1.星を詠む魔女
月明かりにより星がよく見える、森の先の高台、そこには一本の大きな木が生えていた、その木を登ればよく見える星がさらに綺麗に見れるのだろう
するとそこへ、鎧を着た傷だらけの男が足を引きずりながらやって来た
「ハァハァ、満身創痍でどこか分からずにやって来たが最後に星が綺麗に見える場所で生き絶えるののなら少しは報われるな」
男は高台に唯一生えている大きな木に体を預ける、そして朦朧としている意識が途切れかけた次の瞬間何処かから声が聞こえる
「うわぁーーーあーーー!!」
ゴツン!と男は木の上から落ちて来た何かとぶつかり、意識が途切れた
◯
「うっ…ん…」
頭に痛みを感じながら男は目を覚ますと、見慣れない部屋の一室のベッドの上だった
「あっ!目が覚めたんだー!」
男が目を覚ましたのとほとんど同じタイミングで部屋のドアが開き、5歳ほどの少女が入って近づいて来た
「えっと、君は?ここは何処かな?」
「私はヒミカ!ここはミノリ村だよ、ひどい怪我をしてたお兄さんをねステラおねーちゃんがね、頑張って担いできたの〜」
ヒミカと名乗った少女が答えると男は自分の体を確認する
「怪我…そういえば負ってたはずの怪我が癒えてる?頭痛はするけどなんで?」
「ステラおねーちゃんがね、頑張って治療してたんだよー、このままだと私が原因で死なせちゃうわとか言いながら必死に、それにね、この村の周りで取れる薬草はすんごく効くんだよー!!」
「薬草のおかげここまで癒えたのか…そのステラって人は今どこに?」
男がヒミカに聞いた次の瞬間2人のいる部屋の扉が開き16、7くらいの女性が部屋に入って来た
女性は起き上がっている男を見る途端駆け寄り
「よがっだー!!登ってだ、木から落ちてその下にいる大怪我しでるひどと頭がぶつかった時は、わだしが殺しちゃったかとおぼいまじたー!!」
女は泣きじゃくり鼻水を垂らしながらながら男にしがみつき喋る
「頭がぶつかっただから頭痛が、えーと、あなたが僕をここまで連れて来てくれたステラさん?それにあなたも頭を打ってると思うんですが大丈夫なんですか?」
「はい!私足頭なんで大丈夫です!!自己紹介忘れてました!私の名前はステラ各地の星を見て回ってそれを本に出すのが夢の旅人です!!」
「旅人ということはこの家の人ではないんですね」
「はい、ヒミカちゃんの家に泊めてもらってるんです、あなたは、甲冑を着てたことからフウライ王国かコウゲツ王国の兵士さんですよね、いまこの村の近くで戦争中ですし」
「ええ、自分はフウライ王国の騎士アレスです、フウライ、コウゲツ両国と関係のないジュウレンの領土のミノリ村で助けてもらうとは、申し訳ない、迷惑をかけぬようすぐに出ていこう」
男はアレスと名乗り布団から出てそばに置いてあった甲冑を纏い始めた
「大丈夫だよ〜おにーさんもうちょっとこの村で休みなよー、ステラおねーちゃんが怪我を治したって言ってもまだ疲れてるだろうしさ、それにお腹も空いてるでしょ」
ヒミカかがそう言うとアレスのお腹がぐぅ〜となった
「お母さんがご飯用意してくれてるからせめてそれは食べて行きなよアレスおにーさん」
「ごはん!!」
ごはんという言葉に涎を垂らしながら反応するステラ
「ステラおねーちゃんはさっき食べたでしょ、夜ごはんまではお預けだよ!」
「しょんなーん…」
「アッハハ、ではご飯をいただいてから出て行くとしましょう」
ヒミカは部屋を出てご飯のあるところまでアレスを案内をする
アレスはそのまま席につきご飯をいただく
「おいしい…すごくうまいですねこの食材」
「この村の近くの森は恵みの森で美味しくて栄養満点の食材が沢山あるからね、しっかりと食べてちゃんと体を休めてよアレスおにーさん」
美味しそうにご飯を食べているアレスを羨ましそうに指を咥えていたステラが何かに気づいたようで窓の方を見る
「何か外が騒がしくない?」
「えーそう?」
ステラにそう言われて外に耳を傾けるヒミカすると外から何やら人が言い争ってる声が聞こえる
