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⑬ 旅支度

第二章です。宜しくお願い致します。




「すごい…!これが武器庫ですか?広いですね…」

「武器庫だけで一般家庭向けの家がいくつか入りそうね」

「騎士団の武器の予備も全部保管されているからな。俺たちが用があるのはこっちだ」


リシアとミリシャがパーティー入りすることになった翌日。もちろんこのまま手ぶらで出発することは出来ない二人は、旅支度をすることになった。まずは大事な武器を、ということでガイに案内されたのは、王宮の武器庫。


そこは倉庫というにはあまりに広い空間で、だだっ広い部屋には大量の剣や槍、弓や盾、防具など、あらゆる装備が詰まっていた。


「俺たちに必要な光属性の武器はこの奥。通常は鍵がかかっていて、騎士団長や王族じゃないと入れないようになっている」

「おお…」


倉庫の奥には鍵のかかった重厚な扉があり、ガイの案内でそこに入るといくつかの武器が一つひとつ箱に入れられて大事に保管されていた。

ちなみにパーティー入りが決まったあと、リシアとミリシャも光属性武器に適性があるかの検査を受け、無事適性ありと出ている。

適性があるだけでもかなり珍しいことなので、周囲は大盛りあがりだった。



(あ、これは…フレンの初期装備!)


リシアはそこに保管されていたいくつかの武器に見覚えがあった。ゲーム内でも出発前に、光属性の武器がないと話にならないということで、国から装備が支給されるのだ。


「俺はこれと同じ剣にしたんだ。まあ一番無難そうだからな。武器は貴重な素材が入手できれば強化もできるらしいから、これからは素材集めも大事になるな」


フレンはすでに腰に佩いている剣をポンポンと叩きながら言う。やはり彼はこの剣にしたようだ。


(私のは…これだな)


リシアは部屋の奥にひっそりと置いてあった短剣を見つけると、迷うこと無くそれを手に取った。ゲーム内でのリシアの初期装備の短剣だ。


知識としては知っていたが、もちろん手に取るのは初めてだ。光属性の武器というのも初めて触る。なんだかほのかに温かい気がするし、手に馴染む感触が嬉しい。


「確か、この魔石の部分に魔力を通すと、光属性になる…って設定だったよね」


剣の柄の部分には小ぶりの石がはめられている。恐らくこれが魔石だろう。

試しに魔力を通してみると、ほんのりと魔石が光った。


「これでいいのかな?」

「もう決めたのか?」

「ひぃえっ」


リシアが短剣を握ってあれこれ試行錯誤していると、入口付近でミリシャに武器の選び方を教えていたはずのガイがすぐ後ろに立っており、リシアは飛び上がらんばかりに驚いた。


「ガイ、気配消して近寄らないでよ…びっくりした」

「悪い悪い。これからは近寄ってますよーって言いながら近付くよ」

「なんかバカにしてる…?」


リシアがじろりと睨むのもお構いなしに、ガイはリシアの短剣をひょいっと手に取った。


「何でこれにしたんだ?」

「え」


なぜ、と言われると困る。リシアの初期装備がこれだと知っていたから、考えること無く選んでしまった。


「…一番手に馴染んだからこれにしたんだけど、他におすすめがあるの?」

「ん?いや。俺が選ぶとしても、これにすると思うよ」

「ええ、なにそれ。じゃあ何で聞いたの?」

「いや。これとか装飾が綺麗だし、こっちのはもっと軽いだろ。あえてこれを選んだ理由に興味があっただけだよ」

「ふーん…」


言われてみれば、他にも短剣はいくつかある。吟味してみても良いのかもしれない。


リシアはいくつか他を手に取りながら、ガイに聞いてみた。


「ガイはどうして、私と同じものを選ぶと思ったの?」

「リシアは魔法使いだろ?それも三属性扱える」

「うん」

「この短剣は、風属性の威力を少し上げてくれる魔石がついている。それと火に少し耐性があるな。まぁお守り程度の効果だが、他の短剣にはそういう効果はついていない。リシアにちょうどいいだろ」


そういえば、すっかり忘れていたけれど武器の中にはそういう効果付きのものがあった。魔法攻撃力+1とか、防御力1%アップとか。


「そっか。じゃあやっぱり、これにする」

「ああ、それがいいだろうな」

「ガイは、その剣は光属性付いているの?」

「いや、これには付いていない。俺が元々愛用している剣だよ。本当はこいつだけで行きたいんだが、仕方ないからな。光属性付与は別のものを用意している」

「別のもの?」

「これだよ」


ガイは胸元からチェーンに繋がれた何かを引き出した。

そこには小ぶりの透明な石がついており、一見するとただの可愛らしいペンダントに見える。


「これは魔石だ。光属性のな」

「これが?そう言えば、ここの武器に付いている魔石と似ているね」

「この魔石で属性を付与しているからな。俺はこれに自分の魔力を通すことで、一時的に光属性を纏うことができる」

「そうなの?すごい!」

「まあ、できるのは非常に短い時間だけだから、それこそトドメを刺すときなんかに使う感じだな」

「なるほど。でもこんな方法初めて聞いた。ガイにしか出来ない方法とか?」

「ああ、まあな。体質もあるだろ」

「ふうん」



またしてもリシアの知らない物が出てきた。ガイはゲーム中では普通に光属性武器を装備していたし。


大まかな流れは同じでも、やはりリシアの知る世界と細かい違いがたくさんある。




(これから先、どうなっていくんだろ…。私はちゃんと生き残れるかな)




「リシアさーん!武器、選びましたか?終わってたら買い物に行きませんか?王様からお小遣い貰っちゃいましたし!」

「あ、ミリシャ!うん、今行くわ」


ミリシャに呼ばれて思考から帰ってきたリシアは、慌ててミリシャの元へ向かおうとした。


(あ、これ、もとに戻さないと)


短剣の魔石はほのかに光ったままだ。確か魔石は消耗品だったから、このままにしておいたら壊れてしまうかもしれない。


魔力を発するのを意識的に止めると、魔石は光るのをやめ、元通りの石となった。


(良かった、案外簡単だな)


リシアは短剣を鞘に納めると腰のベルトに挟み、ミリシャの元へと駆け寄った。






そのリシアの姿をガイがじっと見ていたことに、リシアはこの時、気付いていなかった。



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