妖々師だってよ
「あんたバカン?」
「へっ…ば…バカだとうぅっ!!」
俺はプンスカしようとしたがどうやら違うらしい。
「バカンよ、ハ・カ・ン!……どうやら違うみたいね」
少女は人を探しているらしい。
だが目当ての人間じゃないと分かるとそのまま去ろうとした。
「まっ……待ってくれ!!ここはどこなんだ?」
「……へっ?」
…………
ここは洋州の御という街らしい。
右も左も分からずキョロキョロしている成人男性を連れた少女。
ざぞ奇妙な光景に映るだろう。世が世なら不審者情報に上げられポリスメンだ。
「ほら、こっちよ……」
少女の名はエンリンというそうだ。漢字らしき字を出されたが意味がわからん。
とりあえず食堂に連れて行ってくれるらしい。
「よく分かんないけど、記憶喪失か何かなの?」
うーん、事情は何となくわかる。これは異世界転生だ。
俺のいた日本では吐いて捨てる程の常識だが、この少女にそれを説明した所で通じないだろう。
和という国から来たが船が難破してここに辿り着いた、記憶?…ないですねと嘘を付いた。
「そっか……それじゃあ仕方ないわね」
飯が運ばれてくる。何かよくわからんが美味そうだ。
俺はそれを一気に掻き込んだ。
「それで…アンタこれからどうするつもりなの?」
どうするって言われても困る。
異世界に連れて来られたら何か適当に案内役が上手く成功するようにリードしてくれるんじゃないのか?
「言っとくけど、私は世話しないからね。鬼と戦わないといけないし」
「そうだっ、鬼って何だ?あのデッカイの……」
「見たでしょう。あの角の生えた化物が鬼よ」
何だろう、言ってる事は分かるが意味が通じない。
俺は何であんなのがいるんだ?と聞きたいわけだが、彼女の世界では当たり前なのだ。
日本にクマがいるのはなぜだ?と聞いているのと同じだろう。
「鬼がいるのは分かった……それで君はなんでその鬼と戦うんだ?」
「だって、妖々師だから……鬼を倒すのが私の役目なの」
妖々師?何だそれは?とりあえずモンスター狩るアレ的な職業で良いのか?
「じゃあ誰かに雇われてるって事か?」
「そういう人もいるわよ、宮廷妖々師ってやつね。まあ私は野良だけど……」
飯を食いながら、彼女の話を聞きながら、どんな世界かおおよそ分かってきた。
ここは中華っぽい世界で、ヨーヨーを使って鬼と戦う妖々師ってヤツがいる世界らしい。
んで……俺はここからどうすればいいんだ?
「じゃあ、私はこれで帰るわね。ちょっとは恵んであげるから早く仕事探しなさいね」
そういって銀貨を数枚置いていった。
どうやらここのメシ代も払っておいてくれたらしい。
とはいえ、ヒロインらしき少女とはもう別れてしまった。
これからどうすべきか……