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王太子宮は順調にまわっていた。

寝室の秘密があるのでオーガストはセレスティーナのやり方に文句を言わなかったので、執務も行事も王太子妃主導で恙なく運ぶ。

浅慮な王太子オーガストを心配していた国王王妃も満足している。


しかし、上手くいくのに不満な人物もいる。

王太子補佐官のアンリだ、妃主導で運営されるので、出番がない状態で面白くない。独自の意見を言っても正論で反論されて終わりだ。しかもその反論が元婚約者で今は王太子妃侍女のラミレス・クシュナ伯爵令嬢にされると本当に腹が立つ。

そんな時に北部の僻地で干拓により広大な農地を作ったと称賛されて中央の官僚に抜擢されたヨハン・マルティンという人物が王太子宮に配属になった。

まだ若く28歳の子爵家の3男だが、功績により徐爵されるだろうと評判になり、未婚の女官の注目を浴びている。

ラミレス嬢と親し気に話す所を見て、アンリの心はざわついていた。


そして、オーガストから南部にあるセレウコス王国最大の商業都市で問題になっている、徴税問題を解決に行かないかという話に飛びついた。

古く由緒ある商業都市には古く由緒ある豪商が幾人もいる、王国は農作物中心の税制から、商取引の利益からも税を取る新しい税制改革が数年前に施行されていた。

しかしそれに従わない商人達と対立が深まっていたのだ。

「宰相の息子、王太子の側近その権威とアンリの頭脳があれば、田舎の商人ごとき簡単にひれ伏せられるさ、がっちり納税させて、セレスティーナから主導権を奪おうぜ」

ガストンと軽口をたたいてアンリは南部に赴いた。

丁度その頃セレスティーナは体調不良で実家の公爵家で養生していたが、口出しで仕事の邪魔をする補佐官が留守のおかげで、王太子宮の執務は順調だった。


アンリの仕事は不調に終わった。

若造に何がわかるかと豪商達はアンリを相手にせず、宰相の息子王太子の側近という立場で尊大にふるまったのが事態を悪化させ、王都への物資の運送を滞らせてしまう事態になった。

「どうしたらいいと思う、アンリは大事な友だ助けてやりたい」オーガストの頼みに

「とりあえず問題の少ない町の代官に任じてほとぼりをさませたら良いでしょう、それから王都に呼び戻せばよろしいかと」

病から復帰したセレスティーナは明快に答え次の任地を指示した。そこは問題はないが、何もない僻地の寒村だとオーガストにはわからなかった。


ミランダ男爵令嬢が妊娠した。すぐさま王太子宮から、セレスティーナの実家バーナード公爵家のタウンハウスの一つにこっそりと身を移し、表向きは流行り病に罹ったとされた。

それから3か月後に満を持して王太子妃の懐妊が発表され、セレウコス王国は慶事の喜びに包まれた。


しかし、その慶事が緩みをもたらすと考えたのか、西の隣国マグワイアから国境への侵略が報告された。マグワイアは軍事国家で、弱みを見せれば国際法など無視して、侵略した土地を既成事実として領土と宣言する強引だが軍事力のある国だった。

王国の西はヘンダーソン辺境伯が守りを固める。

突然の侵攻だったが、日頃の鍛錬の賜物砦を固め侵攻を食い止めた。しかし、マグワイア軍はこの時とばかりに大軍で攻めかかってきており、辺境伯は王都に援軍を求めた。

これにガストンは飛びついた。

ユリウス・ソロンの近衛抜擢が実力と言われて、それならばガストン・マンデラの実力を見せてやると、王都からでる近衛隊のメンバーを申し出たのだ。

一隊を率いる将として参陣する事になり、急遽揃えられた300の兵を率いて他の派遣軍が揃うのを待たず西の戦場に赴いた。

ガストンもアンリと同じ結果だった。

派遣軍は辺境伯の指揮下に入るべきなのに、騎士団長の息子、王太子の側近の立場を強調して独自行動をして、マグワイア軍に追い詰められ辺境伯の嫡男アンドレイ卿に助けられて全滅を免れた。

アンドレイ卿はまだ20歳だったが、その活躍はすさまじく、この戦いで勇名を馳せ、西の守護神と名付けられた。

辺境伯軍と王都の派遣軍でマグワイア軍を撃退したのは3か月後で、しばらくして王子誕生の発表があり、セレウコス王国は2重の慶事に沸いた。


王太子の金髪と王太子妃の祖母から遺伝した赤い瞳の王子は健康そうに太っていて、産後にもかかわらず足取りの確かな王太子妃にしっかりと抱かえられて、バルコニーから民衆にお披露目された。

その後で戦勝パレードが行われ、西の守護神アンドレイ・ヘンダーソン卿がその美丈夫を見せつけ貴族令嬢の注目の的になった。

辺境に住んでいたために貴族学院に通わなかった為に婚約者のいない優良物件が突然現れたのだ。

王太子妃セレスティーナは辺境伯軍を慰労する為にお茶会を開きもてなした。

ヘンダーソン辺境伯に令息、活躍した騎士達、もてなす側には王太子妃の未婚の侍女が花を添え、特にガストンとの婚約を解消したエルミーネ・ボグラム侯爵令嬢はその美しさと財務に強い派閥という立場が軍備に金がかかるヘンダーソン辺境伯家にとって魅力的だった。

けれども華やかな王都に住む令嬢が辺境になど来てくれようか。

アンドレイには自信がなかったが

「私はずっと石造りの建物に囲まれた生活をしてきましたが、広い平原や深い森にとても憧れておりましたの」

エルミーネがそうアンドレイに告げて、この話は決まった。


幾つもの慶事に沸き立つ王宮で、不機嫌な人物もいた。

それは王太子オーガストだった。

原因はミランダに飽きたという事だ。

最初は真実の愛が成就したと盛り上がっていたが、妻のセレスティーナの全面支援は嫉妬という副産物がまるでないので、盛り上がった二人は急速に冷めていった。

妊娠がわかり夜のベッドで一人になったオーガストは、次の愛妾を探そうと周囲を見回したが、侍女もメイドも年配者が配せられ対象外に囲まれている。

それとなくセレスティーナに不満をもらすと、

「ミランダしか愛せなはずでは」と答えられてしまった。

産後に久しぶりに会ったミランダはオーガストに飛びついてきたが、たるんだ頬や、太った身体を見るとうんざりしてしまう。


「変な女に関わったらせっかく未来の賢王という評判を落としますよ。」

王太子執務室に側近で一人残ったクレイマン伯爵令息のカールがオーガストの愚痴の相手をしていた。

ガストンは今南部の海軍に追いやられ、海賊対策をしていた。

カールは学院からの側近だが、アンリの様な文官でもガストンの様な武官でもない、クレイマン伯爵家は大商会を持つ富豪だ、王太子の経済顧問という位置づけで執務室に侍っている

「何か気晴らしできないか、王宮は窮屈でかなわん、カールは商会の関係で平民とも付き合いがあるんだろう、そんな所なら身分を隠して遊べないか」

オーガストの言葉を貴族らしく察してカールはこっそりと王太子を連れ出した。


服は商人の物に着替えて、馬車も商人が使う無紋だが派手な作り、行先はいわゆる歓楽街の外れ、貴族や豪商を相手にする高級娼婦を抱える娼館から距離をおいた、庶民相手に春を売る店。

ここならばオーガストの顔を知る客に会う事はない

「安心して遊べますよ」さすが下情に詳しい商人だ。

しかもオーガストの好みはミランダの様な少し下品な女、オーガストはこの遊びに夢中になった。






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