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僕と父と秘密➁

雅人ボーイの父親と母親の名前を書いて無かった気がするので書いときます。

母親 五十嵐 愛美(まなみ)

父親 五十嵐 三喜彦(みきひこ)

ちなみに愛美ちゃんから三喜彦はみきちゃんと呼ばれています。

「持たないって・・・・え?」


長くは持たない?それは仕事が長く持たなのか?家庭が長く持たないのか?なにが長く持たないって言うんだ。その答えはすぐに来た。


「半年ぐらい前から体調不良が続いて、仕事が休みのこの前、検査に行ったんだ。そしたら医者に、目に黄疸ができてるって言われて精密検査をしたら」


そこでお父さんは一度深呼吸する。その肩は震えていて、今にも泣き出しそうな声だ。


「・・・・癌だったよ。もうステージも最終段階に来てるらしい」


青天の霹靂だった。自分の父親から突然言われた事実に僕の思考はまだ完全に追いつけていない。


さっきまで普通に話していた父親が今、生まれたての子鹿のようにビクビクと震えている。


僕の見ていた命の灯火は、とても小さかったのだ。


「雅人」


お父さんは僕に問いかける。


「な、なに」


「父さんは・・・・父さんは、ちゃんと父さんをきていたか?」


この質問に僕はすぐ答える。


「うん、りっぱなお父さんだよ!」


(ほんとアンタは使えない親父だ!)


僕の言葉とは裏腹に、僕の思考には今僕が言った言葉とは正反対な言葉が聞こえる。僕はその言葉を無視してお父さんにことばを投げかける。


「僕たちのこと第一に考えくれて、毎日仕事頑張ってくれてたよね!」


(俺たちのことは二の次で、仕事に没頭。アンタと生活した4年、アンタと喋ったことなんてほとんど無かったな。)


(やめろ)


「お父さんと喋ってるお母さん。すごく楽しそうであんなに笑ってるの、お父さんと再婚するまでは見たこと無かったよ!」


(家では俺から避けるようにして、いっつも母さんとしか喋って無かったな。)


(やめてくれ)


「僕とお父さんは血が繋がってないけど、そんなこと関係なく優しくしてくれて。本当に嬉しかった。」


(アンタは俺には優しく無かった。授業参観も運動会も来ない、挙句の果てには卒業式すら来なかったよな。まるで赤の他人、一緒に生活してただけ見たいだったな。)


(やめてくれ!そんなこと思わないでくれ!僕はお父さんに対してそんな風に思ってない。これいじょう僕を邪魔しないでくれ・・・・)


(それは無理な話だ。俺はお前であり、お前は俺だ。考えも性格も一寸の狂いもなく一緒だ。今のお前はお前じゃない。)


(嘘だ。君は確かに僕だ。だけど僕は君じゃない。僕の言葉は僕のものだ!)


(勝手に言ってろ。どんなに否定したところでなにも変わらねえがな)


