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寂しい森

 徐々にではあるが、動きが鈍くなっていった爺さんであるが、俺が9歳になったくらいから目に見えて弱っていった。俺が薬草で作った薬も効果はなく、町の医者に見てもらったが好転はしなかった。じいさんが言うには寿命だろうということだった。この世界では平均寿命60超えたくらいらしいのだが、今まで知らなかったがじいさんは80を超えていた。結構パワフルだったので全然見えなかった。正直年齢を聞いてびっくりした。最後にじいさんと町へ行った際に滋養のある物を買えるだけ買って食べてもらったが、結局効果は見えずだんだんと弱っていった。もう寝床から出れないほどに。


「じいさん 元気になってくれよ。一人はやだよ。」


「お前ならもう大丈夫じゃよ。まだ体もできておらんから大きい獣は無理じゃろうが、生きていくのには困るまい。お前を拾ってから結構になるが退屈せずにすんだわい。」


「何を弱気なこといってるんだよ。がんばっでよ爺さん・・・」

 俺は泣いていた。


「泣くなばかもん。もう何年も前から体はよわっておったんじゃ。お前に弱った姿をみせたくなかったもんで気合でがんばってきたが、さすがにもうだめのようじゃな。寿命にはかてん。でもなあ わしが培った知識や経験を少しでもお前に残せてよかったわい。」


「・・・」


「ここにある物は、お前の好きにせい。お前がジョブを得るためにと金もおいてある。今までありがとよアル   」

俺はじいさんの手を握り締めて泣きながら伝えた。


「こっちこそありがとう。じいさんが拾ってくれなかったら確実に俺は死んでた。今まで世話してくれなかったらのたれじんでた。生きる術もスキルもじいさんがいなかったら何もかも身についてなかったよ。本当にあびがとう。ぐす・・・」


「ふむ。子供に看取られながら逝けるとは、10年前は思いもせなんだ。しあわせなことだ・・・」

握っていた手から力がなくなった。眠るようにじいさんは息を引き取った。


 前世でも今生でも身近な人の死は初めてだった。じいさんが息をひきとってから二日間何もする気が起きず泣いて過ごした。三日目に腹をすかしたロッキーが突っ込んできてやっと動きだした。


「ヒヒヒッヒーーん!!(怒)」


「ごめん、ごめんロッキー。そうだよな。ほっといたらだめだよな。」


怒り気味のロッキーに餌と水を用意し、残りの動物たちの世話をしたところで、じいさんの遺体を燃やし、残った灰と骨を家の近くの大木の下に埋めた。


「これから一人で生きていかなくちゃならないんだったな。。。」


 前世では実家暮らしだったため、実質初めての一人ぐらしになる。しかも魔物がでる森での一人暮らしである。唐突に寂しさと不安があふれてきた。5歳のころからコツコツとためてきたお小遣いは、じいさんに滋養をとってもらうために全部使った。それに段々ととじいさんの狩りでの成果も下がっていたので蓄えはそんなに増えていなかった。じいさんが残してくれたお金を確認したら銀貨10枚だった。せっかくじいさんが残してくれた金だ。ジョブを得る以外では使いたくない。鶏やヤギも増えてるし、野菜もある。少ないながらも獣を狩ることができるし薬草も取れる。


「どうにか生きていけそうだ。ロッキーやヤギや鶏もいるしな。」

・・・でもやっぱり寂しいよ 

        じいさん。。。




 じいさんが死んでも。やることは変わらず、淡々と自分の経験と蓄えを増やす事に精を出した。5歳のころから比べると体も大きくなった。俺の身長は140cmを超えており9歳にしては大きいほうじゃないかと思う。顔は普通よりやや下ぐらい(だと思いたい)。最近では罠無しでも弱い獣なら狩れるようになった。弓も投擲もまずまず使い物になってきたと思う。(猪は怖いので罠以外では挑んでいない。)森での9歳一人暮らし、慎重に生きていこうと思っている。ケガをしても誰も助けてくれないから。

 

 今のところ狩りは無茶をしなければ何とかなりそうなんだけど、問題は町へ行くことだった。一人ではまだ行ったことが無いのである。もうすぐ10歳。ジョブを取得するためにも行かねばならない。ホーンラビットぐらいなら、どうにかなりそうなんだけど狼が群れでおそってきたりなんかしたらと思うと((((;゜Д゜))))ガクガクブルブルである。


一応、保険として荷物持ちロバのロッキーがいっしょに戦えないか試してみた。ホーンラビットの角をロッキーの頭にくくり付けてみてユニコーンのようなロバができた。が、木を軽くたたいただけで外れた。ロッキーからはしっかりしろよって目で見られた。結局普通にタックルするか足で攻撃するのが一番良いみたいだった。町に行くことができたら予算の許す限りでロッキー用の装備も買ってみようと思う。行けたら。

そう行けたらいいなあ。



 ・・・10歳になり、麦がなくなり塩と油の残量が心もとなくなったころ、俺は町へ行くことにした。売り物をロッキーに積み込んだ。じいさんからもらった10銀貨もしっかり持った。薬草もいっぱいとった。今の装備は、布の服、皮の靴、小斧、ホーンラビット角槍、投げナイフ10本、解体用ナイフ2本、小さい弓、矢10本。正直襲われたらやばいくらいの防御力である。今買ってもすぐ大きくなるし・・・なんて言ってる場合ではなかったようだ(´;ω;`)


「行ってくる じいさん!!魔物に襲われないように見守っててくれ!!」

爺さんの遺灰を埋めた大木に祈りながら俺は旅立つのだった。


・・・多分じいさんが生きていたら「なさけないやつじゃの」って言われそうな気はひしひしとしたが、10歳だもん多めに見てね。

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