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友達をつくろう

 朝 俺は冒険者ギルドに来ている。と、友達を作れないかと考えてギルドに来ているのだ。どこかのパーティに入ったなら何かが始まるような気がするのだ。あくまで気がするだけ。というか前世でも大人になってから友人を作るって機会は、同僚以外ではほぼなかった。友人を作る難易度は前世も今生も絶対に高いのだ。高いはずなのだ!!そしてこの世界、森以外のコミュニティで人が集まるところを冒険者ギルドしか知らないのだ。冒険者ギルドに来るのは必然なのだ!!


 で、朝からパーティ募集ボードを眺めている。条件だけでいうならば「回復魔法を使える者」や「水魔法を使える者」は、俺が参加しても問題ないだろう。前と同じように職業「教師」と伝えたらどうなるかわからないが・・・能力的には結構いい線いきはじめてるとは思うんだがなあ・・・


 どのパーティに声をかけるか迷ってると昼になった。まんぷく亭でお昼を取る。あ~いつもここの飯はうまいなあ。勉強になるなあ。さあて昼からがんばろ・・・


 ~夕方~


 あ~だこーだと迷ってる内に夕方になってしまった。想像以上に俺は一歩を踏み出せなくなっているようだ。声がかけられないのだ。もちろんパーティ希望を出している人たちがその場にいるわけではない。冒険者ギルドの職員に言伝をするだけでいい。簡単な事なのだ・・・が、それができない。思わずため息がでる。いつも家ではえらそうな事を言っているがまったく子ども達の手本にならないではないか・・・


「はぁ・・・」


「はぁ・・・」


 ん?ため息がかぶった?横を見れば頭にスライムを乗せた女性が、募集掲示板を見つめながらため息をついていた。髪の毛が淡い水色で年齢は俺と変わらないぐらいか。にしても相当かわいいな。正直ドストライクなんですけど、こ、これは話しかけなきゃ、このチャンスは絶対逃せない・・・


「「あ、の」」


 その声すらかぶる。彼女も俺に話ししかけようとしてくれたのか?あああああドキドキする。元おっさんが何を言ってるんだとは言わないでほしい。ドキドキするものは仕方ないのだ。どうぞどうぞと会話の主導権をゆずる。


「パーティメンバー探してるんですか?」


 と彼女から。


「はい、そうなんです。あなたもですか?」


「はい、なかなか僕をパーティに入れてくれる人がいなくて」


 聞き間違いか?僕って言ったぞ。いやまてまて僕っ娘だろう、きゃしゃな体つき、身長も低目である。まさかまさか・・・いや俺は友人を探すための手がかりを求めてここに来たのだ。男でも女でも関係ないはずだ!!


 でも 聞く。俺は聞いちゃう。デリカシーは前世に置いてきた。


「え?僕?ってもしかして男なんですか?」


 じとっとした目で見られた。


「良く間違われるんですけど男です。見せましょうか?」


 見せてくれるの?いや、まてまて喜んでどうする。俺にその趣味はない!!えっ無いよな?新たな扉ひらいてないよな・・・?


「い、いえ大丈夫です。すいません。あの良かったら詳しいお話ししませんか?」


 男とわかってちょっと冷静になった俺は、色々と話をした。


 彼の名前はパルシャンテ 15歳。別の町から3年前にこの町に引っ越してきて冒険者になった。職業は魔物使い。魔法の才や剣の才はなく、かといって他の職業で冒険者になれそうにもなく、苦肉の際で選んだのが、魔物使いだという。魔物にがんばってもらえればどうにかなるんじゃないかってことで。だが、魔物使いの職を得た時にわかったテイム適正は、スライムのみ。テイム適正というのテイムしやすい魔物の事。実は適正以外の魔物は仲間にしにくいそうだ。あと、テイムするには魔物に自分よりも強い事を示さなければならない。俺が女の子と見間違ったほどきゃしゃなパルは、何とかかんとか弱ったスライムを見つけテイムに成功する。しかし、スライム1匹ではパーティに入れてもらえるわけもなく、ポーターとしても非力な彼には需要はなく、戦闘経験をつむことができない。だけど、生きていくには金がいる。冒険者としてはどうにもならなかったが、ギルドの解体所で雇ってもらえてそれで生活しているそうだ。


「はじめは、解体所でも一日体力もたなくってね。でも最近は体力ついてきて一日働けるんだ。」


 ニコリと笑いながら言う。あらやだかわいい。やめて開いてしまう別の扉がぁあああ。


「それにね、解体所で魔物の残骸もらえてね、スライムの餌にできるんだ。」


 えへへ と言いながらスライムをなでる。あらやだ、ほんとうやだ。かわいすぎるでしょ。どうみても女の子にしかみえないんですけどおおおお。はっ、俺は女の子に見えるパルをかわいいと思っている。男の子を好きになっているわけでは無いのだ。問題ないはずだああ!!結果的に男の子だとしてもだ(´;ω;`)


「でね、おうちにスラコから分裂したスライムが二匹いるんだ。なかなかテイムできないからね、増やしてるんだ。」


 頭にのってるのは、スラコっていうのね。あと「おうち」って?言い方ねらってね?


