学校で
教室に入っても、耳に入る話題は例の新作ゲームについてばかりだった。
ある者はゲームの特徴を。
そして、ある者は試作プレイヤーについてを。
内容は違えど、根本的には全員ゲームの話ばかりしていた。
「よっ! 巧も武もおせーぞー。遅刻ぎりぎり。」
そんな中、唯一ゲームの話題をしていなかった集団が俺たちの他に3人いた。
「うるせーよ。巧が出て来るのが遅かったんだからよ。」
俺のせいじゃない、と暗に言われているようで気分が悪い。
「俺のせいじゃねーよ。朝はいつもテレビの時計使ってるから、腕時計見るのが遅かったんだよ!」
そう言えば、先ほど話掛けてきた友人、斎木 騰<さいき あがる>がその話題に乗ってきた。
「あ、実は俺もだ。いつもテレビの端にあるあの時計だろ?
<今日はゲームの発売だから、いつもしてる朝の番組は中止して特番を放送します>って。」
身振り手振り説明する騰に今度はその騰の隣にいた、武中 弥太<たけなか やた>が会話に入ってきた。
「あ、俺の見てる所もそれだったよ。母さんも、それずっと見ててさ、朝飯食ってねーんだよ。」
腹減ったーとか言いつつ、その手の中には何故かフランスパン。
もっとチョイスあっただろうに。
「まだお前の所はいいじゃねーかよー。弁当はあるし、金もあるしで。俺なんて、<あ、欄、今日はゲームの試作プレイヤー発表の日だから念のためお母さんにお金渡しなさい。え?
なんでって、試作プレイヤーは特別にその場でゲームを買う権利を与えられるのよ!
で、母さんお金足りないから、あんたのぶんのお金渡しなさい。>って。
横暴だと思わないか!?
金はないし、弁当ないし、朝飯食ってないし、あっー! くそ! この際フランスパンでいいか。」
と言って、許可も取らずにフランスパンをぶちりとちぎって杷木 欄<はき らん>はむしゃくしゃ食いだした。
「聞いてる限りだと、親まで浸透しちまってんだなー。」
フランスパンをぶちりながら、武は続けた。
「俺の親もテレビに釘付け。同じようなもんだったよ。巧の所はどうだったんだよ?」
「俺の親、は…普通。いつもと一緒だったと思う。」
と答えると、周りから何故かオーッと歓声が湧いた。
「巧の所すげー!
親の鏡だな!」
「まさに、まさに。うちの親と変えてくれよー。そしてフランスパンお前食うかー?」
「まじうらやましいぞ! あ、俺いる。」
フランスパンを差し出されたが、普通に朝飯食ってるから、いらないと答えるとそうか。と言って、朝飯食ってないコンビでむしゃくしゃ食いだした。
「しかし…巧の所の親は…何ていうか、ゲーム極端に嫌ってるから、ノーカウントとしても…今まで親、しかも母親がゲームに興味持ったことないんだけどな。」
と、騰が呟けば、フランスパン組が話に割って入ってきた。
「そう! それ俺も思った!」
「そんなに面白いのか? あのゲーム。」
そんな話をしながら、朝の休み時間は終わった。
後の授業はまさに{ぐだぐだ}であった。
理科の教師は「精神分離の偉大さ」を延々と語り、歴史の先生は「これは歴史に残る大事件だ」と興奮ぎみに語っていた。
他の授業も似たようなもので、正直つまらない。
しかし、他のみんなは違うようで話を聞き逃すまいと必死の者や、まるで御伽噺〈おとぎばなし〉をきかされている子供のように目を輝かせている者もいた。
そんなクラスを見回し、今朝から何十回思ったか分からないことを心の中でつぶやいた。
「まるで、宗教のようだ。」と。
読んで頂きありがとうございました!
短くて申し訳ないのです・・・。
あ。
ひとつ言わせてください!
作者はゲームが嫌いなわけでも、批判したいわけでもないです。
ここ、重要。
では、読んで頂きありがとうございました。