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巨人の金床

 キュクロの鍛冶道具は、サイズ等綿密にはかったうえでライムントと一緒にガダフさんの所に相談に行った。ライムントが言うには、鍛冶魔法で使用する金床もハンマーも特殊な物らしくドワーフの集落にしか無いらしいが。


「あー無理じゃ。あれは、ドワーフの里で認められた者にしか与えられん。しかも魔道具のようなものじゃ。さっき聞いたサイズで作るのなら結構な金額になるぞ。与えられるといっても権利だけの話で、買いとらねばならん。30金貨以上になるんじゃないかの。」



 30金貨!?はい。どっちもむーーーりーーー。



 家に帰ってライムントの金床の前に座り、二人でため息をつく。その横でキュクロが体育座りしている。キュクロの住処ができるまでは、ライムントの簡易鍛冶場がキュクロの住処だ。



「すいません。普通に親からもらったものでそういうものだとは知りませんでした。」


 まあ ドワーフの里の頭領の息子なら普通にもらうよね。


「せっかく鍛冶魔法の才脳あるのにもったいないけど、仕方ないかあ。」


 二回目のため息をついたとき、ぼそっとキュクロがつぶやく。


「コデトオナジモノ ドウクツニアッタ。」


 !?まじで?いや、もともと才脳があるってことは、キュクロの親は鍛冶魔法を使っていたってこともありえるな。ドワーフに鍛冶魔法が使える者が多いのは遺伝だろうしな。よし回収しよう!!そうしよう。


「キュクロ!!その洞窟まで案内できるか!?」


「ワカル タブン」


 ロッキー、ハナコ、ニコ、キュクロを連れて洞窟を探す事にした。果たしてキュクロの親が使っていた金床を荷馬車で運べるのか疑問だったが一応用意した。推定30金貨価値の金床を探しに行くのだ。俺はウッキウキで皆と森を探索した。


・・・それから1週間たった。洞窟はまだ見つかっていない。結論から言うとキュクロは場所を覚えていなかった。おいぃいいいいいい。確かキュクロの親が討ち取られて、キュクロは次の日には森の中の我が家にたどりついたはずだ。1週間もかかるはずないはずだ。


「キュクロ~本当に覚えてるのか~?」


「・・・」


 一回お家に帰った。一週間野宿しながら探しまわって気づいたのだが、獣と魔物はキュクロを見て逃げていく。初めてその光景を見た時は驚いた。えー逃げるの!?って。サイクロプス恐るべし。襲われない事は本当はいい事何だろうけど、食べ物が捕りづらい。キュクロは襲ってくる獣を撃退はできそうだが、追っかけて倒すのは難しそうだった。


 家に帰って、ミツコにキュクロが走って来た方角を聞くとキュクロが進んだ方角と反対方向だった。はじめからミツコに聞けば良かった。とほほ。


 散策を再開して丸1日ほど森を歩いた頃、キュクロが辺りをしきりに気にし始めた。


「コノ アタリ。アソコ!!」


 キュクロが指さしたところは、ただの岩にしか見えなかったが、近づいてみると岩が二重に並んでおり最初の岩の後ろに洞窟があった。入り口は遠目からはまったく見えないだろう。ドッタドッタとキュクロは嬉しそうに洞窟の中へと駆けだした。俺も後から歩いて追いかける。先に入ったキュクロは何かを手に持ったまま泣いていた。毛皮?いや親が着ていたであろう服だろうか。魔物にも家族があってそれを思う気持ちがある、、、当たり前のようで今まで気づいてこなかったことだ。話す事ができるしエンシェントサイクロプスは、普通の魔物とは違うのかもしれないが。


 キュクロが落ち着いたように見えた頃、声をかけた。


「大丈夫か?キュクロ?」


「ウン。」


「そうか、、、で、ライムントの金床と同じようなのてどこだ?」


 辺りを見回してもそれらしいものが見えない。


「コデ。オデノ イス」


 そういってイス?から動物の毛皮をよけると下から金床が姿を現した。粗末に扱われていたようだが、金床を見て息を飲む。いわゆるお宝の一種だわ これ。台座部分は精巧な飾りが掘られており、魔石もふんだんに使用されているのがわかる。しかも俺が今まで手にしたことがないような上等な魔石だ。だがでかいな。ライムントの金床の5倍はある。試しに持ちあげようとしてみたがびくともしない。


「ふんぬうううううううう」


 何度やってもだめだ。


「キュクロ、これ動かせるのか?」


「ウン。」


 返事をしたキュクロが金床に手を振れると金床がうっすら光った。そしてひょいっと金床を持ちあげて見せた。全然重そうじゃない。


「一回降ろしてみて」


 キュクロが降ろすとズゥウンって音がした。重さはそのままっぽい。もう一回持ち上げようとしたがやはりだめ。特殊な魔法がかかっていているのかもしれない。もしくはキュクロが見た目以上の力持ちかだが。なにはともあれ簡単に運びだせるなら問題はないだろう。今度ガダフさんに見てもらえれば少しは謎が解けるかもしれない。


「キュクロ他に運びたいものがあったら持って帰ろうか。荷馬車に積もう。」


 キュクロは、色々なものを積めた。解体に使っていたであろうナイフ類や、自分や親が着ていたであろう毛皮の服、食器類や鍋などもあった。荷馬車がいっぱいになったぐらいで満足したようだ。


