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査察

 14歳の9の月になるころ、俺から合格をもらったパルが一人でもダンジョンに向かうようになった。俺といっしょに1日、別の日に一人でダンジョンに挑んでいる。解体屋よりはかなり稼いでいるようだ。


 俺はというと同じ頃ダンジョンへ行った帰り、冒険者ギルドに立ち寄ったらギルド長に呼び止められた。呼び止められるとなにかと頼まれごとや厄介ごとにつながるイメージがあったので、すこーし嫌な予感はしたのだが、逃げるわけにもいかず話を聞くことになった。


「坊主、今度国の査察官といっしょにお前の住んでる森の集落に行くことなった。」


 はいいぃ?国の査察官ってなんだよ?また厄介ごとだよ。査察ってことは何か調べに来るってことだよな?俺悪い事してたっけ?してないぞ・・・もしかして税金か?いやいや商業ギルドが問題ないって言ってたやん。うーん。


「そんな嫌な顔をするな。悪い話じゃない。」 


 ・・・信用ならん。キュクロの金床やカルスさんの秘密やミツコとか見せたくないものてんこ盛りだぞ。というか俺普通に森で暮らしてるつもりが色々抱えこんでるなあ。


「心配してるのは妖精のことか?それともエントの魔物か?」


 !?知っている?さすがにカルスさんが魔王とまではばれてなさそうだが。。。


「俺の職業はレンジャーでな。孤児達を任せた後ちょこちょこ森で観察させてもらったんだよ。問題なく生活できてるかなってな。立場上おおっぴろに支援もできないからこそこそとこんな形で申し訳なかったが。妖精は俺の存在に気づいていたけどな。でだ、坊主の住んでいる集落を国に正式に認可してもらい、村として登録したいと考えている。村長は坊主だ。」


 色々と言いたいことはあるが・・・一番は村としての登録だな。村として認可されることのメリットがよくわからない。何故ギルド長はそんな働きかけを?


「何故って顔だな。正直村といっても普通の村じゃない。特別保護区の村だ。坊主が作った集落は、森の拠点になる。今まで危険すぎることやダンジョンほどの旨み味がなくて放置されてきた森の探索だが、一定量森素材の需要は存在する。森の拠点として保護することにするってのが建前だ。本音は、国から坊主や孤児たちへの支援を引っ張りたかったってとこだな。査察が終わり正式に認可されれば月に1金貨の支援がもらえる予定だ。税金の徴収も免除されている。まあそのための条件もあるんだがな。」


 ・・・金はありがたいけど、秘密が多すぎて正直ありがた迷惑感がある。それに絶対第三者の集落への介入がありそうだし。危害がなく悪い人じゃなければ拒む気もないんだけど。


「・・・その話確定なんですかね?認可受けたくないって通ります?」


「通らない。そもそもアルザスの森は王国の一部だからな。遅かれ早かれ50人を超える集落だと軍が確認に動きだす。そうなる前にいい条件を引きだして先に動いておく方がいい。」


「はぁ。で、条件ってなんなんです?」


「集落の人間が20人を下回ら無い事と5年以内に宿などの休める場所を作ること。ちなみに宿の設置費は査察の後国から支給される。税金は免除されるが、1年に1度は近くの領主に報告にあがること。おおまかには以上だ。あと、国からの補助を受けて冒険者ギルドより1名守衛が常駐派遣される。」


 悪くないのか?ただ20名っていうのがなあ。ドワーフ達はキュクロの金床の件が終わったらでていくだろうし、孤児達も大きくなったら町に出たり冒険者したりして森から出るんじゃないかな。まあ孤児が大きくなるまで金もらえればいいか・・・国ともめたくはないし。


「査察はいつになりますか?」


「来月だ。1日前には必ず連絡をいれる。」


「了解です。」


「坊主、村として正式認可されれば冒険者ギルドも大手をふって支援に回れる。絶対に悪いようにはしないことを約束する。無理を頼んでばかりで申し訳ないがこれからも子ども達を宜しくたのむ。」


「わかりました。心遣い感謝します。」


「あーそうだ、村の命名権は坊主にやる。好きな名前を付けるといいぞ。」


「!?か、考えときます。」


 認可されるかどうかも確定してないのに名前を考えるのもどうかと思うけど、どうやら内々ですでに決定しているくさいなあ。まあギルド長の言ってる事ももっともな部分もあるしな。盗賊の集団なんてこともあるわけだし国の中で大きな集団ができて得体がしれないなんてのは、管理者の立場から考えたらいいことじゃないもんな。色々便宜を図ってくれるっていうし、素直に受けいれよう。ただドワーフ達やカルスさんミツコにはしっかり説明しとかないとな。家族や孤児は俺が責任者みたいなもんだから任せてもらおう。


 森に帰った後、皆を集めて冒険者ギルドで話した内容を伝えてみた。


「悪い話じゃないと思うぞ。」


 とドワーフの長老ソーグリムさん。


「それにな、近いうちに相談しようとおもっとたんじゃが、儂らドワーフはアルさえよければここに永住しようとおもうちょる。キュクロは多分見た目の問題から他の町へはうつれん。弟子をほっとくわけにはいかんからの。フリーダもかわいいしのう。」


