スケルトンの使役
ースケルトンナイト戦ー
盾を持ったスケルトンナイトに近づく。グレイウルフのハナコの時に感じた繋がりのような物は何も感じない。一定の距離まで近づくとスケルトンナイトがピクリと反応した。おっ?と思った瞬間斬りつけてきた。危なげなくかわしバックステップで距離をとる。
「危ないな!!殺す気か!!」
「カカカカカ」
うん。まあ 殺す気だろうな。今まで仲良くなった事なんてないしな。そりゃそうか。突っついてみたり色々試してみたけど、特に反応が変わることもなく始末した。うーん、期待薄・・・
それから2戦目反応無し。3戦目反応無し。~10戦目反応無し。
・・・スケルトンナイトは無理じゃね。まだ10戦なのかされど10戦なのか。淡い期待は実らなかった。色々推察してたけど、スケルトンナイト関連は杞憂ということで。くやしい(*´Д`)
仕方ない、通常のスケルトンを試してみよう。
ボス部屋から移動して通常のダンジョン探索に移行する。ちょうど3体のスケルトンが見えた。3体並んだスケルトンのどれかからハナコの時と同じく繋がりを感じた。早。。。速攻だな。スケルトンナイトの推察と検証の意味の無さ・・・まあいい。進展はあった。3体のうち恐らく1体をどうにかして使役しないと。と、ここである考えが浮かぶ。推察していたスケルトンは元人間かor個体差はあるのか。数百という骨を倒してきたが、戦闘中個体差があるようには思えなかった。ただし、骨をまじまじとみたわけではない。戦いは余裕になったとはいえ、相手は俺を殺しに来る魔物である。
さてどうやって個体差を確認するか。前提として俺のスキルや技や魔法に相手を拘束ないし動けなくするものは無い。そうだ!動けなくするだけなら凍らすのはいい考えかもしれない。俺の魔法『氷作成』は氷を作る(非常に作成に時間がかかる)か、水に触れて水を凍らせる(こっちは早い)というものだ。スケルトンに近づきつつ、足から『創水』を行い流れないようコントロールしながら徐々に範囲を広げていく。その範囲がスケルトン3体を覆った時、氷作成を開始する。全ては足だけで行う。スケルトンが水に振れた瞬間俺の存在に気づき襲って来ようとするが、俺に辿りつく前に足が氷りつき動けなくなった。拘束完了である。なかなかいいかもしれない。この魔法コンボ!!凍って動けなくなりじたばたしているスケルトンに近づこうと考え、自分の足も凍って動けない事に気が付いた(*´Д`)バトルコングの時もそういやこんな感じだったような気がする・・・
ガシガシガシガシと斧で自分の周りの氷を削る・・・冷たい・・・今度町に行ったら『温水』の初期魔法買おうと心に誓いつつ地道に削っていった。荷運び役で連れてきていたロバのロッキーは何やってんだって顔で見ていた。他のパーティがここを通ら無くてよかった。
奮闘すること5分ほどでようやく足が解放される。スケルトンズは足を動かす事が出来ず上半身だけカチャカチャと動かしていた。手に持った錆びた武器で氷を削ろうとしたり俺に投げつけたりという事はしてこない。1体が少し離れたところにおり、恐らくだがこいつが俺の使役対象骨らしい。他の2体に比べてカチャカチャと動く事もなく、ただ俺の事を見ている感じである。
さて個体差チェックである。前二体のスケルトンの武器をはじき、安全性をさらにあげた後観察に入る。武器以外に個体差の違いを意識したことは無かったが、間近でよく見ると個体差があった。というか何で今まで意識しなかったのかというほどに個体差がある。さっと見比べただけで肩幅、身長、歯並びが違う。骨に傷があるのだが、その箇所も違う。3体が3体ともに違っていた。妙にリアリティのある違いだなあ・・・特に歯とか。作り物(魔法で生み出された物)だったら、こんなディティールに違いを付けないんじゃなかろうか。俺の中の結論だが、十中八九元は人間だろうと思う。
個体差の確認も終わったところで、カチャカチャやってた敵対心のあるスケルトンは叩き壊した。繋がりを感じたスケルトン1体に近づいていく。武器は念の為取り上げた。特に反抗もなかったが、まだ使役に至ったという実感が無い。ハナコの時は確かエサをあげたんだったよな。スケルトン相手に餌付けが効くのだろうか・・・
まずは干し肉を骨の顔あたりに持っていく。
「ほーれほれ、おいしいお肉だよ~お食べ~。」
がん無視である。びくともしやがらねえ。恥ずかしいじゃねえか!?きょろきょろと周りを見渡すが誰もいない。うむ、このやりとりを誰かに見られたら非常にやばいやつである。
「仕方ない!!ほら 食べさせてやる。」
強引に骨の口を開けて肉を放り込む。頭をつかんだ時に一瞬ビクッとしていた。ぽろっと下に落ちる。
うん、知ってた。だよね~って思った。何やってんだ俺って思わず笑った。
