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⑯ それは尋問ですか?




ガイが手際よく手当をしてくれているのをぼんやりと見ていると、彼が包帯を巻きながら話しかけてきた。


「リシア、何であいつの弱点が火属性だって、知ってたんだ?」


来た。鍛冶屋の説明もなくこんなことをしたらガイが不審に思うことくらい、リシアにだって予想はついていた。

でもあの場で知らぬふりをするわけにはいかなかった。そうしていたら、今頃ふたりともトカゲのお腹の中だろう。



「通りで転んだ女性がいたでしょ。その人に魔獣の特徴を聞いたの。そしたら大きなトカゲみたいだっていうから、もしかしたらそうかなって思って、鍛冶屋のおじさんに魔石を出してもらったのよ」

「リシアは魔獣に詳しいのか?」

「詳しいってほどではないけど、魔術師試験を受けるに当たって色々と勉強はしてたし、興味もあったから」

「興味?魔獣に?」

「フレンから聞いたでしょ?私達故郷の山で特訓してたから、獣とか魔獣とかに詳しい方がいいと思ったの」

「へぇ…」



これは半分本当で、半分は嘘だ。

魔獣に詳しいのは、前世の知識が大きく影響している。そもそも魔獣の情報など、一般人が簡単に読めるような文献には載っていない。

でも、勉強したのも本当だ。さすがに前世の記憶だけでは、細かい知識まではなかったので、できる範囲で調べ直してもいる。



「ガイこそ、騎士団にいたのに魔獣については詳しくないの?」

「手厳しいな。俺もある程度は学んでいるが、そもそも魔獣が被害を出すほど増えたのはここ数年だし、騎士団内でもまだまだ討伐例は少ない。だからこそ、フレンのような一般人が駆り出されてるわけだ」

「確かにそうね」


騎士団で手に負えるのであれば、フレンが出る必要もないだろう。


「それにしても…ずっと気になってたんだが、なんで特訓なんてしてたんだ?」

「え?」

「フレンと故郷で特訓してたんだろう?普通に暮らしていたなら、そんな必要もないと思うが」

「魔術師になるっていう目標があったし」

「にしたって、そこまでの実力をつけるなら相当な努力が必要だったはずだ。危険な目にも遭ったんじゃないのか?フレンに至っては魔術師を目指しているわけでもない。フレンもリシアも、なんでそこまでしてたんだ」


リシアはガイの眼差しを真っ向から受けた。


まるで世間話のような体を装って聞いているが、これは明らかに探られている。



彼のことは仲間としては信用しているが、リシア自身のことを話すほど信頼はしていない。そもそも前世云々の話など、家族にもフレンにも、誰にもしていないのだ。

詮索はされたくなかった。




「それは、尋問か何か?」

「え?」

「さっきからガイは、私に質問してばっかり。私に関しては、可もなく不可もなしと報告して終わったんじゃないの?正直、過去のことを根掘り葉掘り聞かれるのは好きじゃない。私に聞いてるってことは、フレンだって話さなかったんでしょ?だったら今ガイに話すようなことはないよ」


これ以上詮索されないように、毅然とした態度を取るつもりが、思った以上に突き放すような言い方になってしまった。内心申し訳なく思いながらもリシアが黙っていると、ガイは少しあっけにとられたような顔をしたあと、困ったように眉を下げた。



「…すまない。詮索が過ぎた」

「…私も、きついこと言ってごめんなさい。でも、別にみんなに悪影響を及ぼすようなことは、隠してないから」

「ああ、分かってる。一つ言っておきたいのは、俺は別にリシアを疑っているとか、陛下から何か言われているとか、そういう理由で聞いたわけじゃない」

「じゃあ、どういう理由?」

「さっきも言っただろう。単純に、興味がある」

「は?」


そういえば魔獣が現れる前、彼はそんなことを言っていた気がする。


「興味って何?」

「リシアは俺が想像していた人物像とかけ離れていた。だから、単純にリシアのことが知りたいだけだ」

「人物像って?」

「まぁその辺は、俺の事情だ。みんなに悪影響を及ぼすようなことは、隠してないよ」



先ほどのリシアと同じセリフを返され、リシアはぐっと言葉に詰まった。



「…なんか腑に落ちない」

「はは、まぁ気にするなよ」

「それ、ガイが言う?…手当て、ありがとう」

「ん」



ちょうどガイによる手当てが終わり立ち上がったところで、フレンとミリシャがこちらに駆け寄ってきた。



「リシア、ガイ!大丈夫か!?」

「遅いぞフレン。もう終わった」

「リシアさん、怪我したんですか!?」

「怪我?!リシア、大丈夫か?」


フレンはソワソワと、リシアの腕の包帯と顔を交互に見る。

その姿に、リシアは安心を覚えた。

フレンは変わらない。小さい頃からずっと。


ここ最近のガイとの隙のないやり取りに、リシアは少々疲れていた。だからフレンとミリシャの二人は癒やしだ。



リシアはそっと笑いかけた。


「かすり傷よ。ガイが手当てしてくれたから」

「でも、回復魔法かけます!」

「ありがとう」

「リシア、無理するなよ」

「うん」


ミリシャの手がかざされると、怪我をした部分が温まっていく。回復魔法自体がそうなのかもしれないけれど、ミリシャに魔法をかけられると、とても心地よい。



ふと横を見ると、ガイはいつもの様子でフレンに事の次第を話している。その姿は、ゲームと同様、頼れるお兄さんという感じなのだが…



(…ほんと、腑に落ちない)



彼の言う興味とは一体何なのか。


すっきりしないもやもやを抱えつつも、お互い様な点も否めないので、リシアはこの件はこれ以上気にしないことにした。




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