村の食糧庫の前に鎧をきた男ぎ4名、その周りに村の人たちが集まっていた
「やめてください!」
「うっせーな!ここにある食材を全てよこせって言ってるだけだろ、どうせ森に食材は山ほどあるんだろ、なら俺らがこの食材を貰ったってなんの問題もねー、それに俺らにここで恩を売っておけばコウゲツから援助があるかもしれねーぜ」
そう言い放った男と同じ鎧を着ている男3名が村の食糧庫から食糧を荷車に乗せて行く
「私たちの国は中立なので食材を渡すのは構いませんが限度というものがあります、流石に全て持って行くというのは困ります!」
「だからうるせーんだよ!!」
鎧をきた男は言い争っていた村の女性を押し除ける
「きゃあ!」
「食糧を頂こうしてその態度はどうかと思いますよ」
押し除けられ倒れそうになった女性を騒動に気づいてやって来たアレスが支え鎧をきた男に問いただす
「なんだテメェ!…ん?その鎧はフウライの、それに肩の印はフウライ騎士団の隊長の印!」
「この場は中立国ジュウレンの土地、私たちフウライとコウゲツの戦争は関係ありません、そしてこの村には私を助けていただいた恩があります、なのでこの村で争い事、面倒事は起こしたくありませんので、必要な分だけ頂き引いて頂きたい」
アレスはそう言いながら腰に携えている剣に手を置く
「ちっ!今乗っけた分だけいい、テメェら行くぞ!」
アレスの牽制が効きコウゲツの兵たちは食糧庫から食糧を出すのをやめ、荷車に乗せた分だけの食糧を持って去っていった
「ありがとうございます、フウライの騎士さん、怪我の方はもう大丈夫なんですか?」
「ええ、薬草と治療のおかげか、寝てる間にすっかりと良くなりました」
アレスが助けた女性と話しているとそこにヒミカが走って近寄って来た
「ママー!!大丈夫?」
「ええ大丈夫よヒミカ、フウライの騎士さんが倒れる前に助けてくれたから」
「ありがとう!アレスお兄さん!お兄さんのおかげでママが怪我しないですんだよ」
「ヒミカちゃんのお母さんだったんですね、ご飯ありがとうございました、おいしかったです」
助けた女性がヒミカの母親であることを知ったアレスはご飯の礼を言う
「お口にあって良かったは、助けてもらったお礼として夜ご飯はもっと美味しいものを作りますね」
「いえ、自分は村を出ますので、これ以上ご迷惑を掛ける訳には行きません」
「何言ってるんですか、迷惑なことなんてありませんよ、それに自分で大丈夫と言っても病み上がりなんです、1日は休んだ方がいいですよ!」
「そうそう、美味しいご飯が用意されるんです!今日1日は休んでいきましょうよアレスさん」
「ママとステラおねーちゃんの言うとおりだよ、泊まってこーよ、アレスおにーさん!」
「そうですね、せっかくのご厚意に甘えさせてもらいましょう」
アレスは、3人におされてこの日は村で休むことにした
◯
コウゲツの兵士を追い払ってから時間が経ち日も落ちてすっかり暗くなり、ステラ達はヒミカの母親が作った夜ご飯を食べていた
「いや〜何度食べてもヒミカちゃんのお母さんの料理は美味しいですね〜」
美味しそうにご飯を食べるステラのすぐ姿を微笑みながらそれを見ているヒミカの母親
「も〜ステラおねーちゃん、今日の主役はアレスおにーさんなんだよ」
「だって本当にヒミカちゃんのお母さんの料理最高なんだもーん」
「仲がいいですねお二人は」
そしてご飯を食べ始めてからしばらくすると外が騒がしくなりそれから間も無く家のドアがドンドンドンと強く叩かれる
「すまないみんな外に出て来てくれ!森が大変なんだ!!」
ドアの外からする焦った声に反応して急いで外に出る
「なに…これ…」
外に出て皆が目にしたのは赤く燃え上がる森の姿だった
「誰かが火を放ったんだ!それから広がってくように森が燃え上がってこの勢いのままだと村まで火が回るのも時間の問題だ!」
「森に行って急いで火を止めないと、みんなの森が村が焼け消えちゃうよ!」
そう言ってヒミカは急いで森の方へ向かって走っていった
「待ってヒミカ!危ないから待ってなさい!」
それに続いてヒミカの母親も森の方へと走って行く
