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孤児たちの引っ越し

 セーラさんに、明日の朝迎えに来ると約束して、俺は森へ急いで帰った。迎え入れる準備をするためだ。孤児は25人+セーラさん。体は小さいとはいえ、それなりの建物が必要になるだろう。それを1日で作る。普通なら無理な話だが、ドワーフ達22人と俺の家族がいればどうにかなると思う。まあ人頼みなのだが(*´Д`)


 ドワーフ皆に集まってもらい話を始める。22人の中にはガダフさんとライムントも含んでいる。事情を説明すると皆がまかしとけ!!と力こぶを作った。


「アルには言っとらなんだが、儂らライムントより家建てるのうまいからな。」


 へ?大工のライムントより?


「ライムントは大工つっても、神殿でもらった職業は鍛冶のままじゃし。儂ら人間族よりも長生きじゃからな。何度も何度も家を建てとるからの。経験が違うわい。がっはっは。」


 え、ライムント職業大工じゃなかったのか。なんかムスッとしてる。


「ふん、家具なら負けないよ。」


 と、ぷんすかライムントであったが、ドワーフ達に引きづられていった。



 話し合いの結果、俺の家と最近できた300m四方の牧場(畑)の間に、家を建てることにした。家と言ってもとりあえずは、寝る場所だけの家だ。トイレと台所は、後で別に作る予定。俺の仕事は、牧場の堀を使いつつ孤児たちの家の周りを新たな堀で囲むこと。俺も猛烈な勢いで掘っていったが、ドワーフ達の建築速度もびっくりするぐらいに速かった。ソイソイ言いながらぐんぐん木を板にし金づちで釘を打ち付けていく。キュクロもソイソイ言ってるな。あいつも染まったなあ。


 皆の頑張りで夕方になるころには、堀も家もできた。明日以降は火床とトイレや風呂を作る。火床は金があまれば魔石の使えるものを買いたいな。安全だしな。風呂はもちろん水風呂だ。にしても数も質も最高級だと本当に作業が早いな!!何気に俺も穴掘りの質は最高級だと自負しているが(ニヤリ)。


 後は、、、


「明日から、森に子どもがたくさん住むことになる。仲良くしてやってくれよ。」


 孤児たちが来ることを、自分の家族に伝える。


「家族が増えるの?」


 エリスが心配そうに聞いてきた。


「う~ん、家族ではないかなあ。だけど、いっしょに森に住む仲間になる。いろいろ教えていこうと思ってるし、生徒かな。友達できるといいな。」


「ともだち~ともだち~!!先生友達ってなあに?」


 コニーが聞いてくる。そういやこの子たちに家族はいても友達って存在はいなかったか。。。でも、改めて聞かれると友達ってだんだろな?・・・ん?俺友達っていたっけ?前世で死ぬ前は、たまに飯いったりオンラインゲームする連れはいたが、今生では?うっはまじか 俺友達いねえwしょんぼり・・・


「んとね。いっしょに遊んだり、勉強したり笑いあったり、時には悲しみあったりする家族とは違う仲間みたいなもんかな。。。」


「せんせい なんだかかなしそ・・・友達ってかなしいの?」


 5歳のマリーがポンポンとたたきながらなぐさめてくれている?や~め~ろ~


「そ、そんなことないぞ!!友達ってのはいいものだ。明日からいっぱい子どもが来るから友達増やすんだぞ。」


「「「はーい。」」」


俺も 友達つくろ・・・


「あーそれとな、明日来る子ども達は、俺と同じでお前たちも先生みたいなものだ。料理の仕方や獣の解体方法や薬草の煎じ方とか、俺が教えてやった事いろいろ教えてやってくれ。」


「「「はい!!」」」


 うん、いい返事。孤児たちがこの森になじんでくれるといいなあ。



 次の日の朝、これまたドワーフ達に無理を言って荷馬車を出してもらう。さすがに20台以上の荷馬車で迎えにいけば孤児たちも荷物や食料も連れていけるだろう。あの痩せっぷりもそうだが、あぶなかっしくて森まで歩いては無理だ。


 孤児院につくと、準備はできていたみたいで、皆が皆荷物を持っていた。半ば予想していたことだが、替えの服2、3着にふとんがわりの布っぽいもの、歯ブラシやコップ、椀くらいしか持って無さそうだった。孤児たちを見てドワーフ達も悲しそうな目になる。反対に孤児たちはドワーフ達を見て萎縮してしまってる。孤児院長から暴力を受けていたこともあって大人の男性を怖がってるのかもしれない。まあいかついドワーフ20名は普通の大人でも結構びびると思うが。


「セーラ、行こうか。皆も荷馬車に乗ってくれ。荷物も載せれるだけ全部乗せよう。」


 森でいっしょに住むんだ、さんづけも敬語もやめにした。(年下だよね?呼び捨てでもいいよね?)


