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プロローグ

現在、進めている別作品の息抜きで書いていますので結構何も考えずにライブ感と勢いで書いてます。それでもよろしければ一読お願いします。

 夜が明け、太陽が昇って一時間が経ったころ、この世界のある王国の王都より少し離れた家で、始まればその家の近くを通ったもの全員がまたかと苦笑いする出来事が始まろうとしていた。


 「朝だぞ! アリス! 飯だ! 飯!」


 大声を張り上げながら石造りの階段を登っていく大男。その男は顎に無精ひげを生やし、黒髪をオールバックに固めていた。服装は黒い鎧を着ており、外から白いマントのようなものを首から背中に下げていた。


 男は石造の階段を登り切りると、二つならんだ部屋が見えると、迷わず一つの部屋の前に立ち、軽く木で出来た扉を叩いた。


 「アリス! 飯だ!」


 叫ぶ男の声はこの家の外にまで聞こえていた。先ほども言ったように、この家を通りかかった牛と共に歩んでいる老人や王都へ馬に乗って向かう騎士までもがその声を聞き、またやっていると笑って通り過ぎていった。


 「アリス! 今日は王からの命令であのくそったれクルーウの城まで行かねばならん、帰るのはいつかも分からないんだ、行く前に顔だけでも見せてくれないか?」


 男がそう呼びかけると、木の扉がゆっくりと開き、純白のワンピースを着た少女―――アリスが寝ぐせで金色の髪の毛をめちゃくちゃな方向に飛ばしたまま、目を半分閉じた顔を覗かせた。


 「捕まえた!」


 「わぁ!? や、やめろ!!」


 その顔を見るやいなや、男は少女の手を掴み、部屋から引っ張り出した。男の腰までしか身長が無いアリスの身体は一瞬、宙を浮き、そのままゆっくりと丁寧に床に足を置いた。

 そして、男がアリスの手を離すと、短い悲鳴を上げたアリスは白く細い腕をさすりながら、さすがに眠気が吹き飛んだのか幼く可愛い寝ぼけ顔をやめ、男を睨みつけていた。


 「クロウ、酷いじゃないか、私はこんなにもひ弱なのにクロウの馬鹿力のせいで、見てみろ、赤くなったぞ、どう責任を取る気だ?」


 「申し訳ございません、お姫様、どうしてもお姫様と朝食を取りたくて、無礼を働きました、お許しください」


 そう目を瞑り、膝を付いて謝ったクロウと呼ばれた男は、すぐに目を開かせ、アリスの方を見て軽くウィンクをした。するとアリスは頬を膨らませ、眉間に皺を寄せた。


 「馬鹿にしているのか! まったく!」


 「怒るなよ、アリス、朝食を食べたいのは本当だ」


 「クロウは強引すぎる」


 「じゃないと俺の可愛い妹は返事もしてくれないじゃないか」


 「寝ている時にどう返事をしろと言うんだ」


 「寝言でお兄ちゃん大好きって昔は言ってたぞ」


 「なっ!?」


 「はっはっは! 冗談だ、ほら、飯が冷めるぞ」


 アリスの顔が赤くなったのを見てクロウは笑いながら階段を降りていった。ますます頬を膨らませたアリスは階段の下に居る兄―――クロウに向かって叫んだ。


 「クロウの馬鹿!」


 「分かった分かった! バカでいいからさっさと降りてこい!」


 クロウはアリスの言葉を軽く流していく。アリスはこれ以上は時間の無駄だと諦めた様に階段を降りていく。アリスの細い足には石造りの階段は冷たく、脳に刺激を与えていく。


 階段を降り終わると、床の石畳一面に掛けられた獣の皮で作ったカーペットが冷たくなった足を暖かくした。

 足が温まり、満足したアリスは、先に降りたクロウを見る。

 一階は暖炉や大きいテーブルがあり、色々な書物が入った棚が一つ置かれていた。だが部屋の大半を占めていたのはクロウが倒したという魔物の戦利品だ。ガーゴイルの羽に、火竜の牙、九つの頭を持つヒュドラの目まであった。だがその中でも、今、一番の目玉は先日、クロウが倒した魔王クルーウから奪ったマントだ。壁に貼られている漆黒のマントは、魔王クルーウの時代に、見るもの全てに恐怖の念を抱かせたものだ。

 そして、そんな物を多く持つ、アリスの兄、クロウはこの国の勇者だった。


 だが、正直、アリスにはどうでもいいことだった。アリスはテーブルに行き、木で出来た椅子に座るとクロウを見つめた。


 「クロウ、あの階段冷たくて苦手だ、カーペットか布を引こう」


 「なら、下のカーペットを作った知り合いの布織(ぬのおり)職人に聞いてみるよ」


 「ああ、頼むよ」


 そんな会話をしながらも、クロウとアリスは朝食を口に運ぶ。朝食は野菜のスープと、豚肉を外で焚火を起こして焼いたもの、それに硬いパンを細かく切り分けたものだった。


 「今日のスープも、肉も上手いな、さすがはクロウ」


 「お前も飯の一つくらい作れるように練習しろ」


 「な、何を言う、私も料理くらい作れる」


 「そうか? 何が作れるんだ?」


 「……」


 「ん?」


 アリスの発言に、眉を軽く動かし、スープをすすりながら聞いてくるクロウ。アリスは少しの沈黙の後、顔を背けた。


 「……このパンを細かく切ったやつなら作れる」


 「ふふっ、そうか、さすがだな、アリス」


 「また私をバカにしているだろ」


 アリスは物心がついて、この性格に落ち着いた頃から、クロウの人を小馬鹿にしたような態度に腹が立っていた。だが、どれだけ怒ってもクロウはやめることなく、アリスをいじり倒した。だが、アリスももう慣れたのか、口で言うほど、嫌ではなくなっていた。

