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おまつり

 迷子。

 しゃかじゃかぽかぽか。


 躍り狂う。手を繋ごう。さあ、貴方も貴方も。知り合いじゃない?関係ないさ、手は繋ぐためにあるんだよ。さあ躍り狂え。


 ぽこぽこちゃんちゃん。


 周りが赤い。赤、紅、朱。単色ではない。でも確かに視界は赤で埋め尽くされている。音も匂いも全てこの視界の赤さに支配される。まるでかき氷のシロップのような。


 少年は一人。他人から見れば赤。少年は涙を流す。赤い涙。青なんかじゃない。赤でこそ表現され得る少年の心。


 泣きじゃくる声もまた赤に吸い込まれる。踊る鳴き声。狂ったような金切り声ももはや音楽の一部として風になる。


 うーあうーあらんらんらん。

 

 さあ坊ちゃんりんご飴は要らないかい?あれ、お母さんとはぐれちゃったのかい。そりゃあ大変だ。でもおじさんはここを離れられない。はい、りんご飴。


 どこどんどこどんだんだんだん。


 鬼が近くでたこ焼きを喰う。天狗が空で金魚をすくう。周りは妖怪、人間、妖怪、人間。彼らは手を繋いで踊る。歌う。電車。人が車輪になる。


 少年はいない。赤に染まり切ってしまった。ああ残念。でも関係ない。人は妖怪は街は海は歌う。空に綿菓子投げても誰も見つけられない。少年はきっとどこかで踊っている。


 ちゃんちゃらちゃかちゃん。


 花火が上がる。歓声が上がる。手をあげ踊る。赤が強くなる。燃え尽きる前の蝋燭。火。炎。灯。そこに寂しさの青。少年の心。青。涙もきっと青かった。でもそれは今のお話。あの絶望は青だったと気付く。祭りから隔離された少年。祭りの中に隔離された少年。青く赤い少年。赤く青い少年。


 ぱんぱんとことこ。


 街から祭りが去っていく。赤がどんどん黒に近づく。血の色。鉄の匂い。遠くでは歌声、半乱狂。手をあげ踊る。その中にはきっと少年の泣きじゃくる声。祭りを盛り上げる少年。二度と祭りからは出られない少年。


 ぽーんぽーんぽーんぽーん。


 もう今年のもおしまいだな。ん?子供?さあ見たような見てないような。どっちだっていいだろうよ。いい祭りだった。りんご飴もいっぱい売れた。


 さあ皆さん、また来年。

 おまつり楽しかった?ならよかった。ばいばい。

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