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ミランダの産んだ子は女子だった。

今度は父親似の金髪と青い目、セレスティーナに抱かれて皆に披露された。

王女ではこの国では嫡嗣になれないが、ともかく健康に成長してくれればと、皆祈った。

乳母に選ばれたラミレスは、半年前に女子を出産していたので、自分の子と王女の世話で疲れるだろうと、サラザール伯領の名産品になったローヤルゼリーをお湯に溶かして飲んでいた。

王女はジョディスと名付けられ、最初の子にはあまり構わなかったオーガストも、よく顔を見に来たし、ミランダも立場上難しかったが姿を見られるのを喜んでいた。


結婚当初ミランダは、愛妾という立場を誇示するように、豪華なドレスや高価な宝石で身を包み、取り入ろうとする貴族達に囲まれて、得意の絶頂にいたが、王太子宮はセレスティーナが支配していたので、ミランダのおねだりはせいぜいが着飾る物くらいしか聞き入れられず、人事に関しては全く無視された。

ミランダはふくれていたが、政治に口出さない身分をわきまえた愛妾だと、高位貴族には好意的に受け止められだした。

ミランダの様な身分の者も、能力が認められれば王太子宮は任官させたので、それはミランダのおかげだと感謝する低位貴族もいて、ミランダの宮廷での立場はそれなりに認められたものになっていた。


オーガストは下町通いを再開する事なく、翌年またミランダは懐妊し、また王女を産んだ。

残念ながら母に似て髪が赤かったので、黒く染めて名はアグネスと皆に披露された。


そして、第2王子アーサーにも子ができた。

生まれたのは待望の男子で、王家に安堵の声が広がった。



下町通いをやめたオーガストは、随分変わったと、セレスティーナは思っていた。


セレスティーナのやっている政策などには、相変わらず無関心だったが、王太子妃をエスコートして行う社交はそつなくこなしたし、外交で交渉する事も王太子宮の官吏の指示に従ってやり遂げてくれる。

側近のアンリは僻地から帰るのを拒否し、ガストンは交渉が長引いて、帰国できずにいる。

カールだけが近くにいて、下町通いの後も側近として親しい、もっともカールはセレスティーナ側の人間なのだが、うまくオーガストを引き付けているらしく、クレイマン伯爵家が後援している修道院の話などをよくしていた。


政治政策よりも慈善事業に関心を向けてもらった方が、革新的な政策と階級を超えた人材登用の優れた王太子という評判に、慈しみ深いも加わるので、セレスティーナには都合が良かった。

王太子宮から発せられる改革案はオーガストの功績なのだ。

こうしてオーガストに称賛が集まる方が、セレスティーナの秘密の実行には都合がいいのだ。


ちょうどそのころ、大きな改革案が王太子宮で検討されていた。

王国の軍事に関わる変革をもたらすもので、守旧派の貴族から大きな反発が予想されるものだった。

セレウコス王国の軍は二つに分かれている。

騎士団と各領主が持つ領主軍だ、マンデラ侯爵家が代々団長を務める王国騎士団は王都周辺に位置し、基本王都を守護するが、国境付近で軍事行動が起れば援軍として向かう、各領主の軍も他の領主軍を援護する事もあるが、それはかなり状況が悪くなってからやっと援軍を送るのでかなり稀な事だ。

セレウコス王国の四方の敵は西部の軍事国家マグワイア、南部の海の向こうの海賊達と異教の国、東部の小国群、北部は切り立つ山々の向こうには人が住める環境はないので人よりも害獣対策が必要だった。

王都から各地までは数週間の遠征が必要。

軍事費は騎士団は王家、領地軍は各領主が負担するので、そこに不満を持つ領主は多く、特にサラザール辺境伯や、南部のフェラーラ伯爵は軍事費に頭を悩ませていた。


そこで提案されたのが、軍務省の設立だ、騎士団、領主軍の上に軍務省を置き、命令系統を集中させる。

領主軍には軍務省の予算から軍事費が割り当てる代わりに、他地域への軍事行動の命令に従ってもらう。


これによって紛争が起きた領地に対して、遠い騎士団の援軍の前に、近くの領地からの援軍が速やかに向かうことができて、早めの軍事行動は勝利へとつながる。

しかし、これは従来の各領地の独立性を減じるので不満を持つ貴族も多い。


各領主に事情と利点と運用方法を説明する、この難儀な仕事をするのは、王太子妃セレスティーナの護衛騎士ユリウス・ソロンだった。

彼は、この政策の考案者だからだ。

ユリウス・ソロンは濃い茶色の髪に紫の瞳、整った顔立ちだが甘さはなく、笑う顔を見せる事のない真面目な護衛だ。

主を守ろうとする態度は真摯で、ときおり見せる眼差しの厳しさに、周りが威圧される時もある。

彼は騎士爵家の3男という低い身分ながら、貴族学院では1年の時から剣で負けたことがなく、騎士科の座学でも優秀な成績で、騎士団に入団できる条件を満たしていた。

しかし、ガストン・マンデラに負けなかった事で不興を買い、卒業後、東部の領地軍に行かされようとしていた。セレスティーナが、お飾りの妃となる事の引き換え条件の王太子宮の人事権を使って、彼を王都にとどめたのだ。


セレスティーナの後ろに立ち、彼女を守りながら、謁見する人々の話を聞き、政策を協議する場面を見、俯瞰的にこの国の軍のあり方を考える様になった。

特に、年齢の近いアンドレイ・ヘンダーソンやマンデラ侯爵家に婿入りし次期騎士団長を目指すジュリアンとは親交を深めていた。

アンドレイは妻と共に社交シーズンには王都で社交をする様になり、西部の領主達もそれに倣う貴族が増え、地方の実情が王都にも伝わる様になっていた。

地方貴族との交流が軍務省の創設へのきっかけになった。



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