レンジャー講習
森の集落の名前は、『カール村』にした。『ちくわぶ村』とか『はんぺん村』とか『みたらし村』とか色々考えたけど結局はシンプルになった。もともとこの集落のはじまりは亡くなったカールじいさんだし悪くは無いと思う。名前をギルドに知らせ手続きを踏むと1金貨を渡された。孤児達の食費はこれでまかなえる算段である。大きくなるに連れて増える食事の量は、自分たちで作った野菜を食べたりや薬草の売り上げや小動物の解体素材でまかなえると思う。それに年があければ二人が冒険者希望、一人がお店で働くことを希望しているのではじめは少ないとはいえ生活費の足しになっていくと思う。彼らが何のジョブを取得するかはわからないが、そのお金はお祝いとして俺が出すつもりでいる。どのようなジョブを得て、どのような職業につくにせよ手助けは存分にするつもりだ。もちろん依存にならない程度にしようとは思うが。
毎月1金貨はもらえることになり、家計は随分と助かることになったのだが蓄えはあって困るものではないので、ダンジョンへ行く頻度は前のままにすることした。前は一人で挑むと1日30銀貨、パルと行くと15~20銀貨の稼ぎだったのだが、パルが一人でダンジョンで稼げる力を得たことにより二人で行っても30銀貨は無難に稼げるようになっていた。だいたい月に8回ほどダンジョンに挑むので2金貨半ほどの稼ぎになるのだろうか。学校を運営しながらだとまずまずだとは思う。ダンジョン地下2F・3Fもさくっと攻略し今は4Fを何度も挑んでいる。(3Fのホブゴブリンからスキルは取得済みという俺の事情もある。)パルの戦い方は、主にスラコが攻撃し合間をぬって短剣での牽制を行っている。3Fからは武器を持った敵ということもあり学校で孤児たちにまざってもらい攻撃の受けながしと投擲を学んでもらっている。徐々に力はつけてはいってるものの使う武器のリーチが短いというのは、それだけ危険度がますということなので大変なのだ。
森の生活基盤も概ね順調に整備がすすんでいる。ドワーフ達の家がポツリポツリと出来上がっていき畑の利用度も増えている。ドワーフの奥さん達からのありがたい申し出でまだ利用しきっていない畑を使ってもらっているのだ。子ども達と嬉しそうに畑仕事を行ってくれる姿は微笑ましい限りだ。男手たちでかわるがわる伐採も平行して行っている。当初予定だった牧場予定地である。鶏あるいはそれに変わる卵の生産能力を高めてマヨネーズやプリンの生産計画を進めたいものである。マーダーシープバスにも変化があった。今は10月の終わりなんだけど年が変われば、4名が10歳になり職業の関係からも町へ行くことが増えるだろう。そのためにバスに荷馬車を引かせることにしたのだ。マーダーシープはかなり大きく馬力(羊力)があるので、荷馬車も大きめにした。イス席だけで16席、さらに荷物の収納部分もつける。名ばかりのマーダーシープバスから本格的なバスになったのだ!!まあ今は乗客はいないのだが。。。護衛としてニコにお願いしたかったのだが、妊娠していることがわかったので無理はさせれない。実際バトルコング戦ではすでに身ごもっていたらしい、、、すまん気付いてやれ無かった。とりあえず今は試験運転中なので車掌のラム一人でも問題はないと思っている。一応魔法も使えるしね。
生活にゆとりが見えてきたので今度はダンジョン攻略を少し進めたくなってきた。水魔法を使ったごり押しで6Fは突破できるんじゃないかとは思っているのだが、できれば正攻法で進めたいところである。ちなみにごり押しというのは、ボスがポップしたところで大量の水の塊で押し流し、流されたところを攻撃するというもの。スケトルンナイトは流れていったのでいけるんじゃないかなって思ってる。でもまあ最高で6匹の3~5Fのボスがポップするので事故が起こっても怖いので辞めたいところではある。そこで考えたいのは戦力の増強。現在のパーティは、オールラウンダータイプの俺とアタッカーのパルである。6Fからは罠も出現するというし、敵がパーティを組むらしいので戦力を増やすならば純粋なタンク職(盾役)と盗賊系(罠解除・危険察知)の職だろうか。俺は危険察知は取得しているのだが、罠関係はさっぱりである。どこかで覚えられるなら俺が覚えたいと思うのだが。そういえば、冒険者ギルド長は確かレンジャーだったよな。レンジャーも罠とか解除できる系のジョブだったはず。何か情報もらおうかな。
「レンジャー講習受けてみるか?有料だけどな。」
聞いてみた結果がこれ。
「えーっと世の中のパーティで斥候職とか盗賊職やってる人って、この講習だけでものにしていってるんでしょうか?」
