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闇魔法購入と危険な香り

 さらに日数が過ぎ、伐採は順調だが依然大蜘蛛に出会う気配はない。斧の使い方なども意識はしているがすぐに大きな変化があるわけもなく、一進一退を繰り返しているといったところだろうか。ライムントの家の方も、基礎らしいものがはっきりしてきた。作業が早いか遅いかは正直わからない。前世も今世も家の知識など無いので『あ~進んできたなあ』といった感想だけである。


 魔物由来の素材が結構たまってきたので町に行くことにした。ライムントも子供たちも行きたいと言ったので全員である。お留守番はミツコとニコである。ミツコは相変わらず寝ているかニコやロッキーと戯れている。戯れにミツコから指導を受けたニコは元々の資質もあるのだろうけど、なんていうかさらに筋肉の塊になっていた。俺が戦って勝てる気がしない…斧で切りつけたら筋肉ではじき返しそうだ。残念ながら手は牛のままなので武器は持てないが、金棒や斧を握れればミノタウロスそのものだったであろう。まあ武器を持たなくても十分迫力はあるのだが・・・


 たっぷりの魔物素材を積み込み町へ向かう。エリスやロイはしっかりしてきたけどもまだまだ魔物相手には心もとない。細心の注意を払っての行群だ。だがビッグラットぐらいならば、安全を確保したうえで遠くから矢を打つや、槍で攻撃してみるなどを試してみるのもいいかもしれない。しかし思い返してみると今世の俺はかなりワイルドだったな。結構小さいころから魔物相手に色々やってきた気がする。今の年齢でも前世では十分子どもであるが。


 あいにくなのか幸いなのか、行きは魔物とは出会わなかった。いつものように素材を先に売りに行く。以前よりも強い魔物素材なので金額に期待大である。せっかくなのでエリスに闇魔法でも買ってあげようかと考えている。生活魔法は練習しているみたいだが、いかんせん実戦的ではない。まだ戦うような年齢ではないとはいえ、せっかくの才能を眠らせるのは惜しい。初級しか才能の無い俺からすると少しうらやましい所だ。願わくば役に立つ魔法であって欲しい物だが・・・


 冒険者ギルドに素材を持ち込み精算する。ダンジョンで手に入れた魔石もいっしょに精算である。今回もなかなかの量になったので、裏側での精算だ。査定に少し時間がかかると言われたので買い物に行く事にした。食料や衣類や生活用品など必要なものを買いこむ。ダンジョンで稼いだお金(魔石以外を販売したお金)がまあまああったので査定を待たなくても問題なく買い物ができる。ライムントはガダフさんの所に行くと言って別行動になった。俺は皆を連れて魔法ギルドに向かう。


 魔法ギルドの受付で闇魔法の初級について聞いてみた。『闇の玉』2金貨:ダメージは低いが別の闇魔法の効果を載せてとばすことができる。『闇霧』2金貨:視界を奪う闇霧を作りだす。『陰縫い』1金貨:対象の影に干渉し行動を阻害する。『闇のベール』50銀貨:光を吸収する薄い膜を展開する。『闇操作』50銀貨:体に触れている闇魔法の効果を移動させることができる。以上だ。ギルド職員さんに伺うと闇の玉と闇霧を勧められた。確かに便利そうだが4金貨か・・・一気に吹っ飛ぶなあ。まあ、早いうちから練習してもらう事の方が大事だよな。結局二つとも買うことにした。買った後ギルドでレクチャーを受けたエリスだったけど、闇の玉、闇霧ともに効果は小さいながらも問題なく扱えたようだ。だが、闇の玉に別の効果を載せるというのがなかなか難しいようだった。確かに複雑そうだもんなあ。。。


 魔法ギルドを離れた俺たちはライムントを迎えにガダフ武器店に向かった。


「坊主、いつもライムントをすまんな。」


「いえ、こちらも助かってますから。」


挨拶をすませ、ライムントの顔を見ると何故か上機嫌だ。


「ライムントなにかいい事があったのか?」


「わかります?ふふ。親から手紙が届けられてまして、鍛冶屋にさせるのは諦めた。好きにしろってかいてあったんですよ。」


 ・・・何か放棄されたみたいな文章だけど本人が上機嫌なんだからまあいいか。


「そ、そうか。こっちの用事は済んだから冒険者ギルドによって帰ろうと思うんだけど、ライムントはもういいのか?」


「はい。大丈夫です。正直おじさんの顔見に来ただけなので。お金もまだないですし。」


 あ、ライムント金ないんだった。忘れてた。


 あえてそこには触れずに、冒険者ギルドにそそくさと向かった。さてさていくらになったかなと裏手に入るとさっきはいなかったギルド長がいた。しかも神妙な面だ。ん??と思いつつ挨拶しようとすると


「坊主、聞きたいことがある。森や町に向かう途中でサイクロプスに出会わなかったか?」


はい?サイクロプス?って一つ目の巨人みたいなやつ?名前からして出会っちゃだめな香りがプンプンなんですが・・・


「いえ、見てないですけど。。。多分ですけど強い魔物ですよね?今の俺が出会ったら死ぬような・・・」


「そうだな。魔物にも個体差はあるが一般的にはB級冒険者で何とかソロ撃破、C級がパーティで組んで倒すくらいの魔物だ。でだ、実は最近サイクロプス3匹を森付近で見つけたって報告があってな。腕に自信のある冒険者を引き連れて様子見に向かったんだ。確認してみるとそんなに大きいサイクロプスでは無かったんで討伐に変更。3匹のうち2匹は倒したが1匹逃がしてしまった。1匹は戦闘がはじまるやいなや一目散に森の奥ににげていったらしい。夜にさしかかっていたし、森の中を追いかけるとなると準備もいるってことで引き返したんだ。報告によると3匹はおそらく親子で逃げたのは子サイクロプスだろうって話だ。他の二匹の半分以下の大きさだったらしいからな。子どもだけでもって逃したんだろうな。」


 サイクロプスも親子があるんだな。。。って、じゃない、森の奥!?おいおい、家の方にきたらやばいじゃねえか!!


