといえば死ねるようにした。
そうしていつでも死ねると思わないとやっていられなかった。
特に愛してもいない人と結婚し、他人からは幸せだと言われ、何も不自由なくて良いな、と言われた。
頭のおかしなやつしかいなかった。
ワタシの結婚相手は始祖の竜族と言って、始祖家と崇められていた。
始祖家は「しそけ」と読むらしい。
生粋の竜族の血のものだけの家系らしい。
番がワタシのように他種族になることは、普通のことらしく、むしろ同じ種族での方が珍しいらしい。
しかも、竜族同士は子供もできにくいらしい。
なので、始祖の竜は番ができたら、一族からでることが当たり前だった。
しかも、番がどれほど大事か本能で感じるものがあるらしく、一族に残ることより、番と過ごす方に重きを置いている。
だから、始祖家の方々からは歓迎されていた。
しかし、始祖を崇めてる外の人からは敵視された。
しかも、ワタシの番は始祖の中でも力を持ち長年、世界を支えてきた人らしい。
ワタシの世界は支えられてなかったようだが。
そうやって年々減ってる始祖家の存続を危機した他人が、他種族の番に言ってくるのである。
番に言っても無駄なのに。
特に私のような番がわからない人族にはムダもいいところだ。
執着してるのは竜族(お相手)だ。
「あなたは生きているだけで、あの方を害しているの。」
無力な私が何を害するのか。
「あなたが現れてからあの方は変わってしまった。誰にでも優しく…私にも…。」
変わった後からしか知らないのだから、私に言っても戻せはしない。
「今では異性を近寄らせすらしなくなってしまった!」
既婚者に手を出そうという人を近くには寄せたくないだろう。
恋愛の価値観が違うのだろうか。
ワタシはどんどん面倒になっていった。
だから番におねがいしたのだ。
「貴方がワタシを要らないとなったときに死ぬ魔法をかけて欲しい。」
それと一緒にかけられた防御魔法を貫通するほどの楽に死ねる魔法を。
番は渋ったが、そんことは起きないのでしょう?と説得した。
そしてかけてもらった魔法。
色々試した結果、心から相手から言われたことだと思わないと発動しないとわかった。
途中まで本気だと思い、魔法が発動しても、途中で嘘だと分かればキャンセルされる。
しかし、幸運な事に多少発動したとしても、番は特に気しないようで、色々なパターンを試すことができた。
そして、発動が可能なように自分自身でも魔法を習得した。
いつかこの結果がうまくいくとよい。
そう思いながら明日で結婚10年目を迎えようとしていた。
▼▼▼
「誰が…。」
原因か問おうとしてやめた。
聞いたら相手を殺してしまいそうだ。
番の遺体は冷たくなってはいたが、まだ仄かに色づきはしており、実は生きていて、このまま起き上がるのではないかと思わせた。
そんなことはないのに。
頭ではわかっているのに。
感情が理解を拒否する。
報告によれば、突然死んだとのことだ。
そんなことあるか?
いくらなんでも信じられなさすぎる。
突然死んだと申した者に直接話を聞きたいと言ったが、今の私では合わせられないと言われた。
日を改めた時には、番の葬儀はすっかり終わってしまたっていた。
そして話された内容に衝撃を受けた。
なぜこの女は私の番に死ねと言ったのかときけば、「私のため」といい。
そのペンダントを使ったことをきけば、「これがあればあの人間がいうことを聞くと教えてもらった」と言う。
教えたのは彼女の姉だ。
姉から盗んだらしい。
盗まれたことを報告しなかったことを問いただそうとしたら、
「申し訳ございません!」
と日頃から私の番にペンダントを使っていうことをきかせていたことを謝罪された。
別件だと伝えたら、今度は顔を青くさせて、死にものぐるいで言い訳をされた。
その事をきっかけに調べれば、叩けば出るホコリのようにでるわでるわ、我が番への横柄な態度、悪辣な環境。
私がいない時の彼女の環境は最悪だった。
そして理解した。
「原因は私か…。」
▼▼▼
その数年後、始祖の竜族はとあるものに絶滅させられた。
狂ったその力を止められるものはなく、一部の始祖族は呪いにより己の血を薄める事で命拾いした。
そして、その悪逆の限りを尽くした本人は、始祖族の絶滅を確認し、自害したという。
このきっかけを作った1人の女性とその家族は、消息不明となり、今もどこかにいるのかは不明のままである。
せかいのすべてよさようなら。
人族はずっと心の中で番としか呼んでいませんが、
表面上はもちろん呼んでます。
竜族は名前を呼んでますが、固有名詞はあえていれていません。




