町へ行こう
「お前もそろそろ町に行って見るか。神殿で見てもらわにゃならんしの。明日物を売るついでにいくかいの」
今までは、町まで連れていってくれなかったが、明日はいっしょに行けるらしい。売るものを準備し町に移動しながらじいさんから色んな話を聞いた。主に才能・スキル関連の話しである。
・5歳になったらジョブ神殿で生まれつきの才能を見てもらう。スキルもいっしょに見てもらえる。価格は1銀貨。貨幣は他に何種類かあり、10銅貨=1大銅貨、10大銅貨=1銀貨、10銀貨=1大銀貨、10大銀貨=1金貨らしい。
・基本的に魔法は、生まれ持った才能が無いと使えない。ただし魔力は大なり小なり皆が持っていて、その魔力を使って魔道具の起動は可能。魔力を回復するには身の回りにある魔素なるものを体に取り込む必要がある。休んでいるときの方が回復しやすい。魔物も体内に魔素をため込むことができそれが結晶化したものが魔石と呼ばれるものである。魔石を体内に蓄えた魔物は強くなり危なくなる。魔石は魔道具の材料やMPの代わりに使用できる。結構良い値で売れる。
・スキルは、生まれ持ったものもあるが、基本的には後天的に身につけることが可能。スキルにはレベルが存在する。経験をつめばスキルレベルは上がっていく。
・10歳になると、ジョブ神殿というところでジョブをさずけてもらうことが可能。
・5歳で才能を確認し10歳になるまで目標のジョブを目指して鍛える。
・ジョブを授かると恩恵を受けれる。例えば戦士ならば武器の扱いに補正がかかるほか、筋力があがり敵にダメージを与えやすくなる。また攻撃系のスキルを覚えやすいし熟練度も上がりやすい。そのジョブでしか使えないスキルや能力もある。ジョブを得た時にスキルを授かったり、レベル上昇によって新しいジョブスキルを覚えることが可能。ジョブスキルは自動で覚える。
・ジョブによっては取得に条件のあるものがある。またジョブごとに授かるための金額は変わる、恩恵の強いものは基本高い。難度の高いものは上級ジョブと呼ばれる。
・魔法は、魔法ギルドで魔道具スクロールを買って覚える。スキルや技はギルドでお金を払って教えてもらえるものある。が、必ずしも覚えれるわけでもない。
・ジョブレベルの上げ方は、ジョブごとに色々ある。職人系は物を作ることなどで、商人は物の売り買いなどでもあがる。どのジョブでも共通の方法は魔物を倒す事。パーティを組んで倒したとしても各々の貢献度によって経験値は得られる。
・ジョブの変更は可能であるが、少々値がはるのと変更前のジョブの恩恵は失われる。スキル・技・魔法は変更後も残るが補正がなくなることにより、威力や精度が落ちることがある。そのジョブでしか使えない技や魔法スキルもある。その場合転職すると使えなくなる。
などなど
森を2時間、平地を1時間ほど歩いたら町の入り口についた。町の名前はエレクス。それほど大きな町でもないがある程度の施設やギルドは存在するらしい。森の奥にある山から流れてきている川沿いにあり、石の壁で囲まれている。壁の周りには畑が広がっており、畑の周りには木の柵でおおわれているようだ。町の入り口では見張りの兵らしき人がいて身分証明を求められ、じいさんはカードサイズの金属の板を出した。なんでもジョブ神殿で買うことのできる身分証明書の魔道具で、レベルがあがると音が鳴って知らせてくれる機能付き。・・・魔道具って便利なのね。町の中に入って最初に驚いたのは、人以外の種族がたくさんいたこと。エルフやドワーフっぽい人、獣人や昆虫人ぽい人、一見魔物にしか見えないような人もいた。何割かは武器を携えてて色んな種族とあいまって異世界であることを再認識させられる。その光景に興奮しつつもジロジロとみては失礼かなと思いほどほどにしておく。絡むのはもっと大きくなってからかな・・・
「さてと 神殿に行く前に持ってきたものを売りに行くとするかの。馴染みの店があっての。そこでいつも買ってもらっとるんじゃわい。あっちじゃ」
そういうと、じいさんは大通りから少しはずれたところにある、雑貨屋っぽい店に入っていった。
「いらしゃい。お ひさしぶりだなカールじいさん」
「おうジェフ。久しぶりだな。魔石と毛皮と肉を持ってきた。買いとってくれ」
「あー結構持ってきたな。査定するからちょっと時間をくれ。」
「わかった。頼む。その間にわしはこいつを連れてジョブ神殿に行ってくる」
「!?カールじいさん、あんた天涯孤独じゃなかったっけか?孫なんていたか?」
