共同生活始めませんか?(ニコッ)
「お嫁さんにしたい人は決まったかしら?」
「えっ」
ド直球なイリスの言葉に、レオニスの肩がぎくりと跳ねた。
四人の視線が一斉にレオニスへと向けられる。
レオニスは内心だらだらと汗をかきながら、どうにか微笑みを浮かべてみせた。
「え、えっと……それは、その、皆さんとお会いしてまだあまり時間も経っていませんし……」
「見た目! 見た目はどうです⁉ 男性は年下の方がやっぱりお好きですよね?」
フィオが腰を浮かせてレオニスに詰め寄る。
もちろん隣のリリアーナも慌てて立ち上がって、レオニスに詰め寄った。
「そ、そんな、年齢なんて関係ないですよね⁉ 女はやっぱり中身が大事なはずです!」
「ええと、そうですね……」
「もー、二人ともいちいち突っかかるのやめなさいよ」
「はぁ? もともと知り合いだからって優位に立った気でいるんですか? あなたこそその余裕ぶった態度はやめてください!」
「あらまぁ」
またしても言い争いが始まってしまい、レオニスは頭を抱えた。
どうしよう、僕を取り合って喧嘩するのはやめてほしい。男の僕なんて抜きにして、どうぞこの四人の中でラブストーリーを始めてほしい。……いや、今はそんなこと言ってる場合じゃなくて。
レオニスはワイワイと盛り上がっている四人を前に、ううーんと唸った。
しばらく考えた末、ふと浮かんだアイデアにパッと顔を上げる。
「そうだ! せっかくなら皆さん、しばらくここに滞在しませんか?」
「えっ?」
レオニスの突然の提案に、姫たちがきょとんとして動きを止めた。
「ほら、こんな少しの時間だけでは皆さんそれぞれと親交を深めることはできませんし、今後のことを考えるのも難しいでしょう?
私ももう少し皆さんとお話がしたいですし、よければしばらくの間、この王宮に滞在していってください」
言いながら、我ながら名案だと思った。
そうすれば今すぐに結婚だの嫁だのといった結論に迫られることもないし、きちんと親交を深めたうえで丁重にお断りできれば、最初から結婚する気がなかったとは思われないだろう。それならきっと、父のメンツも保たれるはず。
(……それに何より、もしかしたら、もっと百合を堪能できるかもしれない……!)
そんなことを考え、レオニスの口角が無意識に上がった。
しかしどんなに邪な理由だったとしても、レオニスは元の顔の造りが良い。そのおかげで、口角を上げればそれだけで完璧な王子様スマイルになる。
「ニコッ」と効果音が付きそうなほどには。
理性と煩悩が半分ずつ(厳密には煩悩がわずかに多いが)混ざり合ったうえでの提案だったが、四人はそんなレオニスの言葉に目を輝かせた。
「ぜひ! 私ももっとレオニス様とお話がしたいです!」
「わ、私も! 私の事もっと知っていただければ、私が奥さんにふさわしいって分かっていただけるはずです!」
「あー……うん。私も、こんなすぐに帰ったら家の人になんて言われるか分からないし……」
「まあ、みんなで一緒に生活できるの? ふふ、楽しそうね」
……こうしてそれぞれの思惑を胸に、『レオニス王子が結婚相手を選ぶため』という名目で、姫四人と王子(百合オタク)の共同生活が始まったのだった。