「雅人」


お父さんは再び僕に問いかける。今度はゆっくりとテレビから目を離し、僕の方に向き始める。


「こんど2人で出かけないか。」


「え?」


「2人で出かけたこと、一度もなかったじゃないか。だから、お前が行きたい所に連れてってやりたい。どこがいい?」


「別に行きたい所なんて・・・・お父さんが決めてよ」


「じゃあ、父さんのよく行ってた場所に行こう。」


「よく行ってた場所?」


「ああ、来週の日曜日。空いてるか?」


「空いてるけど・・・・まって、お母さんには・・・・」


ガチャ


「ただいらー」


玄関の方から少し呂律が回っていない女性の声がする。お母さんだ。


「お、おかえり。お母さん」


「あら雅人、まだ起きてたの?あらみきちゃーん!お仕事お疲れ様さま!」


お母さんはお父さんに体を預けるように抱きつく。


「大分飲んだみたいだね。」


「そうなの!もう先輩がグビグビ飲ましてさぁ!大変だったの!」


「そっか、早くお風呂入って寝た方がいいよ。」


「そうするぅ〜。あら、そういえば2人で何か話してたの?」


「え?いや・・・・」


「雅人と受験の話をしてたんだ。まだ先のことだけど今のうちに漠然とでもいいから決めておかないといけないだろ?」


「もう、みきちゃんは真面目なんだから!それにしても2人がちゃんと話せるようになってお母さん嬉しい。」


お母さんはよろめきながら泣く振りを見せる。


この感じだとお母さんには癌のことは言っていないようだ。


じゃあなんで僕にだけ言ったのだろう。


「じゃ、お母さん疲れたからお風呂入って寝るわね。おやすみぃ〜。」


お母さんは洗面台の方へ向かう。


「じゃあ、来週の日曜日。」


そう言ってお父さんも寝室の方へ行ってしまった。


「う、うん。」


※※※※※


車に揺られながら僕はお父さんと2人でドライブをしていた。


その間僕とお父さんは一言も話さず、ただまずい空気を貪るだけであった。


「着いたぞ」


お父さんはそう言って駐車場に車をとめて、ドアを開ける。


「ここって・・・・」


川の両端に等間隔で並ぶ樹木、恐らく桜の木だろう。


少し汚いがそれは毎年4月に桜で賑わっていることを容易にわかる道。


「4月になるとここは桜並木でとても賑わうんだ。川を挟んで向こうにも桜の木があるだろ。


子供の頃は友達と何回もあっちに来たりこっちに来たりして、なんで昔はあんなことでずっと遊んでたんだろうな」


「小さい頃は何をやるにしても楽しいよね」


(来るなら4月にしろよ、なんで桜も枯れたこんな時期に来たんだよ。あと話す内容ないからって子供の頃の話をすんな、つまらん)


マサトは相変わらずお父さんに悪態を吐く。


「な、なぁ。あそこのベンチに座って少し話さないか。」


お父さんは数十メートル先にあるペンキが剥がれ落ちてる青のベンチに指を指す。


「うん、全然いいよ。」


(お前と話すことなんて何もねぇよ!)


(お願いだから少し黙ってくれ)


この前の件で僕とマサトはかなり険悪なムードになっていた。


自分自身と喧嘩するなんておかしな話だがもはやマサトも僕もそこに関して指摘をすることはなくなった。


お父さんはベンチに僕が座ったところを見て、「少し待ってろ」といってさらに数メートル先にある自販機に小走りで向かう。


お父さんは2つの缶コーヒーを買って戻ってきて、1つを僕の方に向けた。


「ありがとう」


(は!?なんでコーヒーなんだよ!しかもブラック・・・・)


(買ってもらったのによくそんなこと思えるな)


(それは自虐か?)


(くっ・・・・)


「もしかして缶コーヒー飲めないか?」


お父さんはやってしまった。といった感じの顔でこちらを見ている。


「全然そんなことないよ!いただきます。」


そう言って僕はコーヒーを少し飲む。


・・・・苦い。





ゆっくりとした時間が進む。さっきから僕は川を眺めているし、お父さんは缶コーヒーを見つめているだけだ。


そこで僕はこの前言えなかったことを言う。


「あのさ」


「な、なんだ。」


お父さんは姿勢を改めてこちらを見る。


「なんで僕にだけ癌のこと話したの」


お父さんは少し黙る。そして少し考えた後にゆっくりと口を開く。


「お前と話すネタが欲しかったから。かな?」


「え?」


お父さんがなにを言ってるのか僕には分からなかった。僕との会話のネタが欲しいがために癌になったのか?いや、癌なんてなりたくてなれるものでは無いしもし、そうだとしても自分の命を粗末にしすぎだ。


僕は次にお父さんが紡ぐ言葉をゆっくりと待った。


愛美(まなみ)や加奈、雅人と生活していて俺は父親になるということがどれだけ覚悟がいるのか、そしてその覚悟からなる父親の姿というのは子供の成長と比例していくものだと分かった。」


僕は黙ってお父さんの話を聞く。


「だけど俺には他の父親とは違うところがあった。それが雅人、お前だ。」


「僕?」


「愛美と結婚する前から愛美には子供がいることはしっていたし、1年も生活していれば馴染むと思っていた。だけど違った、親の愛情を小さい頃から受け取ることで家族の絆は強くなる。