「話してなかったがな、4年ほど前に盗賊に襲われて放置されてたこやつを森の近くで拾ってな。わしが面倒を見とる。ほれ アル挨拶をしろ。ジェフリー雑貨店の主じゃ。」
じいさんに促されて俺は挨拶をした。じいさん意外と話すのはいつ以来だったか・・・
「はじめまして。アルと申します。」
「えらく礼儀正しい坊主だな。本当に爺さんが面倒見とるのか?」
「うるさいわい、こやつはかしこくてな。挨拶や礼儀なんて教えた覚えが無いのにこの通りよ。まあまだ文字は読めんがな。あとわしと二人の時はここまで礼儀正しくないぞ。」
言葉は問題なく話せるようになったのだが、じいさんの家に文字がほぼなく、覚えることはできていない。職人や商人、冒険者になるにしても文字を読めるか読めないかでかなりの差がでる、というか仕事にならないらしい。ちなみに紙を作る技術はしっかりと確立されており、羊皮紙以外に植物紙も出回ってるらしい。技や魔法を覚える魔道スクロールも紙である。
「文字か、ちょうどいい。薬草辞典入荷してるが買ってくか?5銀貨でいいよ」
「しっかりしとるの。まあ査定次第かの。まあええ、神殿に行ってくるわい。」
今生ではじめてのお店なので、ゆっくりと見たかったが、俺に自由に使えるお金があるわけでもなく、当初の目的である神殿に向かうことになった。神殿は大通りに面したど真ん中に鎮座していた。神殿で簡単な受付を済ましお金を払った後(じいさんに感謝)奥まで進むと神官らしき人(神殿なので神官かなと)がいた。受付でじいさんが記載した書類に目を通しながら神官が話しかけてきた。
「はじめましてアル。私は神官のミリアーノです。今からあなたの生まれ持った才能や現在持っているスキルを調べます。初めての方には1銀貨もらっていますが、次回以降は受付の横にある水晶に今から作るスキルカードを掲げてもらえば5銅貨で確認できます。そうそう1金貨いただければ、自分だけがどこでもスキルを確認できる特殊カードも購入できます。他にも色々な種類のカードがありますので必要であれば帰りに受付でお願いします。」
言葉の後ろに俺の名前「アル」がつくとうさんくさい中国語みたいだな。とまったく関係ない事を思い浮かべていたら、神官が色々説明してくれた。半分セールスのようだった。後で爺さんから聞いたことだが、金額によって身分証明カードの内容が変わるらしく、勧めてきたのは一番たかいやつだそうだ。
「アル このカードに自分の血を少したらし、『リリース』と念じてみてください。魔力が少し流れます。」
言われたとおりにやってみると、カードが光だした。
「はい。これで大丈夫です。さて情報を読み取りますね。次回からは受付でお金を払えば、ここまで来なくても大丈夫ですが、初回のみ才とスキルの確認を私が行います。1銀貨には、カード代とでてきた情報の説明代も含まれておりますのでなんなりと質問してください。細かくお教えします。」
そういうと、神官は水晶にカードをかざした。すると水晶に何やらたくさん文字が浮かんできた。残念ながら俺は文字が読めないので何が書いてあるかわからなかったけど。
んー文字が読めないのは本当にもどかしい。
「はい。読み取れました。今から読み上げていきますね。一応初回に限り紙に書き写したものを後でお渡しします。才能は、魔法が『水魔法(初級)』でそれ以外の才は、『本の加護』??です。スキルは、5歳とは思えないほどの数がありますね。『接客 25』『計算 20』『教育 10』『指揮統率 10』『調理 3』『短剣 1』『解体 1』『採取 1』『農業 2』『畜産 1』『修理 1』『道具加工 1』『水生活魔法 23』・・・5歳で接客スキルや計算スキルが20超えてるなんて子は初めて見ました。。。。熟練の大人並みですよ。これ」
神官さんの言葉にじいさんは唖然としていた。俺も生前の知識がこんなスキルになるなんて思ってもみなかった。実家農家だったからそれ関係もあるなあ。ただよくわからない事も多い。ひとつづつ聞いてみることにした。
「神官様、質問よろしいでしょうか?」
「はい どうぞ」
「水魔法初級の才能ということですが、今から成長して中級?や上級になるのでしょうか?」
「いえ、才能はよほどの事がない限り変化しません。君は初級の水魔法と生活魔法しか使えないということです。」
うへ、まじかー大魔法使いにはほど遠いな。今まで使っていた魔法もレベルからすると生活魔法だけっぽいしなあ。どうにもチートからは程遠い模様。。。
