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リアルウォーゲーム。3


近頃、戦争系のゲームが巷で大ブレークしているらしい。 


ゲームに疎い自分の耳にまで届くほど人気は絶頂期。人気の秘密は、「とにかくリアル」であることらしい。 

普通、主人公はHPがなくなれば、メニュー画面に戻れば復活する。それこそ、何度でも。 

しかし、このゲームでは主人公のHPがなくなれば、そこでゲームオーバー。 

次のプレイヤーは最初の人物ではない、違うキャラに切り替わるんだとか。 


よく分からないが、まぁHPがなくなる=現実では「死」ということなので、そこを「リアル」だとみんな口を揃えて言うのだと思う。 



そして、このゲーム会社がそのゲームのシリーズの最新作を出すと発表した。 

最新作の試作を試せるプレイヤーは全国民から抽選で決めるらしい。 


昨日、家族で夕食を取っていた時に臨時ニュースで見た。 

バラエティーの、ちょうど良い所で現れた臨時ニュースにイライラしながら見たのは記憶に新しい。 


そして、今朝。 



「「グッドモーニンッ☆ 国民の皆さん! 本日、人気絶頂期の最新作の試作プレイヤーが発表されるんだ!と、言っても…」」


自分の部屋から出てリビングに出たとたんにこのテンションはウザイ… 


「…母さん、違うチャンネルにしていい…? 」


「あぁ、おはよう、巧。 それがね、全部これなのよ。これじゃ、朝の天気予報も見れやしないわ。」


全部? 

そんなに人気…なのか。 しかし、これは少し異常ではないだろうか。


自分の席に着いて、挨拶をしてから食事に手をかける。 


「おはよ。にぃちゃん。あーぁー。いいなー。ぼく選ばれたいなぁー」


テレビを見ながらそう答えたのは弟の健二。 


「お前、こんなのしたいのかよ?」


「えー? だってタダだしね。みんな面白いって言ってるしぃ。ねぇ、母さんーうちだけだよー? ゲーム持ってないの。友達みんな持ってるんだ。」


健二は今年から小学三年。この年頃の子供というのは、周りと同じ遊びをしたがるものだ。

まぁ、それによって周りとの調和を図っているといっても過言ではないし健二の言い分ももっともだ。

自分も健二くらいの時はゲームがほしい、アレがほしい、コレがほしいと言ったものだ。


「よそはよそ。うちはうち。ゲームなんて目が悪くなるだけなんだから。さ、早くたべちゃいなさいよ~」


「ちぇっ。あ~あ~。にいちゃんはほしくないの? {リアルウォーゲーム。}」


「あぁ、そんな名前だったのか。あのゲーム。」


卵焼きをつつきながら適当に返事をする。


「えぇ!? にいちゃん、それ本気!?」


「あぁ。おれ、興味ないし。」


そう返事をすれば、弟は本気で信じられないという表情で俺を見た。


「にいちゃん、それまずいよ! 波に乗り遅れてるよ!」


「はいはい・・・。 よし。ごちそうさま。 母さん、食器どうするー?」


「あぁ、そのままでいいわよ~」


「オッケー。 じゃ、俺もう行くよ。 健二もニュースばっかり見てていいのか? 時間。」


自分の腕時計をトントンとつつき、弟に壁の時計を見るように促す。


「時間? わっ!? やっば!! 母さん食器置いとくよ! い、いってきます!!」


台所から、「わすれものはー? 」という声が聞こえたがもうすでにドアが閉じた後だ。

時間からして、遅刻ギリギリか、アウトか・・・。



「じゃぁ、母さん。おれもそろそろ行くわ~。」


「はぁ~い。いってらっしゃ~い。」


制服の袖に腕を通し、玄関を出る。


「よっ。」


「はよ。」


玄関を出たら、小学校からの悪友の四隅よすみ たけるがいた。


こいつとは学校が一緒で、もう何年も一緒に登校している。


「あ。そうだ、巧見たかよ? 昨日のニュース!」


「あ? 昨日って? あぁ、アレか? {アザラシのあーちゃんがペットにしたい動物№1に}。あれなー俺もどうかと思うよ。」


だいたい、アザラシの餌代なんてばかにならないだろうに。


「違う、違う。お前わざとか? 昨日からずっと速報やってるし、今朝だって・・・」


「あぁ、あれか?  えっと・・・{リアルウォーゲーム。}?」


「ん? お前がゲームの名前知ってるなんてめずらしいな。なんだよ、<興味ない>とか言いつつほんとは興味あったんだ?」


「違うよ。今朝弟が話してたんだよ。」


「なるほどねー。それなら納得。」


ははっと笑う友人にで?と話の続きを催促する。


「あぁ。うん。」


そこから武は周りをきょろきょろと確認してから、すこし声のトーンをおとしつつ話始めた。


「巧さ、おかしいとおもわないのか?」


「おかしい?」


「そう!! あ。もちろん<あの>ゲームについてだからな。」


おかしい・・・ね。


「確かに、ちょっと異常だと思うよ。」

 

「だろ!? いくら人気のゲームでも、この騒ぎはおかしい。巧が言うように異常だよ。知ってるか?