 そして、二人の食器の中が空になった頃、クロウは立ち上がり、アリスの頭を撫でる。アリスはむずがゆそうに頭を揺らす。それを見てまたクロウは微笑んだ。


 「さて、そろそろ、行くよ、食器を洗うくらいはしといてくれ」


 「むっ、そんなのクロウの幼馴染がやるだろう」


 アリスの脳裏に毎日、アリスの世話とこの家の家事をやる胸が大きいミサという人物がよぎった。クロウの幼馴染で昔からアリスを可愛がっていた。

 だが、当の本人のアリスはミサの事が苦手だった。特にクロウと一緒に自分の将来の心配をするような話をしている時などに出くわした時には本気でイラつき、その日はミサの作った料理に一切手を付けることなく、全ての発言を無視した。それを目の当たりにしたクロウが怒り出すまでそれは続き、ミサは大丈夫だからとクロウに言ってアリスを庇ったのも、アリスを酷くイライラさせた。

 そんな幼馴染の話を私にさせるとはどういうつもりだという意味も込めて、棘がある言い方でアリスはそう言いのけた。


 「お前のお守までやってもらってるのに、家事まで全部丸投げは悪いだろ」


 「あの胸でか女は金を貰っているだろ」


 「普通に使用人雇うよりも安いんだぞ」


 「ケチだな、クロウ」


 「あいつがそれ以上、受け取らないんだ、後、その胸でか女とか悪口みたいに言うのはやめろ」


 ミサを庇うクロウにアリスの機嫌が最高潮に悪くなった。席から立ち上がるとクロウを睨みつけ、怒鳴りだす。


 「何が悪いんだ! 私は使用人を普通に雇えば良いと言っているではないか!」


 「お前の事を安心して任せられるのはあいつしか居ないんだよ!」


 「あの胸でか女が、私を魔物から守れるとは到底思えないがな!」


 「守るのは俺がやる! でも女同士なんだから悩み事を打ち明けたり、色々何か言いやすいだろ? それが昔からお前を知っているミサなら適任じゃないか!」


 「あんな女に言う事などあるか!」


 「だからそういう―――」


 「あー、悪いな、お二人さん、邪魔するぞ」


 クロウがアリスに文句を言おうとしたその時、会話を中断して入ったのは長い黒髪をひとまとめにして後ろに紐で縛った髪型が目立つ男だった。男はクロウよりもガタイは小さかったが、顔以外を染めている黒く立派な鎧が彼を戦えるものだと主張していた。

 彼を見たクロウは申し訳なそうな顔をしながら食卓から立つと、男の肩を叩いた。


 「すまない、ルシード、わざわざ迎えに来てもらって」


 「いや、構わない、本当は外で待つつもりだったんだが揉めている声が外にまで聞こえたから止めるべきかなと思ってな、差し出がましい事をしたなら謝る」


 「全然そんな事ないぞ、大丈夫」


 「ルシードさん、来たんだから早く行きなよ」


 アリスはぶっきらぼうにそう言って顔を背けた。クロウはそんなアリスを見てため息を吐くと、頭を強く撫でた。


 「良い子にしてたら帰りに菓子を買ってやるから」


 「……本当に?」


 「ああ、お前がちゃんとミサの言う事を聞いて、皿を洗ったらな」


 「……分かった」


 「よし、良い子だ、待ってろ、すぐに帰るからな」


 「もういいのか?」


 「ああ、行くぞ」


 機嫌を直したアリスにクロウは笑い、ルシードの質問に短く答えると玄関に立てかけていた大きな剣を背中に背負い、ルシードを連れて家を出ていった。

 アリスもその出ていく姿を横目で確認していく。クロウの白いマントが太陽に照らされ、その無精ひげの生えた顔がキラキラとしていた。その立ち振る舞いは正に勇者だった。


 アリスは兄をかっこいいと常日頃から思っていた。人付き合いが苦手であまり外に出ないアリスのために仕事の傍ら、色々手を焼いてくれたし、なんでもわがままを聞いてくれた。そんな兄がアリスは大好きだった。帰ったらまた甘えつくそうと考え、アリスは家の扉が閉まるまで素っ気ない態度を装うと、扉が閉まり、外界から閉ざされた瞬間、アリスは顔を赤面させ、自室に一度戻ると、白いシーツが敷いてある布団に顔を押し付け、一言。


 「お兄様、大好き、早くアリスの元に帰ってきて……」


 そう呟くアリスはとても嬉しそうだった。早く帰ってきてほしいとそう願いながら、もう一度、階段を降り、言われた通りに汚れた食器をを水が溜まった桶に入れ、洗った。クロウが褒めてくれると。また頭を撫でてくれるとそう信じて。


 ――――――だが、この日を境にクロウがこの家に戻ってくることは無かった。

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