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ドワーフ来訪と秘密の鉱石

 ドワーフの一団が森に来たのは、三か月たったころだった。まさか20人も来るとは思わなかった。すっげーいかつい連中だった。髭もやたら長い。ガダフさんよりもかなり年上のように見える。全員が。。。


 ガダフさんに案内された一団がキュクロの元に向かう。キュクロの金床を見たドワーフ20人が一様にワナワナとしている。我に帰ったように一人が手荷物から何かを取りだしキュクロの金床に置いた。何かの鉱物に見えるが。。。歪な形だな、掘りだしたまんまに見える。あれは?


「ガダフ、サイクロプスは鍛冶魔法を使えるようになったのか?」


 一番髭の長いドワーフがガダフさんに尋ねる。


「はっ、長老。未熟ではありますが鉱石に鍛冶魔法を使ってインゴットもどきにはできるようになっております。さぁキュクロやってみろ。」


 !?ガダフさんのしゃべり方がおかしい。そしてあの人が長老か、髭が長いだけあるぜ。体育座りして部屋の隅っこに座っていたキュクロがやってきて金床に触れるとぼんやりと金床が光る。そして握ったハンマーで鉱石をたたきつけると歪な鉱石が光を帯び板のように形を変えた。その瞬間、鍛冶小屋が震えた。


「フォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「フォオオオオオオオオオオオオオ!!」


「フォオオオオオオオオオオオ!!」


 20人+1ガダフさんがガッツポーズの姿勢で叫び、震え、雄たけびをあげ、泣いていた。い、、意味がわからん。どうなってんのこれ!?何がなんだか・・・


「見つけた みつけたぞおおおおおおおおぽおおお」


「うぉおおおおおおおおおおおおお」


 え、続くのこれ。キュクロもびっくりして隅っこ体育座りにもどってるじゃないか。ライムントは逃げたな。あいつ。。。俺も逃げたい。



 その後、ドワーフ達は抱き合ったり、はねまくったり、歌いだしたり興奮がおさまるまで1時間かかった。途中から俺は、キュクロの横で体育座りをしてた。早く説明してくれ・・・


「この鉱石はな。オリハルコンという。伝説に残る武器や古代の遺跡や迷宮から出る武器に使われていたりする素材じゃ。鉱山でも稀に見つかることもある。遥か昔 千年よりももっと前儂らの祖先は、巨人よりオリハルコンを扱う術を教わり特殊な金床でもって加工していたと伝承では残っておった。じゃが、巨人が去り幾度の戦争があり金床も術も失われた。それが約千年前とされておる。この千年、人もドワーフも誰も加工することができなんだ。じゃが、じゃが 今日・・・ううう。」


 今度は全員で泣きだした。まあ、そおっとしとこう。泣きながら話していたがオリハルコンを加工することがドワーフの悲願の一つでありその手がかりがやっとみつかったと。まあ俺もいきなりオリハルコンなるファンタジーではいつも最高峰的な素材の名前が出て来てびっくりしているけれども。

 落ち着いたところで長老が、俺に話しかけてきた。


「アルフレット君といったか。無理を言って申し訳ないが、儂らドワーフをこの森に住まわせてくれんか?それとこの金床を調べさせてくれんか?頼む。」


「はい。ただし、俺たちの安全は最優先でお願いします。」


「わかっておる。そのキュクロと言ったかサイクロプスにも絶対に危害が及ばぬようにする。」


 断る理由もない。オリハルコン(多分すごいものだろう)が加工できるようになれば人にとってもドワーフにとっても、もちろん俺にとっても素晴らしい恩恵になるだろう。


 ドワーフ一向は、はじめからそのつもりだったかのように、森で住む道具もろもろを準備していた。皆で工房を作り近くに寝る場所を作った。もちろん俺たちも手伝った。かくして俺たちの森に20名の新しい仲間が増えた。



「そい!!そーい!!」ガツンガツン


「そいそいそーい!!そいそーい」ガツンガツン


 ドワーフの掛け声と鍛冶の音が森に木霊する。金床の研究ももちろん行うが、普通の剣や鎧も作っていた。習慣だそうな。ドワーフが森に来たことによって思わぬ俺への収穫があった。ドワーフ達は色んな武器を作りその扱いにも長けていた。特に得意な武器は斧である。ドワーフは大斧、俺は手斧、違いはあるものの空いた時間に稽古をつけてくれるようになった。


「ほれほれ、きちんと防御せんかい」


「斧の全体をつかうんじゃ」


「おお、そのスマッシュはなかなか良いの」


「一撃で止まるな、二撃三撃とつなげるんじゃ。」


 今までほぼ我流だったから、誰かに教わるのは新鮮だ。にしてもドワーフ達は強かった。技もすごいが力も強い。森にいる間は強力な守り手になってくれるだろう。



 気のいいドワーフ達に、キュクロもすっかりなつきしゃべることも多くなりどことなくぎこちなかったしゃべりかたもどんどん滑らかになっていった。一人称「おで」は結局そのままだったが。ドワーフ達にまじりせっせと鍛冶魔法や普通の鍛冶などを覚えていってる。楽しそうにハンマーを振るう姿を見て俺も嬉しい限りだ。


 ライムントの家も完成し、次にライムントは家具作りを始めたようだ。いいものを作って売りたいと意気込んでいた。子ども達の勉強は、四則演算や文字の読み書きは皆ができるようになったので、今買い物の仕方とかお店の仕組みだとか、社会と算数を合わせたような事を教えている。エリスには簡単な簿記も教え始めた。今からどのような成長をするかわからないが覚えておいて損はないだろう。エリスの闇魔法に関してはぼちぼちといったところか。闇の玉に眠りの効果を移せるようにはなってきたが、玉を飛ばす速度や生成速度は遅く戦闘で使うには心もとない。魔力量に関しては順調に伸びているようではあるが。ロイの槍術は、ドワーフ達が交代で教えてくれている。まずまずさまになってきたように思う。この前はドワーフ5人に連れられてホーンラビットを狩ってきたと、嬉しそうに報告していた。


