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黒い黒い世界の片隅で  作者: ラビルナ
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独りの魔法使い 2話目

だいぶあいた。そもそも読んでいる人がいるのか分からないし、プロットも未だに作ってないのに頭の中ではいろいろ起きていて伏線とか張ろうにも後で設定が変わりそうで一応張ってみたが使わなそうだし、続かなそう。

現実がやばくなってきて、やらなければいけない事たくさんあるのにこんなの書いて。

兎にも角にも、どうぞ。

 人の営みに太陽の光は欠かせないが、太陽が寝静まる夜にも人は活動はしている。しかし、本当にやるべきことは大抵は昼間に終わるし、今までそうやってきた。では、夜には何をやるのか。それは人それぞれだが、やる必要の無かったやる必要のあることをしている。こんな余計な時間を手に入れることができたのは、過去の酔狂なイカれ野郎どもが趣味を突き詰めていったからだろう。

 昔は薄く光る石を光源にして活動していたらしいが、最近の流行としてはランタンというものだ。どういう仕組みになっているのか知らないが。

 しかし、時代の流れに乗れ切れていない奴はどこにでも湧くものだ。俺が今いる酒場もそんな所だった。店のカウンターに薄く光る石をガラスの中に詰めて置いているだけだ。そもそも、この店は夜ではなく、昼間に稼いでいるらしいが。昼間に稼いでいるのかどうかの真偽はともかく、夜に稼いでいないのは確実だろう。店主は寝ているし、俺しか利用していないからな。

 俺も金を払って酒を飲んでいるわけではない。俺の客を待っているだけだからだ。



 店内に木製の扉が開く音が広がる。規則正しい足音が迫ってくる。左隣に腰掛けてきた男を見れば目が合う。やはり、俺の客だったか。随分と身なりの良い野郎だ。色褪せていない黒に綺麗な折り目、あまり見ない馬鹿なタイプだ。

「俺に依頼があるんだろ」

「え、えぇ。貴方が『万能の魔法使い』ですか」

 そうだった。どこの誰が言い始めたのか知らないが、俺には御大層な二つな付いている。この二つなのせいで、一時期、貴族や組合から勧誘を盛んに受けた時期があった。最近はあまり言われていないから、分からなかった。

「その呼ばれ方は好きではないが、魔法使いのネイドならば俺だ」

「良かった。正直この場所に貴方がいるかどうか不安だったんですよ。ほら、ここって外から見ると閉まっているように見えるでしょ。カーテンも締め切って、扉も半分しか開かないし。あながち、間違いではないのかもしれませんが」

