学校イベント 森での狩り②
「エリス。俺が合図したら『闇玉』であいつを寝かせられるか?」
「はい!!」
守るべき者に頼るのはどうかとも思うが、このままだと全滅しかねない。もちろんエリスの魔法が効かない場合は、また戦略は変えねばならないけど。
あからさまに過ぎるほどでかい水の塊を浮かべる。猿の方もドワーフ二人と戦いながらチラチラと俺の水の塊を気にしている。水の玉は、俺の斜め上空中に20Mほどの塊となって浮いている。これだけの水玉を作った事も無い。
「ニコ!!俺を空中に放り投げろ。」
「フンス」
わかったとばかりにニコが俺をつかみ、猿とドワーフの戦闘域の上に投げつける。水の質量は俺が触れている限りは、別の者にも影響は無いようだった。でなければさすがのニコでも俺を投げることはできなかっただろう。なにせ直径20M級の水の塊だ、重さもしゃれにならないだろう。もちろんまともにあたればその水の重量だけであの猿を圧死させられるだろう(多分)。まあこれだけ目立てば否応なしに避けられるだろうけど。
「はじけろ!!」
俺は空中で玉をはじけさせる。水の玉は、小さなつぶとなってあたりにまきちらされる。いわゆる瞬間的な雨である。まさか雨が降るとは思っていないドワーフ二人も猿も唖然としている。雨といっても大降りの雨であたりはビシャビシャになる。俺もドワーフも猿もビシャビシャだが。俺はそのまま猿付近に着地する。唖然としていた猿も我に返り馬鹿にしたような笑い顔で俺の方に向かってくる。ふぅ、ここからだ。
「チャージ!!」
ぎょっとする猿をしり目にチャージで猿に突進し猿に抱き着く。
「『氷作成』!!」
続けざまに氷生成を使う。地面も俺も猿も凍りつかせていく。俺の魔法『氷生成』は触れた箇所(水気の無いものを凍らせるのは難しい。)から徐々に凍らせる魔法。暴れる猿の爪が背中をえぐるが、都度『癒しの水』で癒していく。並列魔法も『水操作』の賜物だ。もちろん回復速度が追いつくわけもなく傷を追っていくが、あせった猿は俺に致命傷を与えられないでいる。
「エリス!!俺もろとも寝かせるんだ!!」
「!?はい!!」
凍りつき動けない猿と俺相手にエリスの眠りの闇魔法が炸裂する。一瞬で眠気が俺を襲う。二回目だったからか来るとわかっていたからか前より一瞬耐えることができ、猿が眠りに落ちるのを確認することができた。
後は・・・まかせた・・・
俺が目を覚ますと、寝た瞬間からそれほど時間はたってないようで、俺は猿といっしょに凍ったままだった。違うのは魔物の血の匂いで溢れてることだ。意図を組んでくれたらしく眠らせた猿にきちんととどめをさしてくれたようだった。皆で凍り付いた俺から氷をはがしたり溶かしたりする音で俺は目覚めたようだ。背中が傷む。背中の治癒を『癒しの水』で再開する。さっきは無我夢中で感じなかったけど、猿くっさ。早く動けるようにしてくれええええ。
「あ、起きた。」
もごもごしていると、氷をはがしている皆が俺に気付いた。
「アル無茶するのう、水の塊抱えたまま飛び上がったと思ったらまさか雨が降るとはな。何が何だか混乱して動きが止まっちまったわい。猿の魔物に抱き着いた時も心臓が止まるかと思ったぞ。」
ドワーフ護衛の一人ガーエルさんだ。
「本当。先生死んじゃったと思った。」
泣きそうになりながらせっせと氷をはがす、エリス。
「ごめん、あまりに必死だったから。でも、エリスもロイもよくがんばった。頭をなでてやりたいけど、凍ってて動けないや。はは。」
「先生~」
「うわ~ん、先生~」
子ども達・家族達がひっきりなしに泣きながら俺に抱き着こうとして、氷に触れて「冷たっ」って離れていく。まあそうなるよね。
「先生無事でしたのね。良かったですわ。魔物の反応がなくなったので倒したのは感じ取れたんですけど。」
ミツコがもう1匹の猿の死体を引き擦りながら戻ってきた。さすがだな。
「助かったよ。ミツコがいなかったら全滅していた。こっちはよってたかってこのざまだけど、なんとか倒せたよ・・・」
「強い魔物でしたわね。私もあれだけ強い魔物とは初めて戦いましたわ。」
「全くだ。本当に強かった・・・家の警備は万全だと思ってたんだけどな・・・あんなのが出てくるんじゃ堀も柵も意味を成さない。森の奥に行かなければ安全だと思ってたんだけど。。。色々見なおさないと。」
「そうですわね・・・私も精進しますわ。」
ミツコが精進したらすごそうだな。
やっと氷状態から解放された俺は、たき火で体を温め復活した。当然といえば当然だが、今日の狩りは中止となった。傷は俺の魔法で癒したとはいえ消耗が激しい。次の狩りは、森周辺の安全を再確認してからになるだろう。恐らくだが、魔物の数が減っていたのはあの猿のせいだろう。あの魔物・・・どこからきたのか?種族は?まだまだいっぱいいるのか?よくわかないままでは安心して暮らしていけないな。考えてこんでるとパルがしゃべりだした。
