ダンジョン地下3Fとドワーフ
ダンジョン地下3Fに挑む。冒険者ギルドで情報とともに地図を買ってあるので、ボス部屋まで一直線である。ただ今までと違って人がいた。あれ?見たことある人だな、武器屋のガダフさんだ。
「こんにちは、ガダフさん。冒険者もやってるんですね。」
「手斧の坊主か。これは冒険者やってるんじゃなくて、ゴブリンが落とす武器目当てで徘徊してるんじゃ。」
鍛治魔法で、錆びた武器を鉄に戻すのかな。一回錆びた鉄って使えるのか?まあ集めてるんだし使えるんだろう。
「2Fのボスが落とす鉄鉱石よりもゴブリンの落とす武器の方がいいんです?」
「鉄鉱石の方がいいんだけどな、ゴブリンの武器は必ず手に入るからな。ワーム倒すより楽だしな。」
なるほど、ゴブリンの武器は消えてからでてくるんじゃなくて、持ってる武器を落とすのか。確かに待ち時間もないし危険も少ないならそうするわな。
「また店行きます。頑張ってください。」
「おう、坊主も無茶するなよ。」
鍛冶魔法があれば俺も武器あさりするんだけどなあ。動画で錆びた包丁を研いで使えるようにするっていうのもあったけど、めっちゃ時間かかってたはずだしな。ゴブリンの武器狩りはやめとくか。
適当に魔物を狩りつつボス部屋の前まで向かう。冒険者ギルドで買った情報は、前世で言う攻略本みたいなものだな。特に地図が便利すぎる。地図を完成してくれた先輩冒険者地に感謝。2時間もしないうちに3Fのボス部屋前に到着。部屋の前には今まで同様人はいない。ボスのホブゴブリンも人気が無さそうだ。ギルド情報では、ゴブリンよりでかく力が強いとあったが、特に問題もないだろう。多分・・・
ボス部屋に入ると、ゴブリンの1.5倍ほどの体躯をした魔物がいた。防具はきちんとした皮の鎧を着ている。武器は・・・あれ?錆びてない。稀に錆びてない武器を落とすってことだから、こいつは当たりか。イコール錆びてないから攻撃力は高いんだろうな。戦闘に入る前にホブゴブリンの武器を観察する。
--鉄剣 状態:普通--
普通の鉄の剣か。買うとそれなりだけど、売るとなるとそんなにお金にはならないのかもな。さて戦闘を開始する。ハナコに攻撃支持を出し共闘の体制に入る。ハナコに気を取られてる間に水弾を飛ばす。パワーは中々にあるようで、鉄の剣を防具の無いところに喰らうと大けがをしそうだ。だが、特に脅威も感じず水弾とハナコの牙攻撃を喰らい続け、ホブゴブリンが膝をつく。目元に水弾を食らわし視界を絶ったうえで斧の一撃を首元に食らわせる。頭が飛んでいくってことも無かったが、息の根はとめたようだ。迷宮ワームよりも随分タフだこと・・・こりゃ人気ないな。ドロップ品は、鉄剣と魔石。雑魚ゴブリンが落とした錆びた武器といっしょに後で売るとしよう。さて『本』の確認の時間だ。ホブゴブリンは。。。0%!? いまだかつてない数字。1匹倒しても1%にも満たないってことか!?萎える。これは萎える。いったん保留にしよう。もしかしたら下の階層でフロアモンスターとしてホブゴブリンが出るかもしれないし・・・転送装置に登録して町に戻った。今日のやる気が0になってしまった。冒険者ギルドで4Fの情報を買いに向かった。ついでに5F、危険だと言われた6Fも。6Fは10銀貨と情報料が一気に5倍になった。
4Fも洞窟型。罠は無し。洞窟ワームがいなくなり
新たに
◇コボルト 武器で攻撃 爪・牙攻撃 こん棒を所持している。ドロップ品 こん棒
ボスモンスター
◇ハイコボルト 武器で攻撃 爪・牙攻撃 錆びた鉄槍を所持している。コボルトよりも体が大きく力も強い。ドロップ品 錆びた鉄槍 稀に錆びていない鉄槍 謎の骨
コボルトか、なんかゴブリンの説明のコピペみたい・・・確か犬頭の二足歩行魔物だったよな。ゲームなんかじゃゴブリンと同様の強さくらいだったか。にしてもドロップ品こん棒はひどい。謎の骨っていったい・・・?4Fも誰もいなさそうだ。願わくばスキル『遠吠え』がかぶりませんように。
5Fも洞窟型。罠は無し。洞窟コウモリがいなくなり
