冒険者ギルドにようこそ
半ば思い付きで教師になったけど、まあ何とかなるだろう。じいさんの用意してくれた銀貨1枚しか使わなかったな。せっかく本を扱うジョブになったし自分用の本1冊新調してみるか。メモ帳の代わりにもなるだろうしね。
さて今度は冒険者ギルドか。お金稼げるといいんだけど、結局町に住んでないから依頼受けるのとか厳しいんだよな。森に帰らないと家畜死んじゃうし。道を整備してロッキーに乗って駆け抜ければ片道1時間ぐらいにはなると思うんだけど。通勤1時間は許容圏内だよね。
神殿で場所を聞いてから向かったので、特に迷うことなく冒険者ギルドに付いた。町の入り口からほど近い場所にあった。3階建ての大きな建物である。裏手には訓練スペースが見えていて剣を片手に人形に切りつける人が見えた。扉を開けて中に入ってみると受付が3か所ある。広めのスペースだが人はそんなにいない。受付も2つは閉まっていた。依頼ボードなんかや併設した酒場も見える。ゲームでよく見る光景まんまだなと若干興奮した。だけどお約束の受付は美人説ははずれだった。スキンヘッドのおっさんが受付で手招きしている。
う、、、ちょっとこええ。。。ニコニコしてるし・・・
おどおどしながら受付に進んでみた。
「坊主!!ここ初めてだよな。登録だよな!?そうだよな!!よしジョブ神殿で作ったカードだせ。」
言ってる内容が盗賊っぽい。危ないおっさんだな。
カードを差し出すとおっさんは、机の上に小さい水晶を出した。
「この水晶はな、ジョブとレベルを読み取れる魔道具なんだ。どれどれ ん?教師か。始めての登録で教師は初めてだな はっはっは。変わってるな坊主!!」
ほっといてくれ・・・
「あ、あの冒険者ギルドの説明を聞きたいのですが・・・」
「よし、説明してやる。ここでは依頼を受けて達成すると報酬が支払われる。依頼は採取・討伐・護衛・配達など様々だ。基本的には難度が高いほど金額があがる。依頼にはギルドランクが設定されていて、今のランクより一つ上までしか受けることはできない。ランクはG~Sまである。新人はGだな。坊主ならFとGの依頼を受けることができる。採取なら現物、討伐なら証明部位を持って来れば依頼は達成となる。この二つに関しては依頼が残っていれば後受けでも可能だ。その場合のみランクに関係なく受けれることになるな。」
「ギルドランクを上げるにはどうすればいいのでしょうか?」
「一定の依頼達成後に試験を受けてもらう。ただし、問題のあるやつは依頼達成数が多くてもランクを上げることはできない。喧嘩するやつや素行の悪い奴だな。あと、さっき言った後受けで高ランクの依頼を達成しても特にボーナスはない。無理して上のランク挑まれて死なれたらかなわんからな。」
「説明ありがとうございます。登録は先ほどのカードを渡すだけでいいんですか?」
「さっきのカードは、裏で冒険者ギルド用カードに書き換える。そのカードにギルドランクなんかが表示される。この用紙にも記入が必要だ。15歳までは無料で登録を行っているから金はいらん。」
用紙を見ると名前・出身地・スキルなどを書く欄があった。そういえば出身地わかんねえ。『森』でいいのか!?
「あの出身地なんですが、川を上った先にある森なんですけど名前わからなくて。というか今も一人で住んでまして今日も帰るんですが。」
「ん?森だって?カールじいさんが住んでる森か?」
「あ、じいさんご存じなんですね。爺さんに拾われていっしょに住んでました。ただ、じいさんは半年前に。。。」
「あーじいさん結構な年だったもんな。最近顔出してなかったけど昔は森の魔物素材を持ってくる依頼を受けてくれてたんだ。ま、期限なしの依頼ばっかだったけどな。そうそうあそこの森はアルザスの森と呼ばれてるんだ。じいさんが住んでたあたりだと森の手前部分で、もっと奥には恐ろしい魔物がでるって話だな。」
まじか、あそこで森の手前なのか!?どれだけでかい森なんだよ!!