「まさか…すみません、すぐに自分も向かいますのでステラさんは先に村の皆さんのてつだいを!」
そう言ってアレスは森とは違う方に行ってしまった
「えっ、ちょっとアレスさん!あーっ、考えても仕方ない私がなんとかしないと、星霊さんお力かりますね!」
◯
「クッハハハ、燃えてる燃えてる!ぜまーねーぜ!!」
「流石に森を焼くってのは、やりすぎだったんじゃないんすか〜」
「別いんじゃねー、俺らにゃ関係のない村だし今から村人を皆殺しにすれば誰がやったかなんてバレないし、ついでに昼に持ってけなかった分の食糧も一石二鳥っしょ!」
「カッははは、俺らに逆らうからこうなんだよな!」
そう話していたのは昼間に村に来たコウゲツの兵士達だった
「やはりあなた達でしたか、森を燃やすなんて、なんてひどいことをしたんです!!」
「テメェはあん時のフウライの騎士〜、ちょうどいい、探す手間が省けたぜ!まずはお前からぶっ殺してやるよ!!」
「あなた達に村をやられる訳にわいきません、戦争とは関係のない場所ですが、致し方ありません」
剣を構え戦闘体制に入るアレス
「たった1人で俺たちに勝てると思ってるなんて甘ぇ野郎だな」
するとゾロゾロと後ろから別のコウゲツの兵達がやって来てアレスを取り囲んだ
「多勢に無勢ですがあなた達程度なら関係ありません、覚悟を」
◯
燃えている森の前まで来たヒミカ、周りでは村の人たちが必死に水をかけて火が廻るのを食い止めようとしていた
「なんとかして村に火がたどり着くのだけは防ぐんだ!」
村の人たちは必死に水をかけるが一向に火は治ることはない
「どうしよう…このままだと森が…村が…」
涙が流れ落ちるヒミカの横にステラがやって来てヒミカの両肩に手をおいてにっこりと笑う
「大丈夫だよヒミカちゃん」
「…おねーちゃん?」
ステラは懐から本を取り出すと、その本を前に掲げる
「雨犬様」
ステラがそう呟くと本が浮かび上がりパラパラとページが自然にめくれだす
そしてページのめくりが止まると本が光だし空中に星の縮図が浮かび上がり、浮かび上がった星を線が結び、子犬の形を作り出す
『周りに水の無い荒れ果てた大地にある小さな町、そこに住むとある少女が、町の外を歩いているとひどく弱っている犬を見つけた。
少女は見つけた犬を抱え、家へと戻った。
子犬はひどく喉が渇いているようで、少女はなけなしの水を子犬へと与える。
水を与えられた子犬はみるみるうちに元気を取り戻して行く、そして元気になった子犬は外に出て「ワン」と鳴いた。
すると、少女の頭にポツンと水が落ちて来た。
子犬は「ワンワン」と鳴き続ける「ワンワン」と続ける、そしてそれに呼応するように雨が降ってくる
「ワンワンワン」「ワンワンワン」ついに雨雲が町全体を覆い雨が降り注ぐ
雨によって潤った町は、恵みの雨を降らした子犬を讃えて雨犬様と呼んだのだった』
本から作り出された子犬が「ワンワンワン」と鳴き始める
「星霊さんどうかよろしくお願いします」
「ワンワンワン」と鳴くたびに雨雲が作られ森の上空を覆う、「ワンワンワン」と鳴き雨が降る
「雨…みんな雨だよ!!」
次第に雨は強くなり、段々と火が弱くなっていく、そしてついに森を焼いた火が消え去った
「奇跡だ!奇跡が起きたぞ!!」
村の人たちは歓声を上げ火が消えたことを喜んでいた
◯
アレスの周りには倒れ地に伏しているコウゲツの兵達
「お…お前は…化け物か…」
「化け物とは失礼ですねただあなた達より何十倍何百倍鍛錬をしているだけですよ」
剣を納め火の鎮火に向かおうとした瞬間、雨が降り出し、するとその雨が強くなり、森の火を消してしまった
「何が起こった…」
アレスはひとまず森に向かい、森に着くと火が止まり歓喜している村の人たちが目についた、そしてその中に悲しい顔をしているヒミカを見つけて声をかける
「ヒミカちゃん、奇跡でも起きたのかな?いきなり雨なんて…」
「でも森は焼けちゃった、私たちの森が…」
「それも大丈夫だよヒミカちゃん星霊さんが力を貸してくれるよ!」