だけど俺と雅人には空白の時間があった、その時間が俺をお前に見合うような父親にしてくれなかったかもしれない。まぁこんなの醜い言い訳なんだがな。」


雅人はそのことについて否定することは出来なかった。確かに僕とお父さんの間にはうっすらと壁があった。それは間違いない、だがそれだけが原因だと僕はどうしても思えなかった。


「俺はずっと考えてた。息子と対等に話せるネタや、息子と一緒に遊べるアクティビティ、色んなものを考えても雅人と心の底から楽しめる気がしなかった。


なんでなのか分からなかった。いや、薄々気づいていたんだが、そうだと思うと自分が苦しくなるからその考えに蓋をしていたんだ。」


そこでお父さんは一度深呼吸をし、僕の目を見て問いかける。その目はまるで僕を子供として見るのではなく、1人の人間として見るような。


「なぁ雅人。お前は何か他の子供とは・・・・他の人とは違うところがあるだろ?」


僕は心臓が跳ね上がる。


人とは違う。


それはきっとマサトの存在のことだろう。


お父さんも僕のことをこう思っているはずだ、今ここにいる僕が偽りだと。


「雅人と生活して4年間、おれはお前が「嫌だ」と言ったところを見たことが無かった。何か自分の感情に蓋しているような、それでいてその感情をどこかで出しているような、そんな感じがした。


それが俺と雅人の間にできた壁の正体なんじゃないか、親子として成長できない原因なんじゃないか。」


お父さんはもう一度深呼吸をし、今度は天を仰ぐ。


「そんな時、俺の前に癌が現れた。もうかなり進行していて回復は厳しいらしい。もう周りが真っ暗になったよ、家族のこと、両親のこと、仕事のこと。色々なことが一斉に俺のことを襲った。


だけどその時、色々な悩みが俺を襲ってきた中で、1人だけ遠くから眺めてる奴がいたんだ。


周りに遠慮して自分を出さない。子供の癖にわがまま1つ言わない、大人より大人な・・・・俺の愛する息子。」


僕はなんだか胸が熱くなる。初めて自分のことを理解してくれる人がいる。


「何も親子として楽しい話、悲しい話、真剣な話をしてこなかったのに俺はもうすぐ死んでしまう。だったらこの際癌をネタにして息子と向き合おう。そう思った。」


(そんな重いもんを話のネタにすんなよ。)


マサトはそれ以上なにも言わなかった。


「なんだか俺ばっか話しちゃったな、すまない」


お父さんはまた失敗してしまった。と言った表情をする。


「僕は」


僕は重い口を開く。初めて僕のことを理解してくれてる人はもうすぐ死んでしまう。


残り少ない時間で出来てしまった空白を埋めないと。僕はその思いでいっぱいだった。


「僕は、ちゃんとお父さんの息子だった?」


お父さんは今にも泣きそうな顔をしていた。そんな顔を見て、僕も泣きそうになる。


「当たり前じゃないか・・・・お前は本当に俺の自慢の息子なんだよ。」


お父さんは僕を抱き寄せる。小刻みに震えた体、鼻をすする音、次第に大きくなる哀咽(あいえつ)


とめどなく流れる涙に僕はなすすべなく、からからになるはずの体は何故か違うもので満ちていく。


その時、僕とお父さんの間にあった壁は完全に無くなっていた。

























もし自分が永遠の命を持ったとして、あなたなら喜びますか?悲しみますか?これは、永遠の命がどの年齢で一定に維持されるかによると思うんですよ。子供のままなら自由の幅が狭いし、老いてから永遠に死なないなら終わることのない苦しみにずっと耐えながら生活しなければならないかもしれないし、20歳を維持したままなら割と楽しい生活できるかもしれません、まぁ一生労働しなくちゃいけないのかもしれないですけど。そう考えると永遠の命ってのは良いことばっかじゃないですね、周りの人が自分より先に死んでくなんて辛いですし。やはり死が来るというのは来るタイミングによっては幸福なことなのかもしれません。何事にも終わりがあるから美しい。・・・・オチがないのに話しちゃうとこ。そういうところが可愛いんだよなぁ俺。

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