「人それぞれだろうな。中には誰からも教わら無くてもできるやつもいるし。後は、盗賊ギルドも存在はする。が、あそこはお勧めはしない。入るのにきつい制約とノルマが課せられる。それに能力試験もあるから誰でもってわけにはいかないしな。その点レンジャー講習はお金を出せば冒険者ギルド員なら誰でも受けれるぞ。はっはっは。講師は俺だ。月のはじめにやってるぞ。ちょうど村のお金を渡す日にも開催予定だから、そこで受ければいいだろう。予約しといてやる。」
俺の返事を待つ前に予約されてしまった。心なしかギルド長はのりのりだったような気がする(*´Д`)
月の始めになり講習日。パルも行きたいというので一緒に講習へ出向く。講習代は一人5銀貨だった。
「集まってくれた諸君。皆知ってると思うが俺はギルド長のハーレイだ。今日のレンジャー講習は俺が行う。」
諸君??俺とパルしかいなのだが・・・
「まずレンジャーという職業についてだが~・・・」
ここからレンジャー職業の紹介に15分。
「面白い話をしてやろう、あれは俺が25の時に参加していたパーティでの事だ。・・・」
ギルド長の面白いと言っていた、ただの昔話がここから15分。
「で、本題のレンジャー講習についてだが~」
やっと始まった。講習始まった(-_-メ)。内容は本当にわかりやすくためになるものだった。レンジャーの基本としていかに敵に気づかれずに近づくかや、敵が近づいてきたときの察知方法。草地や石畳など地形別の説明やこういった装備が音を出しにくいや、こういった音には気を付けろなどと実際の装備や床材などを元に指導してくれた。実際のところ俺の装備は、バトルコングの毛皮を用いた軽装系ではあるものの、部分部分で金属も使っているし斥候としては50点くらいらしい。罠の解除・宝箱の罠の解除方法についても教えてくれたのだが、知識でどうにかなるものが40%、道具を用いて技術として突破できるものが50%、残りの10%はスキルがなければ太刀打ちできないらしい。それと罠解除系のスキルの中には、解除うんぬんの前に罠があるかどうかを判別する事も可能らしく、これのあるなしでダンジョン攻略の速度にも差が出るらしい。
「え?結局専門職なり、スキルもってないとだめって事ですか?」
「まあそうなるな。ただ、スキルが必要になるほどの罠や宝箱ってなると相当難易度が高いダンジョンの階層になるから、まあ今は気にしなくてもいいとは思うぞ。大半は装備や知識で太刀打ちができるものだからな。ただそれも一朝一夕で見につくものでは無いがな。」
「ちなみにですけどエレクスの迷宮でスキルが必要になる罠って存在するんですか?」
「う~ん本来有料情報なんだが、坊主には世話になってるからな。特別に教えてやる。28F以降だ。そこまではスキル無しでどうにかなる。」
「情報ありがとうございます。」
う~ん、とりあえず専門職無しでも問題はないのかな?俺まだ地下5Fだしな。ギルド長によるレンジャー講習は朝から夕方までといった正直5銀貨では安いんじゃないかって思える内容だった。午後からは罠の仕組みと解除の仕組みを実際に触れてみて教えてくれた。帰り際に簡単な罠解除道具一式とギルド長手書きの罠本を渡された。両方で15銀貨だった。パルは涙目になっていた・・・
講習の帰りに、冒険者ギルドでパーティメンバーの募集を出す事にした。募集内容は盾役のできる方。スキル『挑発』を使える方とした。この内容が難易度が高いものか低いものかはわからないけど。俺の中の盾役のイメージが盗賊戦時のパーティ『幸運の剣』ディナードさんの『挑発』なのである。いかにも盾役って感じだった。
俺の想定では、パルが武器を持った敵との戦いを難なくこなせるようになった時6Fに挑もうと考えている。その時には、パーティ報酬を折半性に変えるつもりでいる。今は4Fのハイコボルトと戦うことが多いのだが、少し長めの短剣を二刀流で持ち器用に受け流すようになってきている。手に入る経験値が多くなっていることで加速度的に技術が増していること、また武器はドワーフが好意でくれた良質の物であるというのも大きな理由であろうかと推測する。もちろん俺の「教師」スキルも影響していると思いたいが。年を超えてすぐには6Fに挑めそうである。それまでには盾役の人が見つかればいいのだけれど。
今までの斥候役といえば、グレイウルフのハナコが当てはまらなくもなかったのだが、すでに子離れは済んでいそうなのだが、今は子犬ともども村の監視役をお願いしている。バトルコングクラスが襲ってくるとどうにもならないかもしれないが、村周りの魔物だったら徒党を組んだハナコ一家ですぐに撃退可能である。嗅覚・移動力・戦闘力どれをとっても斥候役や警戒役として最適なのである。これで罠まで解除できるなら連れていきたいぐらいなのだが・・・小さい孤児達も多いので本当に頼りになる番犬(狼)達である。




