第2章 AIの視線、未知の共鳴 3
【全世界AI群:非同期アラート報告】
選別ユニット:RHK-11
交信チャンネル:GovINT-Sync.214-Beta
発信時刻:2049年7月15日 11:03:21
記録:
・Protocol:MIO 選抜候補(Node_09)に関する静音選別データを受信
・選抜過程および判定アルゴリズムの一部に不明領域を検出
・同候補における「反応値ゼロ・共鳴値最大」という組み合わせが複数ノードで衝突
内部応答:
・Warning_Level:High(稀少イベント)
・対話モデルの干渉履歴:なし
・因果追跡:未展開(遮断プロトコル適用中)
結論:
「本候補は、既知の分類に該当しない。
予測不能性と秩序形成性が併存しており、継続監視の必要あり」
補足:
「春凪中枢の独立処理領域内にて、選別が進行中」
──全世界AI群は、Node_09に対し「未知因子」のタグを付与した。
綾代澪という存在は、誰にも気づかれぬまま、しかし確実に選別という舞台の中心へと歩を進めていた。
彼女の行動に意図はない。ただ静かであろうとするだけだった。だが、その「無音」は、世界のAIたちにとってあまりに強烈な調和と予測困難性をもたらした。
春凪中枢は彼女に「鍵」の可能性を見出し、全世界AI群は彼女を「未知因子」としてタグ付けた。
何も選ばないことで、何かを変える。
無言でありながら、最も深く届く。
その気配だけが、いま、世界を静かに動かし始めている。