「スキルの後の数字は、スキルレベルだと思うのですが、いくつが最高になるのでしょうか?」
「30が最高です。君の年齢でスキルレベル20越えが3つもあるのはあまり例がありません。もちろん後天的なスキルでは無く神の祝福のようなもので、生まれつきスキルレベルが高い人もいなくはありません。」
「なるほど。ちなみに水魔法の初級と生活魔法の違いについて教えてください。」
「生活魔法は、魔力と才能があれば誰でも生まれつき使うことができます。飲み水を生み出したり、水の玉で体や衣服を洗ったり、農作物に水をあげたりですね。初級の魔法は、魔法ギルドで魔法スクロールを購入して覚えます。私も全て知っているわけではありませんが、「癒しの水」「解毒の水」が1金貨以上。「水球」「水操作」がもう少し安かったかと。まれにダンジョンでもスクロールが見つかるそうですよ。」
あーダンジョンかー。この町の近くにあるって話だったけど、森の獣もまともに倒せない俺では無理だなあ。癒しの水とか使ってみてー(*´Д`)
「本の加護とありましたが、どういった才能なのでしょうか?」
「う~んすいません。実は私もはじめて見る才能でして。神様の名前や精霊の名前の加護は、結構あるのですが、『本』というのは・・・そのままの意味なら本から得られる知識が多くなるとか本と巡り合う確率があがるとかでしょうかね。推測ですが。」
色んな人の才能を見てきた神官が言うのだから、レアなスキルなんだろうな。。。おそらくファンタジー辞典様に転生してもらった結果の才能っぽいから、今から何かを得るためのものではないかもしれない。。。
「アル。君は多種多様なスキルを持っています。スキルから判断すると正直なんにでも慣れると思います。一番活かせるのは商売人関連。ついでシーフや狩人。水魔法の才能で魔法使いもいけます。ただ、初級魔法だけなので苦労はすると思います。また農家も良さそうです。受付で様々な職業神をまとめた冊子がありますのでお金に余裕があるならば買うといいでしょう。文字を覚える訓練にもなりますよ。」
「神官様 職業伸とはなんでしょうか?」
「職業をさずかる際に職業神の恩恵を得る必要があります。戦の神、鍛冶の神、農業の神など。職業ごとに様々な神様からの恩恵を得ます。職業経験値を貯めることも大事ですが、信仰心によっても恩恵が強くなりますので。神様との相性もありますがね。ちなみに戦の神様だけでも複数存在します。自分にあった神様に出会えるといいですね。」
そうして、俺のスキル確認は終わった。職業神についてもっと知りたいので本の値段を聞くと3銀貨だといわれた。じいさんの方をちらっと見ると、「自分で金を稼げ」と言われた( ;∀;)他に行きたいところはあるか?と聞かれたので魔法ギルドに行ってみたいと言うと、案内してくれた。
「賢い子じゃと思っとったが、接客スキルとはよくわからんやつじゃな。ガハハ。残念ながら水魔法初級しかありゃせんかったが、魔法は使える者のほうが少ない。ないよりはいいじゃろて。ただ、あれじゃぞ。魔法スクロール買う金はないからの。」
「わかってるよ。いくらぐらいするのか知っておきたいだけだよ。」
「そうかそうか。まあ地道に稼いでおればいずれ買えるじゃろ。森に帰ったら、小さな獣の倒し方から教えてやる。ジョブを得るまでは、大幅なスキルの伸びはないと思うが、着実に力にはなっていくだろうよ。あー、魔法ギルドはここじゃ。わしは才能なかったのではいったことはないがの」
魔法ギルドの建物前についた。神殿よりも大きい建物だ。外観だけ見ると商店と変わらない、看板が杖と紙のイラストだった。店に入ると普通の格好のおじさんがカウンターに立っていた。
「ようこそ、魔法ギルドへ。どういったご用件でしょうか?」
と丁寧な接客。
「すいません。水魔法初級の才能があることがわかりましたので、今後の為に魔法スクロールの金額を知っておきたくてきました。」
「わかりました。水魔法初級ですと『癒しの水』1.5金貨、『解毒の水』1金貨、『水球』50銀貨、『水操作』50銀貨、『氷作成』2金貨、『温水作成』1金貨です。」
「ありがとうございました。また来ます。」
「はい。またのご来店お待ちします。」
初級魔法でこの値段か・・・結構高いな。まあ使えればそれだけで暮らしていけそうな便利そうな魔法ぽいしなあ。氷とか温水も使えたら色々やれそうだ。まあ先の話かな・・・
魔法ギルドを出た俺たちは、屋台でごはんを食べて雑貨屋に戻ることにした。飯代は二人合わせて銅貨10枚だった。