カジュアルリボン 『ホットケーキを焦がしたら』
物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには、1つずつ名前と物語があります
手にとって下さった方が、楽しく笑顔で物語の続きを作っていってもらえるような、わくわくするリボンを作っています
関西を中心に、百貨店や各地マルシェイベントへ出店しております
小説は毎朝6時に投稿いたします
ぜひ、ご覧下さい♡
Instagramで、リボンの紹介や出店情報を載せておりますので、ご覧下さい
hhtps://www.instagram.com/iroit0
ジュー、コトコト、ピピピ
美味しそうな音と共に、タイマーの音が鳴る
私はキッチンで忙しそうにする男友達を眺めながら座卓の横でお腹に手を置き、生唾を飲み込む
『もうすぐだから待っててね』
私の心の声が聞こえていたかのようなタイミングで、友達が私に声をかけきた
『もう待てな〜い』
きちんと正座をして待っていた私は、体の骨がないタコのようにへにゃりと、テーブルにおでこを付けて机に突っ伏した
イタリアンレストランのシェフである彼は、いとも簡単にどんな料理もサッと作る
私は、ホットケーキを焦がすくらい料理は苦手なので、何かを作っている時にはキラキラ目を輝かせながら尊敬の眼差しで彼を見つめている
『これでよしっ!お皿持っていってくれる?』
待ってましたとばかりに、私は勢いよく立ち上がり、たぶん尻尾が生えていたら大きく左右に動かしながら、お皿の前へと小走りで向っていった
コトリ
そっと机に大きめのお皿を置く
今日のランチメニューは、オクラと玉ねぎの彩りカッペリーニと、かぼちゃのスープ、白パン、そして私が買ってきたチョコレートケーキだ
オクラと玉ねぎだけでも美味しそうなのに、そこへパプリカやプチトマトが可愛くカッペリーニに盛り付けられ、一層食卓を彩ってくれている
『めっちゃくちゃ美味しそう!!本当にいつもすぐに作れて尊敬しちゃう!』
『余り物で作っただけだよ、お口に合えばいいけど』
『いっただっきまぁーす!』
一口、口に入れるなりうっとりと顔がニヤけてしまう
『んー!!美味しい♪』
『それは良かった、たーんと召し上がれっ』
お皿ごと食べてしまいそうな勢いで私は、蒸気機関車の如くガツガツと食べ始めた
夢中で食べる私と相反して、彼の箸が進んでいるように見えない
それどころか、なぜかニヤニヤしていて私に何か言いたそうな顔をしていた
『なに?何か付いてる?』
『いいや?くくく。ほんっと美味しそうに食うなっ!作り甲斐があるわ、ははは』
そう言いながら彼は立ち上がりキッチンへと向った
座卓に戻ってくるなり、少し多めに作っていたのかボールに少し残っているカッペリーニを、全部私のお皿へと入れてくれた
『大食いなんだから、足りないだろ?』
『ははは!よく分かってる!もうね♪めっちゃんこ美味しいから、おかわり欲しい!って思ってたところなの♡』
『くく。ほら、ゆっくり食えよ』
口元で手を合わせ頭を軽く下げる、もう一度お皿を見て思わず顔がほころんだ
『美味しかった!ごちそうさま!もっと食べたい♪』
『そんなに満足してもらえて光栄です。ははっ』
お皿を片付けた私は、そのままシンクへ運ぶ
袖が濡れないように『カジュアルリボン』で袖を少し持ち上げ、洗い物を始めた
『こんな美味しいご飯食べられるなんて彼女は幸せ者だね』
『もしかしたら俺よりもっと上手いかもよ?って、いたら〜の話だけど』
『あ!もっと上手いのね!はは』
カチャカチャとお皿を洗う音と水が流れる音で束の間、彼女になれたらなぁと思いを馳せたが、料理が出来ない私は望みはない
『まぁ、ホットケーキ焦がすような人かもしれないしね』
私の心を見透かされたのかと一瞬ドキリとしながら洗い物を終わらせ、座卓に向かい合って座った
『焦がす人でもいいんだ?』
『くく。どうだかな?』
窓から入る陽射しが暑くなってきたと、彼はサッとカーテンを閉めにいく
そして、もう一度座り直しニヤっと私を見つめた
終
最後まで読んで下さり、ありがとうございます
色々なお話を書いておりますので、どうぞごゆっくりとしていってもらえると嬉しいです
また明日、6時にお会いしましょう♪