昨日総理大臣が変わったんだよ」 


「へぇ。知らなかったな。」

「そう!おれもインターネットの隅に見つけたんだよ。絶対異常だ!」


確かに…。 

総理大臣なんて、正直興味はない。 

だが、日本人なら少しは気になると言うものだ。 

日本の行く末を握る人物に最初は皆期待の眼差しを送る。 

送らなくても、ニュースで大々的に取り上げられることは間違いない。 


「テレビでどこもやってなかったんたぜ!?今までこんなこと、あったか?異常だよ。絶対おかしい。」


「確かに。<あーちゃん>に負けてるんだもんな。」


しかし。 


「でもさ、おかしくてもおかしくなくても俺たちはまだ選挙権すら持ってないオコサマなんだ。どうしようもないだろ。」


「そう、だけど。…今日発表される試作プレイヤーに、お前が選ばれれば話は別だろ?」


「むちゃくちゃ言うなよ、武。日本人全体で何億人いると思ってんだよ?それに、それこそ、万が一、億が一に俺が選ばれたって生まれてこの方ゲームをほとんどしたことのない俺がプレイしても意味ないだろーがよ。」


すると、武は一瞬目をパチパチとさせ、次の瞬間には腹を抱えて笑いだしてしまった。 


「失敬な奴だな、ホント。」「あ、いや、悪い悪い。昔のお前のプレイっぷりを思い出したら笑えてきてさ。」


奴が言っているのは、俺がやった人生最初で恐らく人生最後のゲーム。 


マ○オ。 


なんと、始まりと共に散るという奇跡に近いゲームオーバーを何度も繰り返したのである。 


「俺の下手っぷりを知ってるなら、なんで試作プレイヤーに選ばれろ、なんて言うんだよ?嫌みか。」


「違うって。まぁ、聞け。俺が選ばれたって意味ないから、っていうかお前しかこのゲームはクリア出来ないと思うから言ってんだよ。」


…? 


「意味が分からん。」


ゲームが下手だからクリア出来る、ってことか? 

まったく。矛盾するにも良いところだ。


「話は最後まで聞け。いいか?

この{リアルウォーゲーム。3}は専用機があってその機械でしか出来ないらしい。そして、この機械の特徴。これが…信じられないことに、ゲームの中に精神だけ入る事が出来るんだよ。」


「はぁ?つまり、精神と身体を切り離して精神だけをゲームの世界に送り込むのか。そんなバカな話あるかよ。」


「俺だって全部を信じる訳じゃないさ。けど、昨日気になってゲーム会社にちょろっとハッキングしてみたんだよ。」


ハッキング…って 


「おま、それ犯罪じゃ…」

「だから、ちょろっとだよ。あのくらいなら大丈夫だってば。で、分かった。事実だってことが。」   

いかにも深刻そうに、少しだけ汗を流しながら武は言った。 


「でも、わざわざハッキングしてまで調べる事なのか?

危険を犯してまで結局分かったのは《技術の発展の事実。》それだけだろ?」


「ばかっ! これはそんなに単純な話じゃないんだ! いいか? よく聞けよ。精神と身体の分離の危険さがまるで分かってないだろ。 人っていうのは本来《身体》っていう《器》に《精神》を入れることで活動している。 これは分かるな?」 


「まぁ、そんな言い方も出来るな。」


「そして、この2つは本来、切り離す事なんて出来ないからこそ均衡が保たれている。」


「均衡って、なんの?」

「世界のだよ。」


「…は?」




規模がいきなり大きくなったな。 

世界の均衡が保たれてる?意味が分からん。 


「もっと分かりやすく、簡潔に言ってくれ。」


「だからな、《器》から《精神》が出たら、《器》はどうなる?」


「??」


「あーっ。だから…えっと。コップに水が入った状態を思い浮かべられるか?」


「バカにするなよ。楽勝だ。」


「そのコップから水を出す。そしたら、どうなる?」

「…空になるな。」


「水は?」


「…こぼれる。」


「その、こぼれた水はどうなる?」


どうなるって… 


「床に零れるんじゃないか?」


「零れた水はどうなる?」 

「どうって…広がるんじゃないか?」


「そう。広がる。 そして、ここからが本題だ。 その《水の入ったコップをひっくり返した》という過程を同時に幾つかやったとしたら、どうなる?」 


「ん…っと。水と水がくっついて、大きな水溜まりみたいに…」


「そう! そして、空になったコップには何でも入れ放題だ。さて。ここで巧に質問だ。」 


 

「今した《コップ》と《水》の関係を《身体》と《精神》に置き換えると、どうなるでしょーうか?」



コップを身体に、水を精神に。 



身体〈コップ〉から出た精神〈みず〉は、 


「た、大変じゃないか! 」


事の次第をようやく理解した俺は慌てて武を見る。 


「ようやく事の重大さが分かったみたいでよかった。」


「けど、やっぱり俺が選ばれた方がいい理由が分かんない。なんで?」


そう質問すれば、武は手を顎にあてて考えているようだったがすぐ顔を上げ、 

「いや…今はいいや。説明出来ないし、あくまで推測だからな。話しても仕方ない。大体、選ばれてすらないし。」


ま、確かに。 


「どっちにしても、今のところ俺たちにはどうしようない。そうだろ?」


「…あぁ。」



読んでいただきありがとうございました! 


今回の話は作者が常に思っていたり、疑問に思っていたり、ちょっと危惧している事をギャグベースに書きたいと思っています。 


途中から血が入るカモですが、なるべくより多くの方、幅広い年齢の方に読んで頂きたいので流血表現はしないよう心がけますね(作者も苦手なので)。 


ながながと失礼しました

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