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第三の訳あり アルラウネ

「ふふふふ。今回紹介する訳アリはこの子よ!!」


 やっぱ訳アリなのね・・・得意げに紹介されたのは、予想の斜め上だった。鉢植えがそこにあった。人型の女性のような植物が生えている。だけど枯れっかれに見えるけど。


「えーと、これは・・・?アルラウネ・・・?」


 ってやつだよね。


「博識ね。そうよ。この子はアルラウネ。あなたにしかこの子は頼めないと思って。」


「どういうことでしょうか?」


 枯れてるように見えることといい、何かしら問題はあるんだろう。だが俺しかとは?


「えっ?いつも訳アリの子の面倒見てくれるから。」


 そんだけ?俺の存在っていったい・・・


「あの申し訳ないんですけど、今日は草食の家畜を買いに来たので、、、この子はちょっと。。。」


「えーわざわざ君が来るまでおいといたのにー!!」


 頼んでない。俺一切頼んでない。


「と言われましても・・・」


「まあまあ、説明だけでも聞いてよ。この子はね。正真正銘のアルラウネなの。」


 偽物のアルラウネがいるんでしょうか・・・


「それでね。知ってると思うけど。普通のアルラウネはかなり世話が大変なんだけど、その代わり持ち主に色々な知恵をさずけてくれるとされているんだけど。」


 知るわけがない。常識なのソレ?色々な知恵か、便利そうではある。どういった知恵かわからんけど。


「この子はね、そういった世話がまったくいらないの。でもね、世話の代わりに毎日魔力を与えないとだめなのよね。でも普通の人がこの子に魔力を与えるとなると結構疲れるというかかなり疲れちゃって、もう大変なの。で、今この状態。」


 で枯れてるのね。


「本当にこのタイミングでここに来てくれてるのは、奇跡といって過言ではないわね。来週には多分この子枯れ死んでたと思うから。私魔力ほとんど無いからはなから与えてないからね。この子買い取ったのでは無くて処分頼まれたんだけど、やっぱ死なせるのはねえ・・・」


 今仕入れ値0銅貨を公言したわけだが、一体俺にいくらで売るのだろうか・・・。


「というか、俺が魔力与えることが可能かどうかなんて知ってたんですか?それと、世話は魔力だけでいいんですか?あと、危険な事とかないんですか?」


「あなたのじいさんがこっそり教えてくれたわよ。アルは魔法が得意かもしれんってね。何で教えてくれたのかはわからないけど。孫自慢かもね。あと、餌の話だけど水と魔力だけでいいらしいわよ。私は枯れてるとこしか見たことないけど。危なさは・・・そうね。引っこ抜かなければ大丈夫じゃないかしら。マンドレイク系の魔物は引っこ抜くとき危険な声出すというし。」


 じいさん・・・まあいい。で、マンドレイクの話は、前世のファンタジーと同じなのね。ん~どうしようかな~メリット無い気がするんだけど。


「この子ね、引き取ってくれたら家畜の値段おまけしとくわよ。」


 え?なんで


「なんでって顔してるわね。私ね、私にかかわった動物も魔物も不幸になってほしくないの・・・」


 あんたええ人やで。ほんまええ人やでえ。


「わかりました。引き取ります。で、家畜なんですけど・・・」


10金貨の予算。300m四方の牧場地で草刈りの代わりに家畜を飼いたい事をぺトラさんに伝えた。


「かなり広いわね。ちなみに頭数多くなったら草刈りの手間は省けるけど、動物の世話は増えるわよ。世話する人はいるのよね?」


 あ・・・そうえいば。ゆっくり子ども達の顔を振りかえる。エリスはやれやれ顔、ロイは無表情、コニーとマリーはまかせろ顔、ケビンはよくわからない。ライムントは顔をそむけた。いやそもそもライムントは家族枠じゃなかった。


「う~ん、その顔を見ると働き手は少なそうね。う~ん・・・頭数少なくても食べる量の多い家畜。あ、そうだ。ちょっと連れてくる。」


 俺は顔で会話ができるようだ。ズズーン。ズズーン。しばらく待ってると地響きを伴いながら1匹の家畜?が連れてこられた。


「マーダーシープよ。」


 鬼でかい。超でかい。象よりでかい。トラックくらいでかい。そして名前がマーダー 殺し屋かよ!?