「はい、よろしくお願いします。さあみんな乗せてもらいましょう。」


 おずおずと皆が荷馬車に乗っていく。ドワーフ達に手伝ってもらって目の見えないセーラも乗り込んだ。ギルド長にもらった金貨と俺の金を使って色々買っていく。多めの食料や塩、寝床に使う寝藁など。魔石付きのコンロ(1金貨くらい)や服などは買うお金が無かった。ドワーフの長老ソーグリムさんが「お金を出してやろうか?」って心配してくれたが丁寧に断った。たよってばかりではいけない。徐々によくしていけばいいだろうと思う。


 町を出る前に俺だけ冒険者ギルド長の所に向かう。


「ギルド長、とりあえず森に皆を連れていきます。」


「すまんな。俺のわがままみたいなもんに付き合わせちまって。本当に助かる。」


「なんとかなるとは思ってますけど、なりそうになかったらまた相談しにきます。」


「ふふ、そうしてくれ。まあ外にいるドワーフ達を見れば大丈夫そうだけどな。」


 ニカっとギルド長は安心したような顔で笑っていた。友達はできていない?と思うけどいい人たちには出会えてると心底思う。一応直接依頼クエストはこれでクリアになった。


 さて、森に帰りながら注意事項を孤児たちに伝えなければならない。なんせ森の俺の住処には、変わった存在が多いから・・・


「先に皆に注意しとく。今から向かう森の俺の家には、俺の使い魔でもある魔物や妖精なんかもいる。特に魔物は、巨人族なので見た目はこわいかもしれないけど、優しいやつだから怖がらなくていい。それと、やったら駄目な事を先に言っておく。働かない、勉強しない、暴力を振るう、悪口をはく、こういった行動をする子は即町に帰ってもらう。わかったか?」


 孤児たちはこくこくとうなずいている。マリーやケビンよりも小さい子には、セーラがかみくだいて説明してくれているようだ。


 あらかじめ伝えてあったのだが、森の家前に残っていた皆が集まって出迎えてくれた。俺の家族になったエリス、ロイ、コニー、マリーとケビン。妖精のミツコ、1/8ミノタウロスのニコ、エンシェントサイクロプスのキュクロ、アルラウネのラム。グレイウルフのハナコはいないまま(本当にどこにいったんだろう。死んでなければいいんだけど。。。)目の見えないセーラは特に顔色を変えてなかったが、注意を受けていたとはいえ孤児たちは少しびびりぎみだ。


「先生、おかえり~」


 エリス達が声をかけてくる。ここで、お互いに全員の自己紹介をした。セーラの名前はすぐに覚えたけど

他の25人すぐには覚えられない。実はドワーフ達もうろ覚えだったりする(内緒)、後で名簿作らないとな。自己紹介が終わった最後に孤児の一人が遠慮がちに聞いてきた。


「アルさんって名前と先生って名前と二つあるの?」


「俺の名前はアルフレット、先生っていうのは何かを教える人のことだよ。お前たちは明日から教えてもらう側で「生徒」になる。俺の職業は教師なんだけど、教師の別の呼び方が先生かな。アル先生か、先生って呼んだらいいぞ。」


エレクスの町には、学校と呼べるものは無いらしい。字の読み書きなんかは親が子に教えるようだ。もっと大きな町では貴族だけが通う学校もあるらしいけど。そんなことだから、教師や先生と言われてもぴんとこないのはあたりまえかもしれない。しかも不人気ジョブらしいからな。。。


 自己紹介も終わり、エリス達があらかじめ用意してくれていたごはんを運んでくる。野菜と干し肉を入れたスープにオートミールだ。森での食事はあんまりバリエーションは無い。これに卵が合わさったりヤギミルクがついたり、たまにパスタを作ったりくらいだ。今後はパンも焼ける釜も欲しいとこだな。作り方は町で教わろう。あやふやな知識チートは未だあまり役にたってない(笑)。


食べ始める前に注意事項を増やしていく。家族やドワーフ達にも徹底させていることだ。ある意味これこそ知識チートと言ってもいいかもしれない。


「食べる前に守ってほしい事を言っておく、外から帰った後家に入る前や食事の前には必ず手を綺麗に洗うこと。水はいくら使っても構わない。飲み水も手洗い用の水も俺が生活魔法で毎日作るから気にしなくていい。川の水をそのまま飲むのもよほどの事が無い限りなしだ。」


話ながら、複数の水桶に大量の水を生み出して見せる。孤児たちもびっくりした目で見ていた。ふふふ敬うがいい。チートと言っても現代で言う衛生概念だ。幼稚園で学ぶような内容ではあるんだけど、水が貴重であることや、『菌』の存在を知らないであろうこの世界では知られていない概念だ。汚れていれば洗う程度だろう。実際亡くなったじいさんも手洗いはあまりしていなかったので、説得するのに骨が折れた。今は俺がこの集落の責任者なので言うことは聞かせやすい。理由を知らなくてもとりあえずは守ってくれればいいのである。


「手も洗い終わったし食べようか。」「「「はい!!」」」


 孤児たちは、涙を流しながらご飯を食べているものもいた。干し肉とはいえ、お肉を食べることができる機会がほとんどなかったらしい。やせ細った体にいきなりたくさんの量を体に入れるのは、体に悪そうだったのでほどほどの量にしておく。ゆっくりと身体の肉を付けていってくれればいい。


 皆がご飯を食べ終わりほっとしたあと、荷物を持って孤児たちの住む場所へ案内する。1日で建てただけあって何の機能もないただの少し大きめな小屋であるんだが、新築でありとてもきれいである。ドワーフ達の技術の高さには驚かされる。


「さあ、ここがお前たちの新しい家だ。トイレはしばらく俺の家のを使ってくれ。この家を建ててくれたのは、ドワーフのみなさんだ、ちゃんとお礼を言っとけよ。」


「ありがとう おじちゃんたち!!」「ありがとう!!」「ありがとう!!」


無邪気なありがとうにドワーフ達の目もほころぶ。


「さあ、寝藁と荷物を運ぼうか。自分たちの家だからこれからは自分たちで掃除して大事に使うんだぞ。」


「「「はい、先生!!」」」


ごはんも食べて、おびえることも減って目に力がもどってきている。すぐに元気になってくれそうだ。




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