「わかりました。出身地『アルザスの森』と書いておきます。スキルは全て書くんですか?」
「いや、そこは任意だ。ただ、そこに書いたスキルに合った依頼を俺たちギルド職員が勧めることはある。特殊なスキルでもないとあまり意味はないがな。」
「そうですか。わかりました。」
別に隠す必要も無いし今持ってるスキル書いとくか。書きながら町の近くにあるダンジョンについて質問してみた。
「この町の近くにあるダンジョンの名前は、『エレクスの迷宮』という。町から出て歩きで1時間ほどの場所にある。ちなみにダンジョンっていうのはな、ほとんどが地下に潜っていくタイプで複数の階層で構成されている。魔物が出て宝箱もある。各階層には階層主って言われるボスがいてそいつを倒さないと基本下にはいけない。最下層には迷宮主と呼ばれるボスがいる。あと、ダンジョンの魔物は倒した後すぐに魔石を抜くと体がそのまま残り、魔石をそのままにしておくと、魔石とドロップ品が残ることがある。魔物素材を集めたい場合は、魔石を抜けばいいし、それ以外ならドロップ品のほうがいい。何せレアドロップと呼ばれる本来の魔物素材よりもいいものを落としたりすることもあるからな。よくわからない現象も多いし自然発生的なもので無く、なんらかの意図があって誰かが作ったものじゃないかと言われてるな。学者連中は神様が作ったんじゃないかって言ってる。ちなみにダンジョンの種類によっては階層転送装置がついていて、利用するには、今から作るギルドカードが必要になってくる。未発見のダンジョンでない限り入り口に説明があるはずだ。」
説明を聞きながらスキルも書き終わったので紙を渡しつつ聞いてみた。
「俺でもダンジョンに挑めますか?」
「う~ん、1階層なら何とかなるかもだが、戦士系ジョブや斥候職でもないし、パーティ組んだほうが無難だぞ。ここの依頼はダンジョン由来の魔物素材が多いから、探せば人もいるだろうよ。にしても坊主のスキルは多彩だな。冒険に関係ないものが多いが。まあ 待ってろ書き換えてくる。」
待っている間に依頼ボードを覗きに行った。
『薬草採取 10枚 10銅貨 常時 ランクG』
『ゴブリン討伐 1匹に付き10銅貨 討伐証明耳 素材は別途買取可(魔石・肉・皮・武器・爪)場所>町の外 常時 ランクF』
どうやらこの世界でも薬草採取やゴブリン討伐は定番であるみたいだな。ただゴブリン討伐の金額が安い気がする。そんに強くないんだろうか。。。素材買取もしてるみたいだけどゴブ肉なんて食うのか・・・?素材って雑貨屋で買い取ってもらうのとどっちがいいんだろうな。
『ホーンラビットの角 1本 1銀貨 常時 ランクF』
雑貨屋といっしょかな。ま どっちに売ってもいいってことか。後はこっちのボードは感じが違うな。
『盾役のできる前衛募集 盾スキル3以上』
『回復魔法の使える方募集』
『罠発見・解除スキル持ちの方募集 スキル5以上』
なるほど。パーティメンバー募集してるのか。家に帰って動物の世話しないといけないのでパーティには入れないけど、見た限り入れるパーティはなさそうだ。
色々眺めているとギルド職員のおっさんが帰ってきた。
「またせたな。これがギルドカードだ。試しに何か依頼受けてみるか?」
「いえ、森に帰らないといけないので。ただ今度来た時に後受けで少し受けてみようと思います。」
「そうだったな。森まで微妙に距離があるし、ダンジョンのほうが儲かるのであまり森の依頼を受ける奴は少ないので助かるところでもある。そうそう名前言ってなかったな。私の名前はハーレイ。このギルドの長だ。また来いよ!!」
怖そうなおっさんだったが、なんとギルド長だったとは。まあ説明も丁寧にしてくれたしな。またお世話になろう。
「はい。またきます。では」
ギルドでは登録だけして雑貨屋にもどるのであった。