 そう言って依頼人はカウンターで寝ている店主を見て軽く笑う。

「おい、お前は今、笑ったのか」

 俺の突然の言葉に依頼人は唖然とした。

「お前はこの店主が寝ているのを見て馬鹿にするように笑ったのか。どうなんだ」

「え、あの」

「おい、お前は睡眠をどのように考えている」

 俺が強めに言うと、依頼人は少し慌てて

「あの、人として当然のことで、その、馬鹿にするようなことではないと思います」

 激しく手が動く。結構慌てていたらしい。

「本当にそう思っているのか」

「当然です」

 俺の目を真剣に見つめて力強く頷いた。カウンターの上に置かれた丸めた拳に力が入っているのが分かる。分かりやすい。

「そうかそうか。ただ、店に2人も客がいるのに眠り込んでいる奴は笑っていいと思うが」

「えっ」

「悪いな。軽く揶揄っただけだ。依頼の内容を教えてくれ」

 依頼人は少し不機嫌になりながらも懐から一通の手紙を取り出す。

「そうですか。依頼の内容はこの手紙の中に書かれています」

 そう言って手紙を机の上に置く。

「お前は依頼の内容を知らないのか」

「はい、そうですね。ただ、護衛の依頼だそうです」

 軽く頷く。

「この手紙はお前の上司からの依頼か」

「はいそうです」

 軽く頷く。

「お前は貴族に仕えているのか」

「ええ。そうですよ」

 力強く頷き、目がしっかり合う。

「そうか。商人とかではないのか」

「はい。そうですね」

 首を横に軽く振りながら、肩が数ミリ下がる。

「わかった、ありがとう」

「えっ。あ、はい」

 俺は罠に気をつけながら手紙を開く。

 一通り読み終わると、俺は片手を依頼人、いや代理人に突き出す。

「受けよう」

「ありがとうございます。それでこの手は」

「なんだ、握手だよ、握手。どっかの地方で右手を握り合って親睦を示す行為だよ。知らないのか」

 代理人は右手を出して俺の手を握る。

「うわっ」

 代理人は突然手を引き俺の方を見る。

「おい、どうした。まるで俺の手の感触が気持ち悪いみたいじゃないか」

 代理人は手の平を確認しながら

「なんか濡れていて」

 代理人の手は真っ赤に染まっていた。

 俺が自分の手の平を確認すると、手が赤く染まっていた。

「あー、そういうことか。すまない。さっき手紙で手を切っていたらしい」

「え、はぁ、手紙で手を」

 代理人は不思議そうにしながらも俺が差し出した布切れを使いを手を拭く、なかなか取れないようで執拗に擦っている。

「これは俺の不注意だ。握手はなしだ。後、前金は銀貨十枚だ。置いといてくれ。そして早くここを離れた方がいい」

「えっ。はい。では、失礼します」

 代理人は左手で袋を1つ取り出すとそれを開き、中身を見せてから締めた。

「ちゃんと手を洗っとけよ」

「えぇ」

 木製の扉を右手で開いて取手部分が赤くなっていることに気付いていない代理人を見送る。

 俺は右手で握り潰した石榴を捨て、右手の感覚が戻るのを1人待った。




 夜の道の端に1人の男がいた。もう少し詳しく言うならば、1人の魔法使いがいた。彼の名前はこの物語に関係ない為、省略するとしよう。

 さて、その魔法使いはある依頼を受けていた。それは別の魔法使いを殺すという依頼だった。正直な所、彼の魔法は殺傷力に優れたものではなかった。故に彼は今まで人を殺害するような依頼を受けたことはなかった。しかし、この依頼は彼が所属している組織の幹部からの依頼だったのだ。期待されているという思いが彼に自信をつけさせていた。計画などをしっかり用意してもらったことも自信のついた理由になるだろう。

 彼の魔法は眠りに関する魔法だった。今回は強制的に人を睡眠に誘う魔法を使い、寝ている所を殺すという算段だった。

 ところで、魔法を使うには対価がいる。必ず等価になるというものではないが、魔法の使用には必ず対価が必要だ。この魔法の対価は重量。1つの物体を消費させ、その消費させた重量に応じて眠りの深さや時間が決まる。彼は細かいことは知らなかったが、どうすれば良いかは分かっていた。故に彼は目の前に置いた鉛の塊が端から少しずつ消滅する様子を見て、魔法が発動していることを確信し安心していた。

 しかし、彼の魔法が効力を発揮するのは対価を払い終わった後なのだ。彼は完全に安心し、心に余裕ができていた。人というものは心に余裕ができると色々と気になり始めるものだ。だから、彼は気付いた。小さくプツプツと音が鳴っている事に。そして、右手の感覚が無くなっている事に。急いで彼は右手を見る。そして、絶句した。あまりの不可解な出来事に頭が理解することを拒否していた。

 しかし、いつまでもその状態が続く訳もなく、理解してしまった。なんと、彼の右手が赤く染まりあがり、プツプツと沸騰していたのである。そして、水が温度を隣の水に伝えていくように赤く染まった部分は上に登ってきていた。彼はそれに気づき叫び声をあげようとするが、それは叶わなかった。口が動かなかったのである。今、彼の耳にはしっかりとプツプツと音が聞こえていた。そして、それも今、途切れた。彼は何も見えず、聞こえず、感じずに右腕から頭にかけて赤く染まりあがった。彼は何も感じない身体で自分が死んだことを確信した。もう鉛は少しも消滅していなかった。

 数分後、彼は無傷の状態で死んでいた。もちろん、赤く染まってなどいない。



 人が1人で店内に入ってくる。今度こそ、俺のお客さんだ。

 顔や髪の毛が長い所を見るとお偉い立場にいる女だ。身長は170cm台。ゆったりとしたローブを来ている所を見ると服の下に何か持っていると考えるのが妥当だろう。少なくとも血筋によって偉い立場になった人間ではない、髪の色が白い。白い髪ってのは老人の特徴として挙がるものだから、あまり世間の受けが良くない。貴族や商人からは嫌われている、年が落ち目だからな、縁起が悪い。神秘主義者や魔法使いからは受けが良さそうだが。生まれつきの白髪は魔法使いとして優秀になる場合が多い。ある程度は動ける、体幹がしっかりしている上で、足が完全に地面を離れる瞬間がなく過度に力も篭っていない。しかし、ローブの上から見ても分かる肉付きの良さから実戦に向いているとは思えない。殺害方法は色仕掛けや暗殺といった線か。ある程度の護身術は使えると見るべきではある。魔法使い特有の嫌悪感が湧き上がってこない所を見ると魔法使いではなさそうだ。白髪で魔法使いではないとは可哀想なことだ。こちらからは横顔しか見えないが結構整った顔をしている。潜入とかも苦手そうだ。結論として、脅威ではない。しかし、何故彼女がここに来たのか。戦闘に向いているとは思えないし、睡眠の魔法使いは死んだことは分かっている筈だ。本当の依頼人なのかもしれない。警戒しすぎたか。

 俺のお客さんは店内に入ると同時に立ち止まり俺の方を見た。そう、俺の方を見たんだ。カウンターで座っている俺ではなく、壁際で潜んでいる俺を見た。暗い店内で真っ先に俺を見た。