 で、俺はというとドワーフ達が増えたことにより畑を増やすために伐採と開墾を行っていた。あいかわらずである。場所は、村から奥へ続く方角。大蜘蛛を探して伐採していた方角だ。前々からの伐採もあってそれなりの道もできている。だいたい1kmってところだろうか。その道沿いに畑を起こそうとしている。川も近くにあるので水も引きやすい事だしね。ドワーフ達は蓄えもあるし食料は買うから気にしなくていいと言っていたが、備えあれば憂いなしだろう。午後は子ども達の勉強にあてているので、午前に手伝える人は手伝ってもらいつつ伐採していった。木を切ることに関しては結構自信があったのだけれどもドワーフ達には全然及ばなかった。いつも木を切り、切り株や根は水魔法で掘り起こしながら伐採を行っていたのだが、今回は掘り起こしに関して新たな試みを増やしてみた。「水魔法を足で操作する」である。今でも一応できなくはなかったのだが、あまりナチュラルには行えない。はじめは裸足で土の上に立ち、足から「クリエイトウォーター」からの「水操作」である。靴をはいたまま自然に行えるようになれば足元から水球を放ち意表をつくこともできると思う。ただまあ足から水を出す感覚に慣れるのには時間はかかったが。なんか気持ち悪いのである。木こりに関してはドワーフ達には完敗であったが、水魔法に関しては驚かれた。何せ結構な量の水量を操作しつつ伐採時間の始めから終わりまで常時展開だったから。初級魔法や生活魔法の消費魔力は一般的には少ないとはされているものの異常な魔力量だと言われた。がんばって伸ばした甲斐もあるものだ。それと伐採時の魔物襲撃であるが、キュクロが参加しない時には襲ってくることもあった。どうやらキュクロバリアー(仮称)もそこまで広範囲ではないようだ。といっても1か月に数度の事であり、ワイルドボアは食料にトレントはライムントの家具材料に回された。



 そんなことを繰り返しているうちに、また一つ年を重ねた。俺が14歳、エリスが9歳、ロイが8歳、コニーが7歳、マリーとケビンは5歳。マリーとケビンは5歳にして四則演算と読み書きをマスターしたことになる。これは先生の教え方が良いということにしておこう。ニヤリ。年越し時にはドワーフ達は酒を飲みに飲んだ。びっくりするほど飲んだ。この世界のドワーフ達も例にもれず酒好きのようだ。俺もつきあって飲みはじめてすぐに記憶が飛んだ。なんという強い酒を飲んでいるのか。。。前世の俺は酒があまり好きでなかったけど、今生でもあまり好きじゃないようだ。麦茶の方がうまい。あー麦茶が飲みたくなってきた。・・・って、麦はあるぞ。いつも食べてるんだから。お茶作れるんじゃね?早速お茶を作ってみることにする。香ばしさが必要だったと思うのでとりあえず焼いてみた。火を入れ始めてすぐにいい匂いがしてきた。そしてできた粒に水を加え煮立てていく。10分ほどで火を止め飲んでみた。


「麦茶だこれ」


 初回でできた。こんな簡単にできるんだったらさっさとやれば良かった。前世で飲んでた麦茶とは味は違う気がするものの麦茶といって差支えがない。小さな幸せ発見である。いっぱい作って冷やして飲もう。子ども達やドワーフ達にも飲んでもらったが、子ども達は蜂蜜水や果実水の方が良いと言いドワーフはエールの方が良いと言っていた。ふっ独り占めだぜ。


 年が明けて3か月もたつころ森の奥へ続く道の左側(川に近い方)に300m正方形ほどの畑予定地が完成した。柵と堀は今からだ。にしてもでっかく作りすぎた。ドワーフ達も呆れていた。水魔法の訓練に熱中しすぎたのも理由の一つだと思う。今は足で地面の水を操作しつつ斧を振る練習中だ。しかしこの広さだと子ども達では世話できる大きさではない。大きめの石や切り株は取り除いたけれど、草はどんどん伸びてくるしほっとけばまた森に返ってしまう。ロッキーやニコでは食べきれないだろう。・・・よし家畜を増やす事にしよう。道を挟んで反対側に同じだけの牧場予定地を作り、それまではこっちを牧場にしよう。家畜の糞なんかも後から畑にすることで肥料になるかもしれない。畑は後回しにしよう。その考えをドワーフ達にするとさらに呆れられたが、「仕方ないのう手伝ってやるわい」と言っていた。


 ちなみにドワーフ達が来てからそこそこになるが、金床の研究は進んでいない。複雑すぎて金床の魔導回路の解析が進んでいないと言う。ドワーフ達が使っている鍛冶魔法の金床の作り方は何度も何度も作っているので問題ないのだが、本来魔道回路や魔道具の分野は得意な方ではないらしい。模倣するにしても魔石はともかく俺が持っている鎖のように魔道具に魔法を重ね掛けできる高レベルの魔導士やら、魔法技師、エンチャンターと呼ばれる特別なスキルを持った者が必要になるのではとの考察らしい。ただ、キュクロの存在や金床の存在は、事が大きすぎてあまり広まるといらぬ災いを招く恐れもあって、単純に人を集めるという手段も取りずらいのである。魔力ならいくらでも提供できるのだが、技術や知識は俺にはないからなあ・・・信頼のおける人を見つけるしかないよなあ。

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