「って、討伐はいつ再開するんです?」


「いやそのな・・・子サイクロプスってことで脅威も下がったし、申し訳ないんだが俺もうっかりしてたが、森に住んでる坊主の存在をすっかりな、はは・・・すまん。坊主が買取依頼に来たってきいて思いだした。それに子サイクロプスは坊主ならどうにかこうにか倒せるくらいだと思うぞ。多分・・・」


 わすれてただとぅううううううううう!!多分だとおおおお


「まあまあそんなに怒るなよ。見たところ家族総出ぽいし、問題はなかったぽいしな。」


 よくねえ!!


「ちなみに子サイクロプスの大きさってどれくらいなんです?」


「確か2~3Mくらいだったかな。」


 家大丈夫か!?堀超えれるよな、その大きさだと。


「査定金はまたもらいに来ます。ちょっと家が心配なんですぐに帰ります。」


「わかった。坊主が住んでいるおおよその場所とサイクロプス発見の場所はかなり離れてるから、まず大丈夫だとは思うがな。」


 万が一ってこともあるじゃねえかあ!!ってことでそそくさと帰ることにした。帰りにまんぷく亭でごはんの予定だったのに、、、くっそ。


 急な帰還になり、ご飯も食べずに帰ることになったが皆から不満の声はあがらなかった。かなりまじめな顔して「すぐかえらなければならなくなった。ごはんは後だ」って言ったらはい とだけ返してきた。俺の雰囲気から緊迫したものを感じ取ったんだろう。できる限る急ぎで家路に向かう。行と同じで幸い魔物や獣に襲われることも無かった。後少しで家につくってところで急にハナコが吠えだした。ロッキーの足も止まる。・・・ああ嫌な予感って当たるんだよな。って思いつつ斧を握り締めロッキーから降りた。


 子サイクロプスなら俺でも勝てる(本当か!?)という情報をを鵜呑みにせず慎重に家に近づく。と、何か堀の前に倒れている。それと倒れているものの横に立ってるのはミツコとニコじゃないか。


「おかえりなさい先生。」


「ただいまミツコ。えとその倒れているのは?」


「近づいてきたから蹴っ飛ばしときましたわ。で、今しばりおえたところですわ。」


 !?・・・さすがミツコ。


「ンガンガ」


 って起きたな。どれどれ。倒れているものを観察する。でかい。3M近くありそうだ。目は一つ。うんサイクロプスぽいな。目から大粒の涙があふれ出してる。う、泣いてるのかこれ。


「ンガナンガナガガガア」


 何か言ってるけどわからん。サイクロプス語なぞ知らん。


「なあミツコ。しばってあるっていったけど紐切れたりしないよな?」


「結構きっちりしめましたし、無理だと思いますわよ。もちろん紐が切れたらまたのしますわよ。」


 と言って足を振り回して回し蹴りの形をとる。ビュンってすごい風圧が。あ、サイクロプスも泣き止んだ。まあ怖いよね・・・震えてるわ。それに右顔を蹴り飛ばされたのかえらく腫れ上がってるしな。これまともにしゃべれないだろ。何か急にかわいそうになってきたので顔を癒しの水で治してやった。最初はびくっとしたけど、痛みがひいていったのか大人しいものだった。しばらくすると綺麗に腫れは癒えた。


「さてと、どうすっかな、こいつ」


 と、サイクロプスの顔を見ながらつぶやくと


「ア、アディガト・・・ソレト コドサナイデ・・・」


 う?しゃべった!?人語いけんの!?サイクロプスって。まあでっかくて目が一つだけど形としてはヒューマン型だよね。


「人の言葉わかるのか?」


「グス・・スゴシワカル。オトサントオカサンニオシエデモラタ。」


やぱり親子だったのか。て、こいつ両親人間に殺されてるんだよな。俺は家を壊されたわけでもないし皆も無事だったから思うところはないのだが・・・泣いてたしなんかかわいそうになってるけど・・・


「なんでここにきたんだ?」


 とりあえず話を聞いてみるか。


「ナディモ シテナイノニ、イキナリニンゲンオソッテキタ・・・オトサントオカサンコドサレタ。オデ コワクテゴワクテ モリノナカ ズットニゲテキタ。ココマデギダラ イキナリケラレタ。グズ」


 ふうむ。何もしてないのにか。嘘か本当かわからんな。なんかまだ泣いてるけど。今まで特に意識もしてなかったけど、ダンジョン以外の魔物って産むって概念や家族ってあるんだな。当たり前といえば当たり前だけど。


「とりあえず、このまま放置だな。かわいそうだけど。明日ギルドで話をしてからどうするか考える。すまないけどミツコ、様子見といてくれないか。暴れたら危ないしな。」


「わかりましたわ。正直殺意や敵意を感じたら殺っちゃてましたけど、家が危ないので倒しただけですの。判断は先生にまかせますわ。」


 さらっと怖いこと言ってるな、この妖精さんは。まあ頼もしいけど・・・


 子サイクロプスはミツコに任せて、今日は寝ることにした。子サイクロプスには水だけ与えといた。体力がついて暴れられてもね・・・


 ふぅ。でも皆も家も無事で何よりだ。ギルド長は俺だったら多分勝てるって言ってたけど、3M近いあれがつっこんできたらはてさて・・・

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