「この子めっちゃ草食べるわよ。町の中だと維持費かかって本当大変だったのよ。本当は20金貨くだらないんだけど、10金貨でいいわよ。あーあと羊毛もいっぱいとれるわね」


 ニカっと微笑むぺトラさん。草刈りには良さそうね。草刈りには・・・食料事情の改善やお金にはならないな。。。まあでも羊毛は使い道はありそうだな。これも出会いか。


「ありがとうございます。この子、買わせてもららいますね。」


「毎度あり~あー先に言っとくけど、二匹目は絶対仕入れないからね。」


 よほど維持費がかかったのだろうなあ。マーダーシープはでかいが非常に大人しく見える。怒ったら暴れるとかあるんだろうか。


「あのぺトラさん、この子なんでマーダーなんて物騒な名前ついてるんですか?非常に大人しそうに見えるんですけど。」


「それね。マーダーシープは非常に大人しいわよ。怒ることもないし。ただねこれだけ大きいでしょ、うっかり轢かれて死んじゃう人が多いのよ。うっかり踏まれても死ねる重さだからね。」


「なるほど。気を付けます・・・」


 話してる間に、コニーとマリーは興奮しっぱなしだ。でかいのが好きらしい。帰りはマーダーシープに乗って帰りたいそうだ。



 帰路につく。多少の想定外はあったものの概ねの予定は消化できた。本当に不本意だったのはライムントだろう。小物は売れたが、家具は売れなかった。がっくりしていた。次はがんばれよ・・・



 森に戻ったところでやることがある。アルラウネに魔力供給だ。水魔法を使いたっぷりの水を注いだ後、魔力を込めていく。しおれて枯れていたアルラウネが徐々に復活していく。つややかになってきた。マリーくらいの女の子が鉢植えから生えている。緑の髪で、頭に大きな花。まるで妖精のようだな。木の枝が手のようになり足のようになり。見た目はまんま人間だな。お、魔力の供給が終わったようだ。さすが俺、魔力供給全然余裕。お、動くぞ。両手を上にあげ伸びのようなポーズ。


「ふぁあ~。」


 お、しゃべった。結構かわいい声してるな。あ、目があった。


「よっこいせ。」


 鉢植えからおもむろに出てきた。出てきた!?えっやばいんじゃ。


「あーちょっとまって!!」


 なに?って顔で見つめてきた。てか普通に立ってるぞ。死を呼ぶ金切り声とかないのか・・・いや無くてよかった・・・


「ほんま死ぬかおもたで。兄ちゃんありがとな。助かったわ。」


 なんぞ!?天使のような幼子の顔からおっさんのセリフが飛び出たぞ。呆然とアルラウネを見つめていると


「何メンチきっとんねん。やんのか おう!?」


!!!!!


「うそやん。ほないびびらんでええやん。」


バンバンと足を叩かれた。えーこれ訳ありだったの性格じゃないの?


