ヨーヨー持ってないんだけど……
「整理番号をお取り下さい」
(くそっ、異世界でも待たされるのか……)
番号は143番、今呼ばれているのが56番。大分先だ……
「当たり前でしょ?妖々師になりたい人は毎回たくさん来るの」
なぜかエンリンがへばりついて離れないんだが……
「私はアンタのためを思っていってあげてるの!」
(なんか…お母さんみたいになってきたな……)
「ちょっと待ってくれよ。別に俺が受験する位いいだろう?特に関係もないんだし」
「そっ、それはそうだけど……」
「ちょっと試してみてダメそうならすぐ諦めるよ」
「ホントよ、絶対だからね!!」
そう言いながらようやく帰っていくエンリン。なぜか数歩歩いては何度もこっちを見てくる。
俺は手で早く帰れと促してやった。
(ようやく、静かになったな)
とは言え待ち時間は長い……
「よう兄弟!!」
いきなり男が隣に座り、肩を組んできた。
「俺はお前の兄にも弟にもなった覚えはないが?」
「そう言うな。俺も順番待ちでヒマなんだ」
……まあこう何度もうるさい奴が来るものだ。
「お前も妖々師になるんだろ?俺はセイケツ、よろしくな!」
セイケツと名乗る男は、俺に向かって満面の笑みを浮かべる。
タンクトップ?みたいな恰好だ。鍛えているらしく筋肉は隆起していた。
いかにもパワー系といった感じだ。
「どうだ?ここで会ったのも何かの縁だ。俺と組まないか?」
「組んでどうするんだ?おままごとでもする気か?」
「連れねえなあ……二人で協力した方が合格しやすいだろ?」
こういう奴は土壇場で裏切ると相場は決まっている。
「一人で充分だ。組みたきゃ他のヤツを当たれ」
「俺は勘が良いんだ。天はお前と組めと言っている」
(何が天だ。ぶっ飛ばすぞ筋肉バカが……)
組む組まないの問答を繰り返している内に、いつ間にか番号が呼ばれた。
(やれやれ……ようやくか……)
受付に行くと紙を渡された。
必要事項を記入して提出するらしい……
(名前は…まあ本名でいいや。住所と連絡先は……おばさんの宿でいいだろ)
書いて提出、1時間以上またされた感じがするが、手続きは5分で終わった。
「よしっ、日にちも分かったし…あとは帰るかあーっ!!」
「お待ちください。テストがあります」
「はぁ?テスト?」
「はい…持ってきたヨーヨーで適性を見ます」
「えっ…俺ヨーヨー持ってきてないんだけど……」