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その八

ウーム…。ウーム…。雷でも雨のように降らないだろうか…。いや、王都は、砂漠にあるからいつも晴天なわけだが。


明日の正式な謁見を前に、ジャンヌと二人して、ロードと非公式の面会の場を持つこととなった。


「すまんな、今日は少し不在がちになる。何かあれば部下を使ってくれていい。だが、暴れることだけはしないでくれよ?」


「うん。もちろん。私は従順な捕虜だよ!」


何故か、ジト目のジャンヌ。


え?私、そんな信用ないの?


「私としては、少し王都を案内しても良かったのだがな…。元はといえば、お前たち人間の作った都市ではあるんだが、本当に頼むぞ?」


「うん。」


いや、全く信用ないぞ!俺は心の中で叫びたくなる。


昨日、食事を終えて部屋に戻った俺は、部屋に違和感を感じ、異変がないか探すと、案の定、壁にかかった絵画の裏に穴があいていた。紗奈は知らないと言ったが、確実に盗撮、盗聴用の穴だろう…。ロードに文句を言われる理由を増やさないで欲しい。


ジャンヌはそんな俺を憐みの目で見る。なんということだ。俺は誇り高きリザードマンの王なのだぞ…。


「…分かった。信じることにしよう…それでお前は何か予定はあるのか?」


私のことを気にしてくれているのかな。推しが私を気にしてくれる、最高だ。


昨日は、盗撮用の穴を見つけられたが、あれはダミーだ。本命は私自身の能力であるため、隣の部屋であれば、私の能力で把握できない事柄はない。無事にオリバーの寝顔を寝息を収めることができたので、今日はこれを堪能せねば。余計なことをする時間など私にはない。


「そうだね。とりあえず部下の人たちに、部屋の荷物整理を手伝ってもらって、片づけを進めておくよ。」


「ダメだ。一人でやれ。」


「えっ!?」


捕虜のくせに手伝ってもらうってのが、舐めてると思われたのかな。


選択肢を間違えたか…?。


「そっか、分かった。申し訳ない。捕虜が調子に乗ったみたいだね。ここの建物は野営地で置いてもらってた部屋より天井が高くてね。ちょっと大変そうかなって思ったんだけど。」


「いいか、絶対に片付けに部下を使うな。これはお前が客人待遇であろうと、捕虜に対する命令だ。」


「部下の人に手を出すとか思われてる?」


「断じて違う。」


「なんか、分かんないけど、とりあえず分かったよ…。」


よく分からないけど、戦場であった時のような威圧感を感じたので、とりあえず引いておいた。今日は起機嫌悪いのかな?また、レインボーマイマイでも買いに行こうかな。


「では、行ってくる。」


「いってらっしゃいませー。」





「心中お察しします。」


「む?なんのことだ?何か心配をかけるようなことがあったか?」


「いえ。いくら王に心酔したとしても、あれはちょっと異常です。」


「!!!!!!」


こいつ!あの部屋を見たことがあるというのか…。


まさか、俺の声の無限再生までは聞いていないだろうな…。


「そういえば、グランドールが人間どもに奪い返されたらしいな。」


「ええ。そのようです。シュタイン将軍は戦死なさったと報告がありました。」


「…ふん、少しは勇者どももやるということか。そうでなくては困る。」


私はどうやら、言葉のチョイスを間違えたようだ。王が強引なまでに話題を変えてきた。これ以上は触れるなということか。閣下は尊敬できる方であるし、オスとしてもとても魅力的だ。


しかしだ。


あれは気持ち悪い。あれが人間たちの求愛行動なのだろうか。種族の違いというのは色々なところにあるものだ。


「閣下…。よろしいのですか?ロードの不興を買うやも知れません。」


「うむ。そうだな、敵が手ごわいのは嬉しくもあるが、少し口が過ぎたようだ。自重するとしよう。」


「差し出がましいことを申し上げました。申し訳ございません。」


さて、指定された部屋には着いたが…。少し待てとのことであったが…。


「よく戻ったなオリバー!そなたが無事、帰国してくれたこと、余は嬉しく思う。」


「はっ!」


「さて、本日は非公式の場だ。固っくるしいのはなしでいこう。で、勇者はどうだった?」


「いや…強かった。昨日、シュタインが戦死したとも聞いている。」


「うむ。ギドウェアも死にかけたらしいしな。」


「!!!」


なんでその話を知っている…。箝口令もしいたはずだ。もちろん、ギドウェアの名誉のために。


そこまで知ってるなら、今日の非公式面会なんて、なんで開くんだ?


「オリバー、実はな…。勇者たちは考えていたよりも強いようだ。」


「そうなのか?」


「ああ。先ほど報告があった。シュタインに続き、バローも戦死したらしい。残り1大陸まで追い込んだと思ったが、2大陸を取り返されてしまったようだ。」


「なんと…。」


「そうか。バローがやられるとは…。」


紗奈の行動に目が行きがちだったが、俺とも互角に戦い、ギドウェアを相手にもしなかったのだ。


勇者どもが強力であると考えることに不思議はない。


となると…第二陣も危ないのかも知れんな…。ウーム。


「ところでオリバー。話を聞いたが、おまえメスに迫られて逃げてるらしいな?」


待て待て待て待て待て待て。誰がいつメスから逃げた。逃げてはいない。いつ逃げたと言うのだ!


「…何のことだ。副官も連れてきている場で、余り不穏当なことを言われるのは心外なのだが。」


「え?勇者の女を奴隷扱いして、メス豚とか呼んでるんだろ?」


してねええええええええええええ!待て待て、俺はそんなキャラではない!


「何のことを言っているのか分からんが…。誤情報に踊らされると、大局で判断を誤る元となるぞ?」


「そうか?分かった。その辺は明日の謁見で、直接本人からも聞くとしよう。」


何だと…。こいつ、俺を追い込んで楽しんでるのか?良いだろう、ならば戦争だ。


戻ったら、早速説得だ。絶対に揚げ足なんぞ取らせてたまるか。


「勇者か…。初めて見るが、楽しみだ。」


「そうだな。力は脅威ではある。」


「俺も戦ってみたいものだ。」

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