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大工が森に来た。

 最初ライムントは、森の中を進むと聞いて少し怖がっていたが、俺が長い時間を掛けて作った道を見て驚いていた。俺一人(実際にはロバも手伝ったが。)で作ったという話をすると尊敬のまなざしを向けてきた。歳もそんなに変わらない、少年といってもいい年齢の者が危険な森でこの作業を成し遂げたのはすごい事だとしきりに褒めていた。自分の為にやったことだが、褒められるのはやはり嬉しい。


 作るのにも苦労したが、実は維持するのにも結構手間はかかっている。植物の浸食スピードはすさまじいのである。前世ではあまり手伝わなくてよく怒られたが、田畑の草刈りは非常に手間がかかるものだったし、集落で一丸となって行う道づくりも半日作業だった(俺は 行ってないが・・・)。今世では、ヤギーズや、ロッキーやニコに食べながら手伝ってもらい植物の浸食を抑えている。もちろんそれだけでなく、俺も草刈りや伐採は常に行っているが。子どもたちがもう少し大きくなって自分たちで家の周りを出るようになったら、手伝ってもらおうとは考えている。


 特に魔物に襲われる事もなく家の前についた。といっても家の周囲100mにわたって敷いている柵の前だ。素人が作った柵や堀なので立派なものとは言えないだろうが、今まで魔物に襲われずしっかりとその役目を果たしてくれている。


「これも先生が一人で?」


 ライムントも俺を先生と呼ぶ事にしたらしい。


「動物達に手伝ってもらってだけどね。柵や堀を作っておかないと、俺はともかく子どもたちや家畜が危ないから。森には魔物がでるからね。」


「すごいですね。これならよほど大きな魔物でもない限り大丈夫そうです。」


 大工(見習い?)に太鼓判をもらえた。良かった(二コリ)。


「ただ、あくまでこの柵の中が俺の家なんで、ライムントが住む家を作るならその外で作ってもらわないといけない。畑やら家畜の世話やらで家建てるスペースは厳しいと思う。」


「それは仕方ないですね。僕も戦うことはあまり慣れてないので安全柵を作ってそこに住む家と工房を作れたらと考えています。」


「町までの道沿いで作ろうか?俺もしばらく手伝うよ。」


「ありがとうございます。自分の家ができたら森で生活するのに便利になるようなものを少しづつ作っていきますね。」


「こちらこそ助かるよ。けどな、さっき戦うことに慣れてないって言ってたけど、森で住むなら戦うことも覚えてもらわないといけないし、最初は食べ物も用意するけど、自分で多少は採れるようにならないといけないよ。」


「はい・・・がんばります。」


「力も強そうだし、問題無いと思うよ。実際ガダフさんだって素材集めの為にダンジョンに入っていたしね。職人になるなら素材集めも自分ですることもあるよ、たぶん。それにこの森にはキコリは俺達しかいないぞ。」


「はい。頑張りますので色々教えてください!!」


「了解。町やダンジョンに行ってない時は、俺に知っていることでよければ教えるよ。」


 生徒がまた一人増えたようだ。大工仕事に関しては俺が生徒になるだろうけど。


 家に入るといつものように子どもたちが出迎えてくれた。初めて見る人を横に連れているので興味半分、警戒半分といったところだろうか。


「ただいま。みんなに新しい仲間を紹介する。ライムントだ。大工の見習いで自分の家ができるまでは、うちの台所を寝床として貸す約束をしてる。皆よろしくしてやってくれ。」


「ドワーフのライムントです。今日からお世話になります。背はそんなに高くないですが歳は12歳です。よろしくお願いします。」


 子どもたち相手でも、きちんと敬語で挨拶できてる。えらく教育が行き届いてるなあ。それに引き換え・・・


「ドワーフだって~」


「よろしく~」


「私と背かわらない~」


 ・・・礼儀作法の教育が足りないようだ。いずれ町で働く選択肢もあるかもしれない。その為にも礼儀作法の教育は必要だ。痛感した。いや、幼稚園や小学校低学年だとこんなもんか。でもまあ


「はいはい、ライムントはきちんと自分の歳と名前を言ったぞ。お前たちもきちんと言いなさい。」


 ああ俺教師っぽい。どちらかというと子守りっぽいが。年齢の順に自己紹介していく。


「私はエリス、8歳です。」


「僕は、ロイ7歳です。」


「わたしは、コニー。6歳」


「マリー、4つ!!」


「ケビンも4つ!!」


「私はミツコですわ。0歳ですわ。」


「え?」


 ライムントが困惑している。いつの間に混ざった?


