その四
戦いを終えたオリバーが帰ってくると、周りが慌ただしくなった。
どうやら、撤退するらしい。
オリバーは第一陣で、入れ替わりに第二陣の部隊が攻め入るそうだ。
まあ、私はどうでもいい話だが。重要なのは私の処遇だ。
私は、一応客人待遇の捕虜として、一緒に連れて行ってもらえるそうだ。
ありがとうと言いながら抱き着きながら、彼の眼を見ると、若干、緊張していたように見えた。
残るって言い出すとでも思われたのかな。
でも、その時、一緒に連れてきたオリバーと同じく、ワーウルフの王、ギドウェアってのが
最悪だった。
人の体をジロジロと見てきて、おまけにいやらしい感じがする。
キモッ。それ以外の印象はなかった。
しかも、お前の血は旨そうだとか言って、キスしてこようとする。最悪。
でも、オリバーの知り合いだしと困惑していると、彼は、やっちゃえ!みたいな
笑顔を向けてくれたので、遠慮なくやってやった。
何がワーウルフの王だ。知るか、私は勇者だ。
爪を剣のように長くして、斬りかかってきたり、爪を飛ばしてきたり、分身したり、
攻撃は多彩だけど、私の敵ではない。
すれ違いざまに、両脚を切り落とし、炎の魔法で両腕を燃やし尽くすと、
みっともなく泣いて命乞いしてきた。
だったら、最初から向かってくるなと思う。
扱いに困ったのでオリバーのほうを見ると、ちょっと苦笑いしてたけど、
『いい戦いだった』
初めて戦った時のように褒めてくれた。うっとりとするあの声で。
さあ、そこのアホはほっておいて、オリバーの撤退準備を手伝おうとしよう。
オリバーの部下たちからちょっと距離を取られたような気がするけど、気のせいだ。
だって、私はオリバーの捕虜なのだから。