 ふと、下に転がっていた物に目が行く。半分地面に埋まっているように見えるが。。。


「これはいいのか?キュクロ、この埋まってるの」


「ワスレテタ。コデ フムト キモチイイ。モッテイク」


 足踏みマッサージ的なものだったのかな。キュクロがおもむろに足踏み台を引き抜くと、でできたのはでっかいハンマーだった。しかも金床と同じように握り部分には魔石がふんだんに使ってある。おいおい、これ鍛冶で使うハンマーじゃねえのか?他にも同じようなのないだろうな。キュクロにまかせると価値があるものまで放置しそうなので、さらに手当たり次第に周りにあったものを荷馬車に山なりになるまで詰め込んだ。もうほとんど洞窟の中には何もないが、念の為丸太を集めて入り口を見えなくしといた。キュクロの親は6Mはあるようなので、洞窟の入り口もまたでかく、ふさぐのに1日野宿するはめになったが。。。


 家に帰って、ライムントに金床とハンマーを見せてみた。


「先生、これ、、、すごいってもんじゃないですよ・・・おじさんに見てもらった方がいいと思います。僕くらいではすごいってことしかわかりません。」


 だよねえ。。。どうみてもすごい一品だよねえ。。。キュクロはよくわかってないようで、うれしそうに荷馬車から毛皮服を取りだして簡易鍛冶場に並べている。キュクロの着ている毛皮は原始的ではあるが、きちんと洗っているのか匂いはない。似合っちゃいるけどきちんとズボンくらいは作ってあげたいと思う。今度エリスに頼んでみよう。


 早速ライムントを連れてガダフさんの所に再度向かう。


「今度はなんじゃ?」


「おじさん、すごい金床がみつかったんだ!!ちょっと見に来てほしんだ。」


「なんじゃなんじゃ、お前、鍛冶はやめたんじゃないのか?」


「僕のじゃなくって、実は  」


ライムントといっしょにキュクロの事も交えて説明した。


「ふぅむ。なるほどのう。サイクロプスが持っていた金床か。。。う~ん、里の記録に何かあるやもしれんが儂も知らんなあ。じゃが鍛冶を辞めたお前がそこまで言うなら行ってやるわい。仕方ないのう。」


 何とかガダフさんを森の家に連れていくことができた。ガダフさんは森までの道があまりに整備されているのに驚いていた。苦労して作ったからなあ。


「斧の坊主が森に住んでおるのは聞いていたが、この道はたまげたの。」


 もっと褒めたまえ。はっはっは。行き先はライムントの簡易鍛冶場だったが俺の家の堀なども見てびっくりしていた。「お前さんすごいやつじゃな」と頭をわしわしとされた。本当褒められるのは気分がいいぜ。


 鍛冶場の中に入ったガダフさんは、体育座りのキュクロを見て一瞬ビクっとしたが、すぐに持ち直し案内されるままキュクロの金床とハンマーを見た。なんか震えてるな。


「な、、なんじゃこりゃあ!!おおおうううう!!なんじゃこりゃああ」


うお、なんてテンション。。。こっちもびびるわ。


「えと、ガダフさん で この金床は?」


「わからん。わからんが確かにライムントの言う通りすごいもんじゃ。儂らが使っている金床には、鍛冶魔法が使えるだけの魔法効果が付与されておるが、この台座は驚くほどの数の魔法効果が付与されておる。一度ドワーフの里に持ち寄って調べてみたいくらいじゃ。」


「この金床、キュクロは簡単に持ちあげるんですけど、俺が持とうとしてもびくともしないんですよ。さっき荷馬車引いてた力持ちのロバでも動きませんでした。」


「ふぅうむ。特定の者のみが使えるような魔法効果か何かがあるのやもしれん。そういう装備もあるにはあるんじゃ。一定の魔力がないと使えんとかその血族しか使えんとかな。儂にも作れん。じゃが運ぶのは無理か。そうじゃここにドワーフの里の者を呼んでも良いか。もちろん迷惑はかからんようにする。」


 「げぇ、おやじこないよな・・・」と後ろでライムントがぼそっと言っていた。う~ん、ミツコとかキュクロの事を外に悪いように伝えなければかまわないといえばかまわないか。ガダフさんの知り合いなら悪い人では無いと思うしなあ。


「かまいませんけど、二つお願いが。キュクロは世間一般で言う魔物です。一応使い魔登録してますが。来る前にお伝えしましたが、親を人間に殺されてます。キュクロの事を外で悪いように言う人や攻撃してくる人はお断りです。あと、俺の家には妖精がいます。妖精に関してもキュクロと同じでお願いします。」


「妖精!?坊主の家は色々かわっとるの。じゃがまあその条件はわかっとる。きちんと言い聞かせもするし、性根の悪いやつもおらんわい。それとそうじゃな、そこのサイクロプスは鍛冶や鍛冶魔法の事はさっぱりわからんっていうておったの。ドワーフの里の者が来るまでわしがここで仕込んでやろう。」


 おお!!それはありがたい。ガダフさんがしばらく森で生活するための準備をするために荷馬車とともに町へ向かった。そういえば武器屋は大丈夫なのか?って聞いてみたら「金床の方が大事」って言ってた。本人がそういうならこっちはかまわないけども。。。鍛冶道具に生活用具、食料などを荷馬車に詰め込んで森へ戻る。買いこんだ食料はどうみても3月分以上あった。結構長い期間森に滞在する予定かな。ガダフさんは、キュクロといっしょに簡易鍛冶場で寝るそうだ。俺んちでもいいけどって言ったのだが、「弟子といっしょに寝るわい」と言ってた。あと横で聞いてたライムントがびくびくしていた。多分俺の家から出ていっしょに鍛冶場で寝ろって言われるんじゃないかと考えてるんじゃないかと思う。ライムントの家も結構形になってきてるし、最近手伝ってなかったから家作り手伝うかな。


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