「ミツコも家族の一員だ。蜂の妖精。この家の守り主ってとこだ。」


「そうなんですか。。。みなさん宜しく。」


「ぶもーぶもー。」


 ニコは、いいから。戻りなさい。


 挨拶を終えて、皆でごはんを食べた。町で買った食料も食べるが森の恵みも使った食事であること、家畜の世話や畑の世話を子ども達が行っていること教える。ライムントから「すごいですね」と言われると子ども達もどこか誇らしげだ。特にコニーとマリー。そういえば肝心な事を聞いていない。


「ライムント、簡単な家ってどれくらいで建つんだ?」


「そうですね。僕一人で半年くらいでなんとか。人数がいればもっと早いかもですが。」


「半年か。俺も毎日手伝ってやれないからな。生活費も稼がないとだし。そういやライムントは生活費としてお金どれくらい持ってるんだ?」


「0です。」


「え?」


「…0です。」


 森で生活するのはかまわんし、生活に便利な物を色々作ってくれそうで助かりそうだが、稼ぎが無いと生きていけんぞ。てっきり少しは持ち出しあるのかと思っていたが。。。ガダフさん生活必需品以外にもお金きちんと持たせてください!!


「あの先生、僕も狩りを覚えるので毛皮とか町に行く時にいっしょに売ってもらえないでしょうか?」


「ああかまわないよ。戦ったことがあまりないってことだったけど、何か武器は使えそうか?」


「木を切るのにも使ってましたが、この両手斧を使おうと思います。」


 そういうと大工道具からどでかい斧を出してきた。この身長でこの斧を振り回すのか。さすがドワーフ。そして両手斧がよく似合うこと。


「明日早速行ってみるか?」


「はい、お願いします!!」


 次の日、朝早く両手斧を持ったライムントと整備されてない森に入る。10分もしないうちにホーンラビットに出会った。


「ほらライムント、ウサギだぞ!!やれるか!?」


「はい!!うおぉおおおおおおお!!」


ウサギめがけて両手斧をぶん回す。スカ スカ。当たらない。


「はぁはぁ。先生当たらないです!!あ、痛、痛!!」


よけたウサギに攻撃を喰らっている。少し血がでてるな。代わりに手斧で仕留める。首を一閃である。俺の力量も上がったもんだ。


「すごい・・・」


 とりあえずわかったことがある。小さめの魔物に両手斧は不向き。というよりライムントの力量では不向きといった方がいいだろうか。癒しの水で治療してあげた後、試しに森の木を切らせてみる。


カコーン!!カコーン!!おお 俺より早い。さすが両手斧だな。伐採を代わりにやってもらうことで稼ぎの代わりにするか。護衛はニコがいればいけるだろう。


「とりあえず、両手斧の特訓はするとして狩りはしばらくお預けだな。その腕では今すぐ狩りは無理だ。」


 しょぼーんとするライムント。


「でもな木を切るのはパワーもあって俺より早い。護衛にさっきいた二足歩行の牛ニコを付けるから伐採やってくれ。ロバのロッキーも手が空いてたら手伝わすし。それをもって稼ぎに替えよう。」


「わかりました先生。それでお願いします。」


「1日2時間ほど伐採やってくれ。この家の周り四方均等でかまわない。残りは、大工作業にあててくれ。」


「了解です。」


 結局狩りは俺のようだ。まあ適材適所でいいだろう。


 それからしばらくは、ダンジョンに行かずライムントの作業を手伝った。最低でも作業場所の伐採を行って地ならしをしないと行けなかったからだ。家を作る木材は伐採の成果を使うのかと思いきや、俺が保管してある方と交換して欲しいと言われた。乾燥している方が使いやすいとのことだ。なるほど最もだ。調理にも薪を使わないので柵と道づくり以外には木は割と余ってた。保管場所もなかったので野ざらしも多かったのだが、雨に濡れてないのも結構あったのであげた。さすがに豪語するだけあって木の加工は見事なものだったが、背が低いのは家づくりなどでは作業がしづらそうだった。1週間ほどで下地と、雨のしのげる簡易加工場、木材の保管場所ができた。あくまで簡易なので後から作り直すそうだ。がんばっていい家を作ってくれたまえ。

 

 でもあれだね。大変だけど開拓していってると街づくりゲームやってるみたいで、少し楽しい。

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