新たに
◇スケルトン 武器で攻撃 錆びた武器を所持している。ドロップ品 錆びた武器
ボスモンスター
◇スケルトンナイト 武器で攻撃 盾で攻撃をはじいてくる。鉄製の鎧を身につけている。錆びた装備を所持している。スケルトンより戦闘能力が高い ドロップ品 錆びた装備 稀に錆びていない装備 魔力を帯びた骨
不死族と呼ばれるモンスターは初か。前世で人間の骨なんか見たら卒倒しそうだけど、この世界だと普通に挑めそう。もう人も殺しちゃってるしな。スケルトンナイトはやっかいそうだ。にしても5階まで錆びた武器ばっかりだな。下の階層に行けば錆びてない武器に変わっていくのだろうか。
最後に6F。ギルド長が危険になるって言ってた階層だ。情報料も高かったし。
6Fは、石壁、石床に変わる。罠有。ボス部屋までの距離も2倍になる。
魔物は、ゴブリン、コボルト、スケルトン。ただし魔物もパーティを組み連携を行ってくる。5Fまでの魔物よりもレベルが高くなっていると思われる。ドロップ品に変化は無し。ボスモンスターは3F~5Fのボスモンスターがランダムに複数。数は2~6体まで報告にあり。ドロップ品として戦闘終了後ボスフロア中央に宝箱が現れる。中身はランダム。宝箱に罠がある場合もあり。
6F、完全に別物じゃないか!殺しに来てるぞ。敵が強い弱いは別にして罠の解除できる人がいないとまず無理なんじゃないか。今のところ俺にその能力もないし、『本』からも得られそうににない。どこかのパーティに参加させてもらうか、シーフ職の方を仲間にしないとだめそうだ。現状では5階までで打ち止めかな。
情報も買い終わったし、錆びた武器を売りに今朝ダンジョンで出会ったガダフさんの店に向かう。帰ってるといいが。あーいたいた。
「こんにちは。ガダフさん」
「また来ますって、今日来たのか。ロバに持たせている錆びた武器を売りにきたのじゃな?」
「はい。って、あれここもう一人いたんですね。店の人。」
何回か来てるがいつもガダフさん一人だったような気がしたのだが、店にもう一人いた。ドワーフの若い男性だ。若いというか少年だな。
「あーこいつはな、儂の甥じゃ。ドワーフの集落から家出してきおったんじゃ。儂が昼にダンジョンから帰ってきたら店の前で座っておった。名前は、ライムント。」
なんかムスっとしてるな。
「俺はアルフレット。よろしく。」
挨拶をするとすかさずガダフさんが
「よろしくせんでええ。こいつは家に追い返すんでな。うちの店にはおいとかん。」
「待ってよおじさん!!家に帰されたら僕、鍛冶師にさせられちゃう!!」
え?鍛冶師になるのに家出してきたんじゃないの?変なこといったぞ、この少年。
「はぁ、せっかく鍛冶魔法の才もあって、ドワーフの里で鍛冶の修行を好きなだけやれるというのに、こいつは大工になりたいんだそうだ。こいつの親から、小さいころから集落で唯一の大工の家にいりびたって大工になるんだと言ってると心配してたが、家出までしてくるほど本気じゃったとは。」
「僕はずっと大工になるって本気で言ってたよ。父さんも母さんも聞いてくれないし、集落の鍛冶工房に勝手に就職させられそうになったから道具持てるだけもって逃げてきたんじゃないか。」
「お前の気持ちもわかるがなあ、お前の父さんは集落の鍛冶工房の大親方だからの。継がせたかったんじゃよ。」
「工房は弟がいれば大丈夫だよ。弟は天才だから。小さいころからまじまじとその差を見せられてきた。もう比べられるのは嫌なんだ。それと関係なく僕は木に触れる大工の仕事がしたいんだ!!」
「じゃから、儂の店は武器防具を扱う店であって、木なぞほぼさわらんというとるじゃろうに。一回家に帰って親と話し合え。まだ12才だろうに。鍛冶能力も今からめきめきあがるわい。」
「い~や~だ!!帰らない。頼みますおじさん、ここに置いてください。お願いします。」
半泣きだな。どうしても家にかえりたくないんだろうなあ。
「お、そうじゃ手斧の坊主。」
いいかげん名前覚えろ!!