笑ってる場合では無い!!どうやって使役するんだこれ?あ!!スケルトンナイトが稀にレアドロップする「魔力を帯びた骨」を数本持ってたのだが、(何本かはハナコ一族にあげた。喜んで咥えていってた。)これじゃないかと思いつき、スケルトンに近づけていく。が、これも無反応。。。
反応らしき反応って、口に放り込む時に骨に触った時だけか。もしかして頭を撫でるとかじゃないよな?仕方ない。何でもやってやれだ。
「よしよしよーし、よーしよしよし」
骨頭をわしゃわしゃとなでる。ビクッビクッと骨に反応がある。これかもしれん!!10秒ほどさらに骨頭をいいこいいこしているときにふと思いつく。魔力膜張ってて万が一力入れ過ぎて頭を壊したらまずいんじゃないかと。魔力膜を解除し、さらに骨頭をなでようとするとスケルトンから反応がなくなった。
うん?どういうことだ、魔力膜をもう一度張り直し骨に触ると反応が戻る。
・・・なでるじゃなく、魔力なんじゃね?これ。
「コホン。。。」
なんとなくの恥ずかしさを咳払いでごまかしつつ、骨頭に手を置き、魔石に魔力を込める要領で骨頭に魔力を込めていく。今までの5倍くらいの勢いでビックビクと跳ねるスケルトン。足元は凍ったままなので、なんというか前世にあったダンシン○フラワーのおもちゃのような反応。合計で10秒ぐらい魔力を込めていると唐突に反応がなくなりスケルトンとのつながりが深くなった感覚がした。「あ、繋がった」って感じである。
恐る恐る命令してみる。わしゃわしゃやってたので何を今更な感じでもあるが。
「右手を上げてみて」
シャキっとスケルトンが右手を上げる。
「おお!!」
「右手を下げて、左手を上げて、右手を上げない。」
シャキと右手を下げて左手を上げる。ひっかけ命令にもひっかからない。命令通りに動くな。ふふふふ使役してやったり!!
その後ガリガリとスケルトンの足元の氷を除去し、膝を抱え込んで小さくなるように命令した後、革袋にしまいこみ、ロッキーに骨を運ばせた。推察していたように骨を連れているのを見られるのは、なんとなくまずそうだから隠して運ぶことにしたのだ。わしゃわしゃのやりとりも客観的に見て他の人にみられてたらかなりやばい人である。今日やった事、スケルトンに話しかけながら肉を与えようとする。無理やり口を開けさせてさらに肉をあたえようとする。骨をいいこいいこする。など・・・是非とも近づきたくない人である。
ロッキーにまたがり森の村に帰っているのだが、村でも懸念は尽きない。家族や生徒はドン引きするだろうけどあーそういうものかと納得はするだろう。だが、ドワーフの皆さん及びギルドから派遣されている職員(村の守衛)は、そうはいかない気がする。スケルトンの有効活用だが戦闘に連れまわすよりは、労働力として単純作業をさせるのがいいんじゃないかと思っているが、はてさてどういう理由で使役していることにするのがいいのだろうか。まずはスケルトンに対する知識を得るとする。カルスさんに聞こう。
「スケルトンについて教えてほしいじゃと?あのロバが持っとるやつか?捕獲したのか?」
あれ?すでにばれとる。
「えーっと?あははは。まあそんなとこです。」
「まあええわい。スケルトンの事じゃったな?スケルトンはな。。。」
カルスさんから教わったスケルトンについて
・自然発生型スケルトン:負の魔力、怨念などにより自然と骨が魔物となったもの。墓場戦場などが多い。
・ダンジョン産スケルトン:ダンジョンの魔力により産みだされたスケルトン。細かい仕組みは謎とされているが、ダンジョンで朽ちた冒険者の亡骸が元になっていると予想されている。
・ネクロマンサー産スケルトン:ネクロマンサーの魔法によって魔物化したもの。ネクロマンサーの魔法を使える者はほとんどいない。レア中のレア。それは魔族でも変わらない。
・特殊な術によって自ら意識あるスケルトンとなった者。高位な術者が行ったとされるがその存在ははっきりと確認されていない。
・スケルトンの素体は人族に限らず、魔物、魔族、骨があればスケルトンになりえる。
・素体の種類・強さによってスケルトンの種族が変わる。
・スケルトンの動力は魔力。
・スケルトンの核は魔石か、骨自体が半魔石化したもの。
・スケルトンは通常自分の意思を持たない。(らしい)
「というわけでじゃ、捕獲しても使えるようにはならんぞ。アル。」
ですよね~。
「まあ アルには、色々秘密がありそうじゃがな。詮索はせんがの。」
「いやいや普通ですよ。」
何やら感づいてるのかもしれないけど、肯定も否定もしない。
うーむ、もらった情報から察するに、いきなり俺が骨を使役しだすと目立つな。。。グレイウルフの使役でさえ結構変な感じだったしな。骨は目立つなあ。どうしよう・・・せっかくの使役スキルなのに。
夜中にこっそり、スケルトンを取りだす。場所は畑のすみっこ。自分で革袋かついで運んできた。スケルトン実験をするためである。夜中に畑で骸骨相手に何かをやってる姿・・・誰にも見られませんように。




