第一章 1話 一回目の転生
第一章7月27日
何かが見える。黒くて、四角くて大きいもの。そう、大型トラックだ。銀行強盗をして、トラックを奪って逃げているうちに、俺を引いてしまったらしい。我ながら無様な死に方だよ。あーいい人生だった。短くて何もできずに夢だけを語って。〈情けない〉そう考えた後、目のまえが真っ暗になった。
気が付くと一面白い場所とかではなく自宅にいた。靴を履いたままで、自分の部屋のリビング兼キッチンに立っていた。俺は確実に死んだはずだ。その証拠に手にしていたかばんもなくなっている。しかし生きている。とりあえず家の外に出てみた。目の前にはいつもの風景が広がっていた。何の変哲もないS市に。
その日のことはあまり覚えていない。死んだはずの自分が生きていて荷物だけが消えている。とりあえず風呂に入って23時までには寝床についた。朝6時に目覚ましが鳴り、起きだした。3日後にようやく夏休みが始まる。そう考えると早起きして学校に行く気になれた。
一時間かけてようやく学校についた。今の時刻は7時30分。(うちの高校は8時スタートなので7時45分までに校門をくぐらないといけないことになっている。)課題も終わっていなかったのでこの時間に到着できてよかったと思う。クラスに到着していきなり、「オイ松前、昨日のニュース見たか?駅前からお前の家の近くまで銀行強盗が逃げてきたらしいぞ。」と、隣の席の瀬田川が話しかけてきた。時間を聞いてみると18時30分だとよ。その時間は俺が銀行強盗のトラックに轢かれる30分後だった。