「お前さん、森に住んでたよな?良かったらこいつ面倒みてくれんか?回りに木もいっぱいあるじゃろ。代わりに武器防具に関して優遇させてもらうぞ。」
「おじさん!!こんな僕と年の変わらない人が面倒見れるわけないじゃないか!?」
なんてものの言い方。失礼しちゃうわぷんぷん。ちゃんと自分含めて色々面倒みとるわい!!
「いっしょの家は無理ですけど、自分で建てるんなら面倒見ますよ。大工になるんならできるんでしょ?」
煽っとく。お返し。
「木材と釘さえあれば、自分の住む家ぐらい建てれるよ!!集落では大工のボリスさんの助手を5歳からやってたんだから!!」
ボリスさんなぞ知らんし。なんていうか面倒みるのはかまわんが、厄介ごと増やされるのは嫌だから先に釘をさしておく。相手が大工だけに(ニヤリ)
「ガダフさん面倒は見ますが、言動がいただけません。森では私の言うことは必ず聞いてもらいますし、今いる家族とも問題を起こさないのが絶対条件です。」
「だ、そうだがライムント?」
「はい!!アルフレットさんよろしくお願いします。きちんと言うことは聞きますし僕にお手伝いできることがあれば何でもいってください。僕は木に触れて大工作業ができればそれで満足です!!」
「了解。ライムント君よろしく。後で森での生活用品を買ってから行こう。」
「はい。あと君いらないです。ライムントって呼び捨てでいいです。」
「わかった。ライムント。俺の事は名前で呼んでもらっても、家にいる子ども達が俺を先生と呼んでいるんだけどどっちでもいいよ。」
「他に子どもがいるんですね?森で紹介してください。」
妙な事になった。だけどまあ自分で家建てるっていってるし、大工は何かと便利そうだ。はたして12歳でどれほどの事ができるかやや疑問ではあるけど。そういや大工入門の本もあったし俺も教えてもらおうかな。
「手斧の坊主たのんだぞ。こいつの生活品は儂が金をだすわい。あとライムント、お前の親には森で住んでる旨は伝えるからな。」
「はい。でも絶対帰らないと言っていたと伝えてください。」
「わかった、わかった。あとな鍛冶魔法を使えるのだから鍛冶魔法用の金床と金づちは必ず持っていけ。大工道具の整備にも鍛冶の技術は役にたつじゃろう。」
「はい。家から持ってきたのは大工道具だけだったので助かります。」
色々あって森で住む人間(ドワーフも人族だよな?)が一人増えることになった。ダンジョンでガダフさんに会ったのはフラグだったのかもしれない(笑)。家を建て終わるまでは台所を寝床として貸す約束をして、森での生活必需品を買い、人が増えた分の食料を買い足して森に帰った。ライムントが元々持っていた道具は大工道具のみであったが、かなりの量があり重そうだ。だが、12歳でもさすがドワーフ。身長は1m20ほどしかないが、がっしりしていて重い荷物もなんのそのである。色々と話をしながら森まで歩いた。話をしてみるときちんと敬語も使えるし、気遣いのできる好感の持てる少年であった。