 ニカっと笑う長老。やだかっこいい。ちなみにフリーダは孤児の一人でハーフドワーフ。イーゴリ(熊族)も鍛冶教わってるはずだけど名前なかったな、がんばれイーゴリ。


「今は、仮で共同住まいじゃが、各々の家族を呼びよせて家を作るわい。長老の座もドワーフの里の若いもんにゆずるわい。それにポテサラもうまいし。」


 そうじゃそうじゃとドワーフ達。


「儂の事も気にしなくてよいぞ。従属の法具を付けておれば問題あるまい。宿を作ってもそんなにたくさんの人が来るわけでもあるまいしの。」


 カルスさんも問題ないようだ。


「わたくしも問題ありませんわ。普段先生のお家にいますから。さすがに人様の家に勝手に入ろうとしたら排除してもかまいませんでしょ?」


 排除って。。。ミツコも問題ないようだ。


 概ね問題ないようだな。村の名前に関しても相談したんだが、勝手に俺が決めろって言われた(*´Д`)


村の名前ねえ・・・日本に関連した名前にしようかな、おいおい考えとこう。


 話し合いの後、集落はあわただしく動きだした。学校では査察に備え挨拶や礼儀を重点的に教えていく。良いように見られた方が得だしな。ドワーフ達は、家族を迎えるために家を作りだした。家族って言っても奥さんがいる人が奥さんを呼ぶくらいで、独立した子ども達はほぼ来ない。2組ほど孫まで含めて移住するかってぐらいか。集落のドワーフ比率がますます大きくなるな。


 魔物(正確にはカルスさんは魔族にあたるが)対策として、従属の法具を買い足した。なんせハナコの子どもが増えているのもあって予備分でもまかなえなかったのだ。子狼たちもスクスクと大きくなっている。孤児たちとも随分仲良くなって遊んでいる姿をよく見る。ラムやマーダーシープにも従属の法具を付けた。バス運行しているので一番外部と接する機会が多そうだからだ。まあバスと言ってもご飯食べに散歩にいってるだけなんだけど。本当に人を乗り降りさせる仕組みを作ろうかな・・・


 ひと月がたったころ、約束通り冒険者ギルド長より連絡が来た。査察官1名、護衛の兵士10名、ギルド長が同行し森にやってくるそうだ。キュクロの金床の秘密、カルスさんが元魔王ということだけは隠すということを皆で決めた。無用な争いに発展してほしくないというのが本音だ。金床に関してはいずれドワーフ経由で技術は広まっていくだろう。


 ドワーフの長老ソーグリムさんと俺で査察ご一行を迎え入れる手はずになった。ソーグリムさんは長老だけあってどっしりとしたものだったが、俺は朝からそわそわしっぱなしである。前世では田舎とはいえそれなりの立場の役職にもなっていたし、接客業だから人と会う事や接することは苦手ではないのだが、相手が査察官なるよくわからない人だから緊張するのだ。


 「査察官のエンリ・ハルベルトです。今日はよろしくお願いします。」


 きょとーんとする俺。査察官は、恐らく20代であろう若い女性だった。しかもすごく丁寧な感じでえらそうな感じが一つもない。


「あ、はい。よろしくお願いします。」


 どんな怖い人が来るんだろうと身がまえていた俺だったが、見事にあっけにとられてしまった。は!!それが作戦か!?俺の油断を誘っているのか?それともハニートラップなのか?いやまてまて俺一切誘惑されてない。


 一人であたふたしている俺をしり目に、エンリさんは兵隊を連れて森の集落を見て回った。といっても各自が住んでいる所と畑と学校しかないので査察もすぐに終わってしまう。


「村長になる予定のアルフレットさんでしたね。立派な道を作り集落は魔物に対するしっかりとした防衛策ととられています。ドワーフの方々もたくさんいますしあなた自身もなかなかの腕を持つ冒険者とお聞きしております。滅多な事では魔物に落とされることもないでしょう。私はここを特別保護区とすることに問題ないと判断します。」


「ありがとうございます。査察官様。」


「本当にがんばりましたね。カールさんも喜んでらっしゃるでしょう。」


 そう言い残しエンリさんの査察は終了した。カールじいさんの事知ってるの?って聞きたかったけどその時間も無くエンリさんは兵士を連れて颯爽と帰っていった。


 ・・・えー査察軽くない?いやいいんだけどさー。認められた?ってことだろうし。




 後日ギルド長が結果報告と称して森にやってきた。


「よー坊主、査察対応ご苦労さん。国から連絡あって、この集落は特別保護区の村として認可されたぞ。来月から1金貨の補助が毎月入る。毎月1日に冒険者ギルドで受付してくれ。それと常駐するギルド員は、また引き合わせる。」


「あ。はい。」


「なんだ?嬉しくないのか?」


「いや、なんか査察っていうのですごく恐ろしい相手が来てってかまえてたのに、優しい女性が来てさくっと終わっちゃったので、気が抜けたというか。なんというか。」


「悪いようにはしないって言ってあっただろう。それにエンリ様はこの森に愛着があるからな。」


「なんかじいさんの事知ってるようでしたね。」


「まあな。エンリ様から言うなって言われてるのでこれ以上は言えないけどな。」


 何か意味ありげだな~まあ言えないらしいしもういいや。


「坊主、1週間以内に村の名前決めとけよ。でないとお金おりないぞ。」


「わかりました。決めたらギルドに伝えに行きます。」



 村の名前~村の名前~。浮かばん。まったく浮かばん。

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