ヒミカに声をかけた後もう一度本を前に出し、浮かび上がる本
「豊穣の小人達」
先ほどと同じようにページがめくれ光出す本、そして2頭身の小人が3体作り出される
『とある枯れた森にお腹を空かせた少女が彷徨っていた、何日もまともな物を食べていない、少女はひどく痩せていた
そしてついに力が尽きてその場に倒れ込んでしまった
段々と意識が薄れていく中、何処かからか笑い声が聞こえてくる
「アッハハ」「ワッハハ」「カッハハ」と聞こえてくる声
「あれ誰かが倒れてる」「女の子が倒れてる」「お腹お空かせて倒れてる」そこに現れたのは小さな小さな小人だった
「大変だ森を豊かに咲かせなきゃ」「咲かせるために歌わなきゃ」「咲かせるために踊らなきゃ」
そして小人達は歌い踊り始めた
すると枯れていた森の木に葉ができ花が咲き実がなった
そして小人はその実を少女に与えると少女は元気を取り戻し、豊かになった森で小人達一緒に歌い踊るのだった』
ステラが作り出した小人が歌い踊り始めると焼けて枯れ果てた森はみるみるうちに自然を取り戻していく
「すごいよ、ステラおねーちゃ!森が元に戻ってくよ!!」
「こ、これは…魔法…」
ステラの起こした奇跡に戸惑いを見せるアレス
「ステラさんあなたは魔女だったのか!!」
ステラに剣を向けるアレス
「うん…そうだよ、アレスさんは魔女が嫌いなの?」
悲しそうにアレスを見るステラ
「なんでステラおねーちゃんに剣をむけてるの?魔女だとダメなの、魔法が使える以外は私たちと何も変わらない食いしん坊な優しいおねーちゃんだよ、ステラおねーちゃんは」
ヒミカにそう言われ、我に帰るアレス、剣を鞘に戻しステラに頭を下げる
「すみませんステラさん取り乱してしまいました」
「ううん、大丈夫だよ、アレスさん、でもアレスさんにとっては魔女はいい存在じゃ無いんだね」
「魔女は自分の両親の仇ですので、でもあなたが違うのはわかっています、それにあなたはとても優しい人だ、自分の怪我はあなたの魔法によって癒やされたんですね」
「そっかそれじゃあ魔女を恨んでもしょうがないね、後アレスさんを治したのは正確には星霊さんだよ」
「星霊?」
「星に宿る小さな神様みたいな存在なんだよ、私はそんな星霊さん達から力を借りてるの」
「そうだったんですね、その星霊とステラさんのおかげで今回の件はなんとかなった訳だ」
先ほどまでとは違い穏やかな顔で話すアレス
「ほんとーにありがとう!ステラおねーちゃん!!」
「本当に助かりました、村のみんながあなたに感謝しています、明日はとびっきり美味しいご飯を用意しますね」
「やったー!ありがとうございます!最後のご飯がいいものになって最高だー!!」
「最後ってステラおねーちゃも明日出てちゃうの?」
悲しそうな顔で聞くヒミカにステラは笑顔を向ける
「私は旅人だからね、そろそろ次のところに行こうとしてたんだ」
そう言ってステラは先ほど魔法を使っていた本とは別の本を取り出しヒミカに渡した
「これは私が書いてる途中の星の本なんだけどこれをヒミカちゃんに、いつか完成させた本を世界中の人に見てもらうのが私の夢、ヒミカちゃんには私の本のファンになってほしいな」
「うん!絶対にステラおねーちゃんの本買うね!」
そうして一件落着して落ち着いた一同は家へと戻りその日が終わった
次の日の朝、ヒミカの母親が言ったようにその日の朝ごはんはとびっきり豪勢なものだった
アレスは朝食を食べ終わると一足先に村を出て行った、最後にステラにまたどこかでと笑顔で言って去って行った
それから少し経ってからステラはヒミカの母親に数日分の食糧と料理された弁当を受け取り出て行く準備が整った
「それじゃあありがとうございました、私の本が完成したら読んでねヒミカちゃん、その途中バージョンよりもっといいもの作るから」
「うん!絶対に読むねステラおねーちゃん、すごく楽しみにしてるよ!!」
そしてステラは村を出る、手を振り見送ってくれている村の人たちがだんだんと小さく見えてくる
ステラは次の場所で星を見るために旅を進める




