プロローグ
新連載を始めます。よろしくお願いいたします!
目の前には、こんなところにいるはずのない、巨大な狼のような生き物。黒い靄のようなものが体から溢れていて、目は赤く光っている。
これは、ただの獣ではない。魔獣だ。
突然目の前に現れたそれに、私はすでに鋭い爪で背中の右肩から腰の方までを切り裂かれていた。傷が熱を持って熱い。あまりの痛みに、吐き気が止まらない。視界がぼやける。
「リシア!!!」
庇うように飛び出してきた少年は、幼馴染のフレン。駄目だ、ただの子供の私達には、手に負えない。逃げて。
そう言いたいのに、声が出ない。
「この…っ、リシアに手を出すなーー!」
フレンが絶叫すると、彼の体から眩い光が溢れ出す。それは爆発するようにフレンの体から飛び出すと、目の前の魔獣を飲み込む。
ジュウッと、熱々のフライパンに水を垂らしたような音がして、気付けば魔獣は消えていた。
「…え?俺、今…?」
フレンは何が起きたのかわからないようで、自分の体を見回したり、周囲をキョロキョロと見渡している。
そして私はというと、酷い既視感に襲われていた。既視感?いや、聞いたことのあるお話を聞いているような感覚。
私は、この出来事を、知っている。
そう思った瞬間、頭の中が洪水が起きたようにかき回される。流れる映像、知らないはずの知識、そして、私じゃない私。
「…う、うぉぇっ…」
「…!リシア!!」
背中の傷の痛みと相まって、私は酷い吐き気を堪えきれず吐いてしまう。
慌てて駆け寄るフレンがそばに来るのも待てず、私は意識を手放した。
読んでいただきありがとうございます!