「そんなに怯えないで欲しいのだけど」

凛とした声で話しかけてくる。ブラフや当てずっぽではない、最初から知っていたのかのように俺の目を見ている。

 この女は危険だ。気配とかそんなものではない、確実に知っていた。店に入る前から俺がここにいることを知っていた。殺す。あと一歩店内に入った瞬間に殺す。

「無視をされるのは好きではないの、少しぐらい反応してくれてもいいんじゃない。さっきから、まるで置物のように、しゃがんで固まっていて疲れないの」

 ぼそぼそと返事をする。

「ごめんないさい。何を言っているのか分からないわ。もっと大きい声を出してくれないかしら」

 変わらずにぼそぼそと返事をする。

「はぁ。あまりここで時間を使いたくないの。私はあなたと体を重ねたいだけなのに、そこまで嫌うなんて。私は罠の中に平然と入れるほど肝が据わってないのよ」

 気付かれている。普通、魔法使い同士でも相手の魔法のことは分からないにも関わらずだ。

 これ以上は無駄か。本当に相手に敵意はなさそうだし。

「すまない。あまりにも別嬪さんなもんで言葉を失っていた。俺は魔法使いをやっている者だ。あんたは同業者か?それとも依頼人か?」

「あら、名前を言ってはくれないのね。そんなに頭を回す必要性はないのよ。大丈夫分かっているわ、あなたは何よりも私の職が知りたいのよね。でも、淑女にそんな態度とってはいけないわ」

 淑女が体を重ねたいなんていうかよ。慎みが足りないんじゃねぇか。

 彼女は指を一本立てながら、俺の方に一歩踏み出してきた。罠の存在を知った上で俺が起動しないと確信している。

「過去の記憶が無い」

 二本目の指を立てる。もう一歩踏み出す。

「自分以外の魔法が分かる」

 殺すことはもう既にできる。しかし、彼女の言葉が俺の動きを止める。まるで良く躾けられた犬のように、彼女の口から紡ぎ出す言葉を静かに聞くことしかできない。

 三本目の指を立てる。もう一歩踏み出す。

「見た目に対して異常に体重がある。あなたは…人間3人分ぐらいかしら」

 彼女は俺しか知らないことを知っている。ひょっとしたら、俺以上に俺について詳しいかもしれない。

 四本目の指を立てる。もう一歩踏み出す。

「肉体の回復力が異常に速い」

 彼女は俺の目の前に立ち、綺麗な右手を差し出してきた。

「私は依頼人よ。依頼内容はさっきの紙に書いてあったでしょ」

 さっきの紙って、俺を殺しに来た奴が持ってきたやつか。どういうことだ。あんな意味の分からない依頼。

「ちょっと待て。あの紙に書いてあったのは矛盾だらけの内容だ。あれは現実的に実現不可能だ」

「あの紙を見ても分からなかったの」

 本当はあの紙を見れば分かるようになっていたのか。俺は少し考えたが分からなかった。

「ああ。全く分からなかった」

 依頼人は人差し指を顎に当て、少し悩み

「マッチは持っているかしら」

「持っているが、炙り出しは既に試している」

「おしいわね。完全に焼き切ってみなさい。たぶん、それで分かるはずよ」

 たぶん、だと。つまり、依頼の紙を作ったのは彼女ではないのか。そもそも、何故あの魔法使いに紙を持ってこさせた。依頼したいのならば、普通に依頼すればいい。それなのに、俺に睡眠の魔法を使う凶器を隠し持った魔法使いを経由して紙を届けてきた。

 回り出した頭は依頼人の言葉によって止められた。

「報酬はあなたの情報よ。あなたが何なのか。それが報酬よ。それでどうなの。この依頼を受けるの受けないの」

 ここまできて選択肢が残されている事に少し驚いた。正直言って、胡散臭くて普段だったら絶対に受けないが、ここでこの依頼を逃すのはもったいない。

「受けさせてもらおう」

「良かった。断られたらどうしようかと。じゃあ、お願いね」

 依頼人はそう言いながら店から出ていく。



 依頼人が去った後、静かになった店内。俺はカウンターに座り懐から金属の板を取り出し、その上で手紙を燃やし始める。暗い店内に炎の揺らめきが明るく写る。

 突然、依頼の内容を理解した。ここで勘違いしないで欲しいんだが、俺は炎の動きで理解したとか、依頼の紙に隠された意味に気づいたとかではない。頭の中に直接書き込まれたような、もともと依頼の内容を知っていたような感覚に陥った。魔法なんて使われていない。そんな複雑なものではない、もっと簡単で、もっと大きい何かだ。

 俺は恐怖を覚えると同時に期待に包まれた。俺は周りの人とは違う、もちろん魔法使いともだ。優れているとか、劣っているとか、そんなものではなく、ただ種族が違うような、鳥と魚のように比べるものではないような感覚がある。そんな気持ちの悪い感覚にしっかりとした答えを依頼人が持っているという期待感が増したからだ。

 とにかく、依頼を遂行するとするか。

誤字、脱字、文法ミスなどいろいろ受け付けています。

文才が欲しい。画才も欲しい。才能なんて、勉強して練習するしかないですよね。

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