森での生活
半日をかけて、森の家に帰ってきた。道中一度だけホーンラビットが出てきたが、じいさんが危なげなく弓で射殺した。そんなに大きくはないウサギの魔物ではあるが、5歳の俺にとっては怖い魔物である。持っているナイフではとても倒せそうにない。特に30cmはあろうかという角はかなりの脅威で鉄や石はは貫けないらしいが、革製の防具だと物によっては穴が開くらしい。ちなみに俺は防具らしい防具は身に付けていないので、襲われたらひとたまりもない。倒したホーンラビットは血抜きしながらロッキーが運んだ。
家に帰ってからじいさんといっしょにやったことは、家畜の住み家づくりである。元々じいさんと俺が寝ている部屋と台所スペース、物置しかない小さな家だったので、動物たちもいっしょにというわけにはいかない。じいさんは斧を使って周りの木を切り倒し、俺は近くにある倒木をロッキーにくくりつけて資材を運んだ。木とつたを使って5m四方の囲いを作り、屋根部分は、木と自然の葉っぱなどで作った。床部分は、草などを使って寝床を作ってやった。鶏は仕切りを作ってヤギとロッキーが入れない形にしといた。ここまで完成するのに1週間。じいさんがいなけりゃ俺一人では何もできないところである。
その後は、動物たちが自由に動き回るための牧場兼俺の農園づくりのためのスペースづくりである。動物の世話をしながら少しづつ家の周りを開拓していった。じいさんは、今まで通り大きな木を斧で切ってくれた。俺はロッキーと組んで藪をはらったり小さな木をのこぎりと小斧で切ったりだ。家の周りだいたい30m四方を切り開いて木で柵を作り、その周りを掘りで囲み終わるまでに半年かかった。柵は高さがだいたい1m(今の俺の身長くらい)、堀は幅50cm深さ1mほどの大きさだ。よほど大きな魔物が来なければ大丈夫だとは思う。何をするにもロッキーパワーは、かなり助けになった。買っててよかった(しみじみ)
実家が農家で牛を飼っていたために畜産スキルを持っていたものと思われるが、実際は餌をあげる手伝いをしていただけで、詳しいわけではなかった。じいさんも俺だよりだったらしく動物の飼い方はよく知らなかったらしい。世話は完全に俺に丸投げである。勘違い1として、鶏は玉子を毎日産むものと思っていたが、どうやらそんなこともないようだった。卵をしばらく食べれないのは残念であるが、増えるまでは放置することにした。勘違い2としてヤギは毎日お乳を出すと思っていたが、妊娠しないと乳がでない。ヤギが妊娠してはじめてわかった。チーズも作ってみたかったが、作り方がわからないのでとった分を飲むだけにした。また町に行った時にでも聞こうと思う。正直なところ知識がなさ過ぎて家畜に関しては手間だけが増えたような気がする。餌は勝手に食べるので糞尿の世話と水やりだけなのが救いである。数が増えたらの楽しみにしておこう。ちなみにロッキーはほぼ世話がいらない。本当に頭のいいロバである。
ヤギや鶏にたべられないように工夫しながら規模は小さいながらも野菜を育て始めた。植えたのはじゃがいもとキャベツである。元々の土がいいのかわからないけど野菜は特に問題なく芽を出してくれた。味付けは今のところ塩しかないけれど、野菜が育ったころには食卓が豪華になりそうである。
開拓をしながら、自分で小遣いを稼ぐために獣の倒し方をじいさんが教えてくれた。基本は罠を設置し、かかった獣は、木の棒にホーンラビットの角をくくりつけて作った槍もどきで突き殺す。じいさん自作の小さな弓矢ももらったが、俺の腕力で射てもなかなか殺せなかった。投擲も教わったが、弓よりは投げナイフの方が俺には合っている気がした。また薪割りの仕事も与えられた。ナイフよりもレンジのある斧の使い方を鍛える延長でもある。将来のジョブは決めかねているが鍛錬はかかさないほうがいい。現状では、水魔法が攻撃に使えないので体を鍛えるしかないのである。ただいずれ初級水魔法を覚えたときのためにも日課にしてあるMPを増やすための鍛錬は続けた。生活用水を作り、動物に水をやり野菜に水をやる。それでもまだまだ余力があったので堀に水をため続けた。本当に地味である(泣)
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文字は薬草辞典を参考書にじいさんに教わりながら覚えた。読んでて思ったが特に『本の加護』が働いているようにも思えなかった。本当に謎スキルである。じいさんから実際に家の周りにある薬草については聞いてたが、薬草辞典をもとにさらに幅が広がった。簡単な調合の方法も載っていたので木とナイフで乳鉢と麺棒を作り、本を見ながら作ってみた。基本的にはすりつぶして自分の水魔法の水と混ぜるだけである。体力回復に効果がある薬草などで試してみたが、やや回復したような気がした。まあ練習も兼ねて本を片手にいろいろとやってみた。一度間違って毒草を食べたみたいで、かなり苦しめられたが、自作の毒けし薬がうまく作用し1日で体調は戻った。薬草・毒草は、町で需要もあるため、小遣い稼ぎもかねて結構集めた。俺の腕では、獣素材よりも薬草のほうが金になりそうである。
動物の世話をしながら、野菜を育て、採取や狩りをし、少しづつお金を稼ぎながら体とスキルを鍛えていった。順調に体を鍛えつつ俺は9歳になった。ただじいさんは俺とは逆にだんだんと動きが鈍くなっていった。