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ヨハンとラミレスがよく話ているのが、王太子宮で見られる様になったいた。

決して恋人同士の様な甘い雰囲気ではなく、どちらかというと、真剣な討議のようで周りが入り込み辛い会話で、喧々諤々の会話に入れるのはセレスティーナ王太子妃だけだった

「もう少し穏やかに話会いましょうね、他の文官も侍女も引きつっているわ」

「けれどもヨハン様のアイデアは色々と法律に触れるのです、もう少し法律を学んでいただかないと」「俺のアイデアは国の為になる事ばっかりやで、あかんのやったら法律がおかしいんとちゃうん」

「でしたら法改正の為の法案を出してください」

ラミレスのはっきりとした返答に

「せやな」

ヨハンはへらりと笑う

「あのおとなしくて本の虫だったラミレスが、殿方相手にこんなにはっきり言うなんて、昔は思わなかったわ」

「だって、ヨハン様の方言を聞いていると、殿方と話ている気分にならないのですもの」

3人は目を合わせて笑い出した。

ヨハンの訛りはそういう効果があった。

貴族同志のうわべを取り繕った話ではない、心の内を素直に話たくなるような、ヨハンはもちろんこの効果がわかっいる、したたかな男なのだ。

したたかで、周りも良く観察する、だが全てを自分の都合のいい様に謀るほど強欲な男でなかった。


手柄を欲したアンリが南部の商人達の元に赴くと聞いて、ヨハンはあえてラミレスにこの話をした

「南部の大きい商売人は、大抵ざっくりとした商売をしてますねん。広い農地から大量の穀物を買い付けて、それを王都や、他国の大きい商人に大量に売りつける。そやよって大きな金は動くけど利幅は小さいですねん。それで店も倉庫も大きいのがいる、店の広さで税金を決められたら損ですねん。そやよって簿記を使った税金の納め方がええて事を説明したら、向こうは聞いてくれるはずや」


商人への課税は広さにするか、簿記で計算するか選ぶ事に決まり、たいていは簡単な広さで計算していた「私とサラザール卿は関係ございませんわよ、私の話など彼が聞くものですか」

「でも婚約なさってたんでしょ、何があったんか俺は知らんけど、有力な貴族同志の縁談で、お似合いやとも思います、きっかけえお作るのもええんやないですか」

ラミレスはヨハンのこの言葉に苛立ちを隠せなかった。

彼は本当にそれを望んでいるのだろうか、はしたないと思ってもヨハンのその目をじっと見つめてしまう、そしてそのラミレスのその視線を目を逸らさずに見つめ返すヨハンの目に寂しそうな陰りを見つけた「彼との事はもう全て終わった事です」

その言葉をヨハンに告げた時、もうアンリになんの未練もないのをラミレスは確信した

「ほんまですか、ほんなら今ここで俺がラミレス様にプロポーズしてもええて事ですな」

ヨハンはへらへらと笑っている

「ええもちろん、しっかりとお受けしますわ」

ラミレスは言い放った


ヨハンの笑顔は消えた。

誰も見たことのない真剣な表情になったヨハンは、そこにひざまづいて手をラミレスに差し伸べた。


そこは廊下のど真ん中で、行きかう文官、侍女、衛兵の目の前でそれは行われたのであった。




王太子妃が二人目を懐妊したと発表されて祝賀ムードに包まれた王国で、18歳になった第2王子アーサーの結婚式が行われた。

妻となるマリアーナは王子より2歳上で20歳になっており、少年の面影が残る花婿と大人の色香が漂う花嫁は祝う周りの人から見てもその睦まじさに笑顔になった。

二人は兄と姉が早くに婚約した事もあり、王宮や公爵邸で親しく遊ぶ事も多かった、互いに好意を感じていたが、兄姉の婚約があるかぎり結ばれ事はないと最初からあきらめていたのだ。

しかし、セレスティーナがお飾りの妃になる条件として、アーサー王子とマリアーナが結婚できる事になった。

どうしてお姉さまはこの結婚をかなえてくれたのかしら、アーサーへの気持ちは淑女の嗜みとしても隠していたはずなのに、マリーアンナははじめは不思議にも思っていたが、正式に婚約し政略ではあっても二人にとっては嬉しい結果だ、寄り添いながらアーサーの成人になるのを待った。


アーサーは兄オーガストとよく似た金髪と青い目、マリアーナも姉に似た黒髪碧眼で二人の姿は5年前の華麗な王太子の結婚式を思い出させた。

しかし、あの時はお飾りの妃と嘲笑われた花嫁と、これ見よがしに着飾った愛妾のミランダ、嗜みとしての笑顔を崩さない新郎新婦、ぎくしゃくしたものを感じながら結婚式を皆祝ったのだ。


今回は、はにかみながらもうれしさを隠せない花婿と、落ち着いた所作の合間に花婿を気遣い、優しく微笑んでいる花嫁の、二人の愛情の深さに皆心からの祝意を現す事ができた。

式こそ5年前よりも簡素だが、二人の互いへの愛情、素直に祝う周りの人々、気持ちの良い結婚式だった。

新郎新婦を祝う王太子夫妻も、笑顔を湛えて二人を見ていた。

あんな風にお互いを思いやって見つめていたのはいつ頃だったろう、まだ幼い二人が王宮の庭園ではしゃいでいた時、少し成長して互いにプレゼントを贈りあう為になにが好きなのか思い悩んでいた時、それ程昔ではないのに、二度と戻れないほど時間がたったように思う。


二人が見ているものは同じだった、考えている事も同じだった、けれども二人の心ははるかに離れていた。


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