「ちょ外でよーや。久しぶりに娑婆の空気吸いたいんや。にいちゃんえーやろ?」


「えー・・・はい。どうぞ。」


 アルラウネが一人で出ていった。妙に疲れた。しばらくすると 楽しそうな黄色い悲鳴が聞こえてきた。


「先生~なんかいる~!!あれなにー?人増えたの~?」


 コニーが飛び込んできた。


「さっき植木鉢持って帰ったろ?そこに入ってた植物のアルラウネがさっきの。」


「すごーい!!」


 と言って走って出ていった。キャッキャと楽しげな声が聞こえてくる。子どもは受け入れるのがはえーな~いや一人中身おっさんだったなあ。遠いところをみつめながら麦茶をすする。


「あー麦茶うめえ。」


 アルラウネどうしよう。家でのポジションわかんねえ。しばらくすると4人とアルラウネが家に入ってきた。


「あー久しぶりの娑婆はええわあ。」


「そうやなあ。」


「ほんまやで~。」


 子ども達に感染している。


「えー、アルラウネと遊ぶのはいいんだけど、しゃべり方はマネしないこと。」


「えー。このしゃべりかた面白いのに~」


 エリス君まで。。。そういえばエリスもまだ9歳。前世で言えば小学校低学年。無理もない。


「だーめったらだーめ。」


「ぶーぶー」


「そういえば兄ちゃん、わてアルラウネやんか?特別な力あるねん知ってるか?」


「あーそういえばそうだったな。知識をあたえるだっけか?」


「知ってるんやったら話は早いな。ほな知識を与えるで。女をよろこば・」


 俺はアルラウネの口をふさいだ。こ、こいつやっぱ危ない。魔力供給とめねばならんかもしれん。子どもの前でなんちゅうこと話すつもりなんじゃい!!


「先生なんでとめるの~?」


 純粋な目が痛い。


「んがんが、兄ちゃん冗談やん。かわいい冗談やん。」


「次やったら水に沈めるか、金輪際魔力やらん。」


「申し訳ありませんでした。少し調子に乗りすぎてしまったようです。お兄様お許しください。」


 幼女の姿でおびえた目で謝ってくる。これはこれでこっちが悪物みたいじゃないか。


「普通でいいからまじめにやれよ。」


「へへ。じゃあいきまっせ。っていうか、何か知りたいことないんでっか?」


 知りたいことか。う~ん・・・あそうだ。


「この森に大蜘蛛って魔物がいるかわかるか?」


「いや兄ちゃん、そんなん わて知ってるわけないやん。今日ここにきたばっかやで。」


 ニシシと笑いながらそんなことをぬかしおる。なんで聞いたんじゃあああああ


「じゃあ何がわかるんだよ!?何で聞いたんだよ!?」


「兄ちゃんそないおこらんでもええやん。ちょっとしたおちゃめやん。冗談やん。えへへ。」


 えへへはかわいいな。そうじゃない。そういうことじゃない。


「大蜘蛛はおるみたいやで。結構森の奥の方かな。あっちの方向。」


 指指す方向は、向かってた方向から15度ほどずれた先。概ね方向は正解だったらしい。


「そうなのか。教えてくれてありがとう。」


「お礼なんてええで、わてらの仲やん。あー先いうとくで、この能力一回使ったら三か月は使えれへんねん。燃費悪いねん。えへへ。」


ほんまに燃費わるいやん。で わてらの仲ってどういうことですやん?・・・おれもつられてるやん。


「あー久しぶりに誰かと会話できて楽しかったわ。もう思い残すことはない。」


おい、どういうことだ。おい!?


「兄さんほんまにありがとうやで。」


 といっておもむろに立ち上がって家をでようとする。


「ちょ、まてよ。」


「これ以上はなすと余計つらくなるさかいに。簡便な。」


「アルラウネ。。。お前・・・」


 バタンとドアをしめ出ていった。追わないでほしいってことだろう。空気の読める俺は、泣きそうになってる子ども達をかかえて寝ることにした。変わった奴だったけど、、、さみしいな。。。少し涙が出た。


 翌朝 子ども達が起きる前に俺は一人外にでてみた。果物の木の横でアルラウネは生えていた。近づいてみると


「あ、兄さんおはよう。」


 と言いつつ、ずぼっと土からはい出てきて家に入っていった。俺は呆然とその姿を見守った・・・え?


こ、こいつ・・・!!涙を返せ。


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