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旅立ち

小学生の頃に書いたものを大人になった自分が書き直すのは感慨深いものがあります。

書くのは久々なため、読みづらい部分等あるかと思いますが、よろしくお願いいたします。


 岩山に大小様々な洞窟があり、中から複数の寝息が聞こえてくる。竜の住処であり、険しいその山によそ者が入ってくることはなく、みんな安心して眠りについている。その裾野には青々とした木々の生い茂る森が広がっており、大きな湖を囲んでいる。

 山の頂上から見下ろすと、月明かりに照らされて美しく輝く森や湖を眺めることが出来る。夜半に一人眺めるその景色が、ヴェルーナは好きだった。

 今日も、美しい白金の鱗を煌めかせ、景色を堪能している。

 そこに一匹の竜が近づく。


(ヴェルーナ、俺と交尾しないか?)


 これで何度目か分からない。真紅の鱗に黄色い瞳のその雄竜は、ことある事に伝心でヴェルーナを誘う。その度にヴェルーナは深いブルーの瞳でその竜を睨むのであった。


「グゥゥゥゥゥゥ(しつこいわよ)」


 苛立ちのあまり、喉が鳴る。その苛立ちが伝わったのか赤竜は一歩後ずさりをした。


(いつになったら貴方は学ぶの?私があなたを選ぶことは一生ないわ)


「グゥゥゥ…」


 冷たく言い放つと、赤竜は残念そうな声を出し、肩を落としながら去って行った。


 ヴェルーナは知らず溜息を漏らした。あの赤竜以外にも、同じ様な台詞を吐く独身の竜は多く、独身の雄竜と会う度に聞かされる台詞にヴェルーナは辟易していた。ヴェルーナは他の雌竜がうっとりするような、強く、逞しい雄竜にも興味がない。それに、迫られているところを誰かに見られて、騒ぎ立てられるのも嫌であった。

 何度か、若い雌たちに人気の雄竜に迫られてているところをその雄竜を慕っていた雌竜に見られていたことがあった。もちろん、その雄竜のことは振った。が、その後、一部始終を見ていた雌竜に


 「なんて、もったいない。」


と皮肉を込めて言われた。

 その雌竜はすぐに皆に言いふらして回った。それを聞いた他の竜に、毎日冷やかしを受けた。悪意のない、軽くからかうくらいの冷やかしであったので、無視をすれば済む話ではあったが、鬱陶しいものであった。


 そんなことを考えていると、後ろから視線を感じた。振り向くと、先程の赤竜がこちらをじっと見ていた。未練がましくも、もう一度機会がないかと様子を伺っているようだ。選ぶことはないと、何度言っても諦めずに果敢にチャレンジしてくるのだ。

 赤竜をひと睨みすると、流石に今日はもうやめようと思ったのか、赤竜は洞窟へと帰って行った。


 ちっとも靡かない自分など放っておいて、さっさと他の雌の元に行ってくれればいいのにと、ヴェルーナは思った

 あの赤竜は、山の若い竜の中で五本の指に入る強い竜だ。彼を慕う雌は少なくはなく、他の雌竜が告白されたらOKするだろう。そんな竜から告白されたにもかかわらず断ったということを誰かに知られれば、また騒ぎ立てられるだろう。


 ふらりと突然やって来たヴェルーナを受け入れてくれたこの山の竜たちのことは好きだが、騒ぎ立てられるところは嫌いであった。

 騒ぎ立てられるのも厄介であるし、雄竜に迫られるのにも辟易している。いっその事どこか別の場所へ行って一人で静かに暮らしたい、とヴェルーナは考えた。

 美しい森を眺めながらしばらく考えていると、いい案が浮かんだ。


 (確か、しばらく行った所に森があったはず。ここから距離はあるが、山の竜が行くことはないし静かに暮らせるだろう)


 思い立ったら何とやら。住み慣れた山を離れるのは寂しいものがあるが、その森を目指して空を飛ぶ。

 ヴェルーナの美しい白金の鱗が、月の光を反射して輝いた。





誤字脱字や、変なところがありましたら、ご一報ください。

また、感想等いただけると泣いて喜びます。

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