「俺の職業は、「教師」です。水魔法の初級までと斧を使います。ダンジョンは5Fまでソロで踏破できます。」


「あー年は僕のほうが1個上みたいだけど、敬語はやめようよ。その年でダンジョン5Fまで踏破してるなんてすごいね!!アルは。でも、そんなすごいんじゃ僕とパーティは厳しいね・・・」


 悲しそうな顔をする。思わず


「いえ、い、いや、そんなことないですよ。じゃなくて ないよ。良かったらいっしょにパーティ組まないか?」


 あ、言っちゃった。思わず言っちゃった。ぱーっと明るい顔になるパル。


「本当 やったー!!」


 と俺の手を取り飛び跳ねて喜ぶ、パル。頬を朱にそめる俺。ああ手を握られて照れてしまった。こいつは魔性やでえ。俺は週に一回しかパーティを組めない事を伝えて、今日はお開きとなった。


 そして冷静になって考える。恐らく戦力的にソロの時と何一つ変わらない気がする。武器も魔法も得意ではない彼。スライムの攻撃力もあまり高くないし・・・何をやらせればいいんだろうか。しまったか俺、やっちまったか俺。いやいや、さっきも考えたじゃないか。友人をつくるのだと。彼はきゃしゃな体でがんばってなんとか冒険者をやろうとしている努力家じゃないか。話してみてもいい人だったじゃないか。戦力は、まあ目をつぶるとして(失礼な話だが)友人にはなれそうではないか。ああ・・・彼が女であったなら。戦力なんて関係なく俺は・・・


 若干そわそわしながら、次の週を待つ。待ち合わせはギルドの前。俺はいつもの準備と盛りのついたロッキーを引き離して連れてきた。パルは俺より早く待ち合わせ場所についていた。パーティどころかなかなか戦闘も行えなかったのだから無理もないだろう。軽装の革鎧に短剣を持ち、頭にスライムのスラコを載せている。


「さ、アル行こう!行こう!!」


 興奮している姿もかわいいなあ・・・はっ、いかああああああああん!!駄目だ、女性の好きな人を早く見つけないとやばい。思うに俺は耐性が無さすぎるんだろうな。前世でも人としゃべるのは、問題ないのだけれど恋愛とかそっち方面はさっぱりだったからなあ。まあムフフなお店には行ってたけど。


「ダンジョンでいいんだよね?行くのは。パルは行ったことあるんだっけ?」


「あるよ~。1Fだけね。雑魚スライムなら1体1ならスラコと僕で倒せたから。時間かかるけど・・・」


「じゃあ、今日は1Fから行こうか?」


「了解。あ、移動どうしよっか?アルはロバだよね。僕は乗り合い馬車に乗って行くよ。」


「パルさえ良ければ、ロバに二人乗りで行く?パルは軽そうだしね。」


 ロッキーが え、まじで?って顔で見てくる。いやいやお前ムキムキだし余裕だろうに。


「助かるよ~馬車代浮くしね!!」


 俺の後ろに乗るパルが手をまわしてくる。学生カップルが自転車で同じような事をしているのを遠目に眺めているだけだったが、こういう感覚か~。いや違う。冷静になれ。俺冷静になれ!!


 走りだすロッキー。嫌そうな顔してた割りに快走だなあ。さすがロッキー!!


「気持ちいいね!!」


 パルの笑顔がまぶしい。確信する。絶対俺以外に勘違いするやついるよ~絶対いるよ~もう男でもいいってやつもでるよ~よく今まで襲われなかったものだ。。。いや襲われてんじゃないか?


「あのさ、パル。今まで女の子に間違われて、あの、その襲われたことって?」


「ん?あるよ。いっぱい。いつもスラコ投げつけてるけどね。割合エレクスの町は治安もいいから、大事にはいたってないけど・・・」


「やっぱり。」


「はぁもうちょっと筋肉ついたらなあ~」


 筋肉ついてもそのかわいらしい顔、きゃしゃな体・・・無理じゃないかなあ。あと、しゃべり方もだな。


 迷宮につき、地下1Fに向かう。まずはパルの戦いぶりを見せてもらう。地下1Fはスライムしかでない。まあ安全だろう。


「行けースラコ!!」


 スライムに向かってパルがスラコを投げつける。二匹のスライムがじ~わじわと溶かし合いを始める。5分ほど待って敵スライムのン体積が1/3くらいになったところで、パルがナイフで敵スライムのコアを刺し壊す。スラコも体積が1/3に減っている。溶かし合っただけで同じだけ吸収しているわけではないようだ。


「どう!?」


 ふふんと誇らしげなパルであったが、スラコは1/3になって次はどうするのか?


「ええっと、次の戦いもスラコが?」


「ううん、これ以上戦わせるとスラコ死んじゃうからね!!」


 ほうほう、え?


「だからね、頑張ってスライム増やしてるんだ。スラミとスラッシュがもう少し大きくなったら、スライム3匹も倒せるからね!!」


 思った以上に厳しい戦力のようだ。。。何年も魔物の解体をやっているからだろうかナイフの扱いは悪くないように思えたけど。


「えーっと、スライムが一匹で出てこなかったらどうすんの?」


「逃げるよ。当然じゃないか。」


「それだと、場合によってはここのダンジョン入館料?30銅貨も稼げないんじゃ?」


「そうなんだよね~だからなかなかこれないんだよ。今までに一回しか来たことないし。たまたまパーティ入れてもらったんだけど、それっきりだったしね。」


 なかなかに前途多難なようだ。


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