「あの魔物は確か、バトルコングだったかな。僕はね力はないんだけど、少ない給金を使って魔物図鑑を買ったりして色々勉強してるんだ。魔物の事に詳しくなれば役に立つことがあるかもって。」
「バトルコングってどんな魔物なの?戦ったからやっかいな敵だと言うのは身に染みてわかったけど。」
「森の奥に住むといわれる猿系の魔物。エレクスの迷宮地下にも出るみたい。攻撃方法は、爪牙何かを投げる。弱点は確か火だったかな。筋肉の鎧も固く毛皮も厚いのでやっかいな敵だね・・・」
毛皮が厚いかどうかなんて、攻撃すら当たらなかったからわかんないや。火も使える奴いねえしな。。。自力あげるしかないのか、、、大変だわ。
バトルコングの死体は持ち帰った。ドワーフ達の進言でバトルコングの素材を使って防具を作ることになった。どうやら俺の装備は貧弱すぎるとのことだった(-_-メ)。バトルコングの皮で鎧を作り要所要所を鋼で補強する。なかなかの強素材だそうで売ってもいい値段になるが、せっかくドワーフといっしょに住んでるのだから頼れと言われた。金属だけでなく革を使わせても一流職人ばかりだそうだ。ありがたい話である。
「村長に死なれちゃかなわんからな。がっはっは。」
とガーエル(ドワーフ)さん。
「村長?」
「50人も住んどるんじゃ、村じゃろ。そこの長なんじゃから村長じゃ。」
「まあ村とも呼べなくはないのかな?でも村って呼んで変わることあるのかな?」
「そりゃあ、固有名詞が出来たら呼びやすいじゃろ。この森は領主の管轄地区でも無かったはずじゃぞ。独立自治区になるんかの。勝手に名乗っていいのかは儂は知らんけど。がっはは。」
おいおい、村長名乗って町の領主に襲われたんじゃかなわないっての。税金払えとかってのも面倒だしなあ。てか今払ってないのがどうなのかもわからんけど。ゆくゆく社会の時間で教えるのに必要な知識かもしれないから調べておくかな。まあ今はあのバトルコングだわ。脅威度をどうやって調べたもんか・・・
二回目の襲撃も特にはなく、別の魔物が襲ってくることもなく、かといって狩りの獲物が捕れるわけでもなく無事といえば無事に集落に帰ってきた。そこへちょうど食事周遊を終えたマーダーシープバスと車掌のラムが帰った時間とかぶったようだ。
「お、先生もおかえりか~なんかえらい疲れた顔してんな~?どないしたん?」
あ、ラムから森の魔物情報を教えてもらえばいいのか。3か月に一回しか聞けない質問だ、どのような質問にすれば効果的なのか考えないといけない。
質問の仕方①「この森にバトルコングはまだいるのか?」・・・森は超広い。奥の方にいっぱいいるかもしれない。でも「いるよ」って聞いて、それで終わりではだめだな。
質問の仕方②「この集落10km以内に生きたバトルコングはいるのか?」・・・バトルコングに対する脅威度のはかり方としては悪くないかもしれない。10km以内にいるなら斥候や討伐隊を作り脅威の排除を考えなければならないかも。もちろん集団で存在するなら近づくわけにはいかないが。。。ちなみにまともな地図も無い森だが、今住んでいる所は、エレクスの町-3km-森の入り口-5km-集落-?-森の奥という地形図になる。この?部分は行ったことがないので詳しくはわからいのだが、集落は入り口にかなり近いらしく、じいさん曰く10kmや20kmでは終わりは見えなく先は見えないそうだ。じいさんが行ったわけではなく、竜騎士だか空を飛ぶ魔物使いだか魔物に目を借りる魔法を使う魔法使いだかが、はるか昔に森の上から調べた事があるらしい。それっきりダンジョンもあるし、森に依存した町でも無かったので調べる必要も無いのだそうな。話が逸れた。質問の仕方②だが、バトルコングだけの脅威ならそれでもいいのだが、他にもバトルコングのような危険な魔物が近くにいるかの脅威度をはかることはできない。
質問の仕方③「この集落10km以内に危険な魔物はいるのか?」・・・主観が俺ならば、悪くないかもしれないが、、、例えば子ども達にとって危険となるならばグレイウルフでも危険な敵だろう。
質問の仕方④「この集落10km以内に俺にとって危険な魔物はいるのか?」・・・いいんじゃないか?ついでに「いたら教えてくれ」も通じるなら結構わかるんじゃないか?よしこれで行こう。
「ラム3か月に一回聞ける質問だ。確かいけるよな?」
「ええで~。」
「この集落10km以内に俺にとって危険な魔物はいるのか?いたら教えてくれ。」
「う~ん、あいまいでやらしい質問やなあ。うち、先生の強さ知らんで。それに危険って定義だけで言うなら弱くても毒持っとたりとか魔力が強いとかで定義変わるからなあ。わかるかなあ・・・。まあ占いみたいなもんやさかいに試してみるか。んんんん、おっ出たで結果出おったで。複数おるな、ちょい待ってな言うていくわ。」
おお!!聞いてみるもんだ。さてさてどんな魔物が!?




