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第十二話『自由、故に強者』

――魔術というのは、案外素直な代物だというのが裕哉の私見だ。そんなに難しくとらえなくても、その意志さえブレることが無ければいずれ自分の望む魔術というのは完成する。


 もっとも、それを知らないでいる人というのは裕哉の想像以上に多いようで――


「……皆、とりあえずこれを何とかして壊してくれるか?」


 魔術訓練用の的を立てながら、裕哉はグラウンドに集まった三人に課題を投げかける。少し遠くから、三人がそれを戸惑ったような表情で見つめていた。


「……流石に俺たちを舐めすぎてやしねえか?」


「しょうがないよ、特訓するのは初めてなんだから。……なんだかんだ、的当てってのも久しぶりな気がするからね」


 剣呑な雰囲気を纏いかけた暁人をたしなめながら、凛花が魔力を集中させる。姿勢を落とし、右手に作り上げた氷の剣を的に向かって振り抜こうと地を蹴った、その瞬間―—


「……ひゃっ⁉」


「ちょっと裕哉、何やってんの⁉」


 突然足元が抉れ、凛花は驚いたように飛びのく。それが裕哉の魔術によって行われたものであると気が付けたのは、裕哉の実力を一番知っている梓だけだった。


「なにやってんの……と言われても、課題の一環としか言いようがないな。いつ誰が、『一人一回この的に攻撃しろ』なんて言ったよ?」


「……まさか、裕哉が守るこの的を、俺たち三人で協力して打ち破れと?」


「そうだ。俺はここから動かないで防衛するから、三人はどんな手を使ってでもこの的を破壊すればいい」


 単純だろ?と裕哉は楽しそうに笑って見せる。……しかし、それは三人にとってあまりにも難解な課題に移っていた。


「……あの速度で迫って来る防御行動に対応しながら、的まで攻撃を届かせるですって……?」


「無理なんて絶対に言いたかねえが、正攻法じゃ無理そうなのは事実だな」


 裕哉の実力がよくわからなくても、先ほど放たれた水弾の威力はその脅威を示すのに十分すぎるものだった。ちんたらと接近する攻撃は、アレが一つ残らず撃ち落としてしまうだろう。


「そっち側は何をしてもいい。……さあ、お前たちはどうする?」


「どうする、って言われても……」


「……黙ってみてても仕方ねえ。とりあえず、最大火力でぶん殴る‼」


 戸惑っている梓と凛花を尻目に、暁人は地面を乱暴に蹴る。その踏み込みを咎めるように水の弾丸がその体を襲ったが、伸ばされた炎の鞭がそれをことごとく消滅させた。


「……おお、やるじゃん」


「火力だけは一人前って評価でな。だから、それで押し通すッ‼」


 驚いた様子を見せる裕哉に対して強気な笑みを浮かべると、暁人は大きな炎の剣を作り出す。直撃すれば上位の生徒だろうとたまったものではないだろうと、裕哉は冷静に考察した。


「……唸れ、俺の炎よッ‼」


 地面を爆発させるような勢いで行われた踏み込みが、暁人の上半身に力を余すところなく運搬する。それによってさらに加速した剣が、的に向かって真っすぐに進んでいって――


「……でも、そういうのは搦め手には弱いな?」


「……くっ、おおおおっ⁉」


 足元から急に水柱が立ち、暁人の体勢が急速に崩れる。その結果乱れた剣戟は、的を大きく外れた場所を通過していった。


「……っそ、舐めた真似をしやがって……!」


「いやいや、お前の火力を警戒したからこそだよ。半端な一撃なら正面から潰してる」


 それが出来ないからとっさに切り替えたんだよ、と裕哉は言う。……それは、瞬時にプランを切り替えられるほどの魔術的瞬発力があることの証明でもあった。


「ちなみに言っておくと、二度同じ策を通すつもりはねえからな。暁人の一撃も、次はスピードが付く前に止めてやるよ」


「そうかよ。……なら、見せてもらおうか!」


 その言葉に触発されたのか、暁人はもう一度炎の剣を作り出す。そして、今度はもっと至近距離から高速の剣戟を叩きこもうと――


「……ごめんな、少し痛くするぞ」


「……ぐっ⁉」


 剣を握っていたその手首が水の弾丸によって打ち抜かれ、暁人はうずくまる。どうやら怪我はなさそうだが、炎の剣は跡形もなくその形を消していた。


「さっきは適当な場所に出したから相殺されたけど、剣戟がメインならそこはどうやったって防御が難しいところだ。だからそれを狙ってやれば、こんなもんだな」


「……いやいや、とんでもない事言ってるって自覚あるの……?」


 弾丸を高速で生成し、それを瞬時に狙いを定めて打ち放つ。やっている事の規模は小さいが、その制度は途轍もないものだ。それを何でもないようにやってのけたことに対して、凛花は戦慄した。


「……暁人、これは一人じゃ攻略できないわ。作戦会議をしましょう」


「ああ、そうだな。……癪だけど、手加減されてるアイツにすら俺は勝てないらしい」


 梓の提案に、暁人が悔しそうにしながらも同意する。そうして何やら話し込んでいる様子を、裕哉は的の向こう側から見つめると――


「……さて、こっからが本番だな?」


 そう言って、楽しげに笑った。

ということで、裕哉が設けてきた課題に三人はどう立ち向かっていくのか!そしてその課題を最初に持ってきた意味とは何なのか、楽しみにしていただけると幸いです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また次回お目にかかりましょう!

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